お姉様(♂)最強の姫になる~最高のスペックでの転生を望んだら美少女になりました~

深水えいな

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1.お姉様と国王暗殺未遂事件

15.お姉様とメイドさん

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「やあ、遠いところよく来たね、舞踏会での一件は聞いているよ」

 叔父さんが薄気味悪い笑みを浮かべる。
 なーにが聞いてるよだ! お前が黒幕なんだろうが!

「ああ。城にいては危険ですから。しばらくこちらに滞在させていただきますよ」

 ニコニコと屈託のない笑顔で笑うレオ兄さん。兄さん、意外と度胸あるんだな。それに演技力も。

 ツインテメイドがレオ兄さんの荷物を持つ。

「こちらへどうぞ、客室へご案内致します」

「ありがとう、かわい子ちゃん!」

 俺が兄さんに感心していると、兄さんはおもむろにそんなメイドの手を握った。

「ところで、君、可愛いね。名前は? 年はいくつ? こんな辛気臭い城で働かせるには勿体無いよ!」

 前言撤回。やっぱりいつものレオ兄さんだ。ったく、よくやるぜ。奥さんも一緒なのによ!
 チラリとアビゲイル姉さんの方を見ると、いつもなら怒りに震えている姉さんだが、少し眉を上げたぐらいだった。
 ついに兄さんに愛想をつかせたのかも知れない。

「名前はシュシュです。年は十六。さあ、こちらへ」

 無愛想に答えるメイド。十六歳か。俺と同い年。それにしちゃえらく大人っぽい。

 俺たちはシュシュに案内されそれぞれの部屋へと向かった。


「はーあ、疲れたぜ」

 いつものようにポイポイと服を脱ぎ、ベッドに脱ぎ捨てていると、不意にコンコンとノックの音が響いた。

「はい?」

 ドアを開けると廊下には誰もいない。

「あり?」

 俺が首を捻っていると、部屋の中からこんな声が聞こえてきた。

「ミア姫、こっちです」

 ドアを閉め、部屋の中を見回すが、部屋の中には誰もいない。

「えっ! な、何、まさかゆ、ゆ、幽……」

 自慢じゃないが、俺は幽霊だとかオバケの類が大の苦手なのだ。
 青ざめながら辺りを見回していると、いきなり天井からガタリと音がした。俺は思わず飛び上がった。

「ギャーーッ!」

「ミア姫、ここですよ!」

 俺が腰を抜かしていると、天井から黒い影が落ちてきた。

「大丈夫ですか?」

 目の前で心配そうに手を伸ばすのは、黒ずくめの格好をしたアオイであった。

「アオイっ!」

 俺はアオイの手を取り、立ち上がった。

「大丈夫でしたか? ひどく驚かれていたようですが」

「だ、大丈夫だ!!」

「可哀想に、こんなに震えて」

「これは武者震いだ!!」

 恥ずかしいので、そのことにはあまり触れないでほしい。俺は急いで話題を変えた。

「それより、叔父さんの部屋に忍び込んだんだろ? 何か証拠は見つかったか?」

「それが、周到に証拠隠滅しているようで」

「そうかァ」

「それよりも、お姉さまは危険なのでどうか無茶はなさらず、捜査の方は私どもにお任せくださいね?」

 アオイが上目遣いに俺を見てそんなことを言う。真剣な瞳。う、可愛い。っていうか、心配性だなァ。みんな。

「大丈夫、大丈夫! 無理はしないさ!」

 俺が手をひらひらさせるとアオイは深いため息をついた。

「先ほどのように、不用意に部屋のドアを開け無いように気を付けてくださいね? それから、そのように下着姿でうろうろされるのも」

 自分の恰好をまじまじと見た。さっき驚いて腰を抜かした拍子に、羽織っていたガウンがはだけ、下着丸見えになっている。
 俺は苦笑いしながらガウンの前をきちんと閉じた。

「別にいいじゃねぇか。女の子同士なんだし」

 アオイは深いため息をついた。

「私は別に構いませんが、いつ誰が襲ってくるのか分かりませんので。お気をつけて」

 そう言うと、アオイはタンスによじ登り、そこからジャンプすると天井に空いた穴につかまり、あれよあれよと言う間に穴の中に体をするりとくぐらせた。すげー、マジで忍者だ。

「では、良い夜を」


 アオイが居なくなった天井をしばらくぼんやりと見つめていると、ノックの音が部屋の中に響いた。

「はい? 誰だ?」

「失礼いたします、メイドのシュシュにございます」

 鈴の音のような可憐な声が聞こえてくる。
 俺はドアを少しだけ開けた。

「お夕飯の準備が整いました。大広間へいらしてください」

 ドアの向こうのメイドは目を細め、にこりと笑った。

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