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第4章 熱愛発覚!?

10.彼氏彼女の関係

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「あっ、花!」
「見たよ、今週号の学校新聞!」
「あの生徒会長と付き合ってるだなんてすごーい!」

 新聞が発売されるやいなや、私はクラスの女子たちに囲まれた。

「いや、あの、こう、取材をしているうちに成り行きで……ハハハ」

 私がしどろもどろになりながら答えると、女子たちは目をキラキラと輝かせた。

「そうなんだ!」
「すごーい」
「まさかあの花がねぇ」

 な、なんか意外な反応。

 もっとやっかみとか嫌がらせがあると思ってたのに。

 私がビクビクしながら席につくと、沙雪ちゃんが新聞を手にやってきた。

「花ーっ、新聞見たよ! やっぱり二人、そうだったんだー」

「あっ、沙雪ちゃんおはよう。……うん、実は」

 私が目をそらしつつも答えると、沙雪ちゃんはニヤリと笑った。

「おめでとう。何だかんだでお似合いじゃない?」
「そう? っていうか、沙雪ちゃん……怒ってない?」

 私が恐る恐る尋ねると、沙雪ちゃんはキョトンした顔で首をかしげた。

「怒る? どうして?」

「だってほら、沙雪ちゃん、ずっと白夜くんのこと好きだったでしょ?」

「まあね。でも白夜くんはどちらかというと観賞用の男の子っていうか、恋愛対象っていうよりアイドルみたいな感じだったし」

「そうだったんだ」

 良かった。

 最近、沙雪ちゃんは隣のクラスの男子と仲が良いみたいだし、その影響もあるのかな。

「あ、ウワサをすれば」

 沙雪ちゃんが教室のドアのところを指さす。

「花、会いに来たよ。一緒にお弁当食べない?」

 右手を挙げる白夜くん。

 えっ、いきなり呼び捨て!?

 私は少しとまどいながらも、白夜くんの後について生徒会室へと向かった。

「びっくりしたよ。いきなり『花』だなんて」

「良いでしょ、彼女なんだから。花も俺の事、港って呼んでいいよ」

「遠慮しておきます」

 呼べるわけないよ、白夜くんのこと、『港』だなんて!

「そう? 遠慮しなくていいのに」

 私たちがそんな話をしていると、突然ガラリと生徒会室のドアが開いた。

「あれっ、白夜くんいたの?」

 入ってきたのは、長いサラサラのストレートヘアーに白い肌の美少女。

 あ、副会長の綾瀬さんだ。

 白夜くんはあわてて私から離れた。

「生徒会室、勝手に使ってごめん」

 白夜くんが言うと、綾瀬さんはサッと視線をそらした。

「いえ、別にかまいません。ただ、いくら彼女とはいえ、部外者を入れるのは……」

 綾瀬さんは机の上に書類をドサリと置くと、一瞬、私のほうをキッとにらんだような気がした。

 私はあわてて頭を下げた。

「ごめんなさい、邪魔でしたら、これ食べたら出ていきますから」

 すると綾瀬さんはさっきのキツい顔がウソだったかのように、可愛らしい笑顔に戻った。

「いえ。別に私は何とも思わないけど、先生に見つかったら困るんじゃないかなって。余計なお世話だったらごめんなさい」

 そういうと、綾瀬さんはバタンとドアを閉めて出ていった。

 私はホッと息を吐いた。

 綾瀬さん、やっぱり白夜くんのこと好きなのかな。

 だとしたら私、なんだか悪いことしてるかも。

「ねえ、白夜くん」

「何」

「本当に、彼女役は私でいいの?」

「何で」

 キョトンとした顔の白夜くん。

「だって他にもっと綺麗で可愛くていい人がいるんじゃないの?」

「何言ってんの。俺は花がいいの」

 それって、私が白夜くんのことを好きじゃないからってこと?

 でもそれだったら、他にもいい人がいそうなのに。

 私は小さくため息をついた。

 ***

 休み時間。私が白夜くんのインタビュー記事の原稿をチェックしていると、沙雪ちゃんがニヤニヤしながら話しかけてくる。

「いいなあ、花。白夜くんとラブラブで」

 私はかあっと顔が熱くなった。

「そ、そんなラブラブってほどでも――」

 っていうか、ニセのカップルだし!
「またまたあ。いつもお弁当も作ってあげてるんでしょ?」

「それは、自分のを作るついでだから!」

 そんなふうに私と沙雪ちゃんが話していると、クラスの女子も会話に加わってくる。

「でも私、花ちゃんは紬くんと付き合うのかと思ってたけどな」
「そうそう! っていうか、あの子と付き合ってるのかと思ってた!」
「ねー、紬くんも結構イケメンだよね。もったいないー」

 へっ、紬くん?

 私は慌てて首を横に振った。

「ないない。あれは弟みたいなものだし、私の彼は白夜くんだから!」

 と、そこまで言って、急に沙雪ちゃんたちの表情が変わった。

「ん? どうしたの?」

 ゆっくり振り向くと、そこには真っ青な顔をした紬くんが立っていた。

「せ、先輩、この記事本当なんですね」

 うるうるとチワワみたいな瞳で見つめてくる紬くん。

「う、うん、本当だよ」

「そ、そんな。先輩が生徒会長と付き合ってるだなんて、てっきりフェイクニュースかと思ってたのに」

「黙っててごめんね」

 私がオロオロしていると、突然後ろからグイッと腕をつかまれた。

「俺の彼女に何か用?」

 振り向くと、そこにいたのは白夜くん。

「びゃ、白夜くん!?」

 白夜くんは私の体を強引に自分の横に引き寄せると、紬くんを真正面から見すえた。

 白夜くんの鋭い視線にさらされた紬くんは、ぷいっと視線をそらした。

「別に、用があるわけじゃありませんけど」

「君さ、花の幼馴染なんだって?」

 白夜くんがじっと紬くんを見つめる。

「そうですけど」

 紬くんが返事をすると、白夜くんはクスリと笑った。

「そう。でもこれからはあんまり馴れ馴れしくしないでね? 花は俺のだから」

 挑発的な目で紬くんを見つめる白夜くん。

 ちょ、ちょっと白夜くんったら、何言ってるの!?

「分かってます。失礼します。五十鈴先輩、生徒会長とお幸せに」

 紬くんは唇を噛み締めると、苦々しい顔で教室から走って出ていった。

「あっ、紬くん!?」

 もう、白夜くんったら。

 いくら私と付き合ってるふりをしなきゃいけないからって、やりすぎだよ!

「やだ、修羅場?」
「三角関係!?」
 
 教室内にいたクラスメイトたちがザワつく。

「ち、違うってば!」

 慌てて否定したけど、またたくまに私が二股をかけているだとか、三角関係だというウワサが広まってしまった。

 
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