7 / 19
第3章 完璧王子と秘密の関係
7.完璧王子になつかれました
しおりを挟む
白夜くんがうちでこっそり晩ご飯を食べるようになってから数日後。
私と沙雪ちゃんは、放課後、近所のとある市民グラウンドへとやってきた。
「ここで良いんだよね?」
「うん、多分」
二人で話していると、黄色い歓声が聞こえてくる。
「キャーッ!」
「白夜くーん!」
「カッコイイ!」
観客席では、女子たちが目をハートにして白夜くんを応援してる。
実は今日、サッカー部の試合があるんだけど、部員の一人が怪我をしちゃって、白夜くんが代わりに出ることになったんだって。
それで私は、その取材をしにきたんだけど……。
「すごいね……まさかこれ、みんな白夜くんのファンなの?」
沙雪ちゃんが目を丸くする。
本当、わたしもびっくりだよ。
「だよね。他の学校の生徒もいるし、小学生も、高校生もいるね、すごい」
私が答えると、沙雪ちゃんは小さくため息をついた。
「いいなあ、花は。そんなスーパースターと隣の部屋なんだから」
結局、私は沙雪ちゃんに白夜くんと隣の部屋同士になったことを話したんだ。
お弁当を作ってあげることになったことや、たまにうちに来て晩ご飯を食べていることはナイショだけどね。
「ははは。私もまだ実感が湧かないよ」
私は頭をポリポリとかいて、グラウンドを見つめた。
丁度よく、試合開始のホイッスルが鳴る。
割れんばかりの声援の中、白夜くんが相手チームからボールをうばった。
「キャーッ!」
「白夜くーん!」
白夜くんはそのままの一人でドリブルし、軽々とシュートを決めてしまった。
パサッ。
ボールがゴールに突き刺さる音。
地響きみたいな大きな歓声が上がる。
わあっ、綺麗なシュート。
私が夢中でシャッターを切っていると、急に白夜くんが振り向いた。
ん?
白夜くんはこちらの方を見ると、ニヤリと笑い、少しだけ舌を出した。
キャー!
悲鳴みたいな歓声が上がる。
「ねえねえ、今、こっち見なかった?」
「友達でもいたのかな?」
興奮しながらぴょんぴょん跳ねる女子たち。
ひょっとして今、私に向かって舌出してた?
気のせいかな?
「ねえねえ、今、白夜くんこっちのほう見てなかった!?」
沙雪ちゃんは顔を真っ赤にしながら背中をバンバンたたく。
「そ、そうだね」
私が適当に返事をすると、沙雪ちゃんはぷうっと頬をふくらませた。
「もー、相変わらず花ったら白夜くんに興味ないんだからー」
「あはは……」
その後も白夜くんは、さらに三得点を上げ、アシストまでして、大活躍だった。
改めて見ると、凄いなあ。サッカー部でもないのにハットトリックだなんて。
勉強も運動も、他の人とは次元が違うって感じ。
結局、試合は6対0で大勝ち。
ここまでくると、なんだか相手チームが可哀想かも。
「ねえねえ、白夜くんのこと、出待ちしない?」
沙雪ちゃんが提案してくる。
「うん、そうしよっか」
ひょっとしたら、試合終わりの白夜くんのインタビューできるかも。
そう思って、私たちは裏の出口へとやってきたんだけど――。
「うわ、すごい人だかり」
出口には、白夜くんファンの女の子たちがたくさん。
これじゃあ、インタビューどころか近づくこともできないよ。
なんて、あきらめていたその時――。
「ほらお前ら、邪魔だ邪魔だ!」
サッカー部のコーチの声がして私が顔を上げと、チラッとだけど、着替えを終えて出てくる白夜くんが見えた。
あっ、白夜くん。
私が白夜くんを呼び止めようとしたその時、一人の女子が白夜くんに駆け寄った。
白夜くん、お疲れ様。これどうぞ」
タオルを渡す、長いストレートヘアーの美少女。
あっ、あの子――生徒会副会長の綾瀬梨花ちゃんだ!
「ありがとう、副会長。わざわざ見に来てたんだ?」
ファンの子たちには塩対応なのに、綾瀬さんからは素直にタオルを受け取る白夜くん。
「あーん、先こされた!」
「仕方ないよ、相手はあの綾瀬さんだもん」
「梨香ちゃん、相変わらず可愛い!」
白夜くんファンの女の子たちがさわぐ。
「お似合いだよね、あの二人」
沙雪ちゃんもため息をつく。
「そ、そうだね」
私は綾瀬さんをじっと見つめた。
長いサラサラの黒髪に真っ白な肌。赤い唇に、大きな目。
ついたあだ名は生徒会の姫。
しかも、綾瀬さんは美人なだけでなく、成績もいつもトップクラスで運動神経も良い。
白夜くんファンの子たちも、綾瀬さんには敵わないって思ってるみたいで、誰も綾瀬さんには文句を言わない。
言ってみれば、公認カップルって感じ?
私が白夜くんの顔をチラリと見ると、白夜くんは涼しい顔で綾瀬さんと話してる。
白夜くん、女の子は苦手なはずなのに、綾瀬さんは平気みたい。
でも、あんな公認の彼女みたいな子がいるのに、私にお弁当や晩ごはんを作ってもらっていいのかな?
私がモヤモヤしていると、不意に白夜くんがこちらへ振り向き、笑顔で手を振った。
「あっ五十鈴さん」
わあっ、見てたのバレた!
すると、白夜くんが女の子の群れをかき分けてこっちにずんずんと歩いてきた。
「五十鈴さん、それ、ちょうだい」
「えっ!?」
白夜くんが指さしたのは、私が持っていたペットボトルの麦茶。
「……えーっと、飲みかけだけど、それでも良ければ」
「いいよ。なんか、試合後にスポーツドリンクは配られたんだけど、俺甘いの苦手だから麦茶が飲みたくて」
「そ、そうなんだ」
白夜くんは、私の持っていた麦茶をぐいっと飲み干すと、ヒラヒラ手を振り去っていく。
それじゃ、お疲れ様」
私はポカンとしながらその後ろ姿を見送った。
「何あの子」
「白夜くんとどういう関係!?」
「白夜くんが、女の子の飲み物をもらうだなんて!」
ヒソヒソと噂する女子たち。
うう、視線が痛い!
「い、行こうか」
「うん」
私と沙雪ちゃんは、そそくさその場を離れた。
はあ。結局、インタビューどころじゃなかったな。
白夜くん、親しくなるのはいいんだけどさ、できればみんなの前で話しかけてこないでほしいな。
ファンの子たち、怖いんだもん!
私と沙雪ちゃんは、放課後、近所のとある市民グラウンドへとやってきた。
「ここで良いんだよね?」
「うん、多分」
二人で話していると、黄色い歓声が聞こえてくる。
「キャーッ!」
「白夜くーん!」
「カッコイイ!」
観客席では、女子たちが目をハートにして白夜くんを応援してる。
実は今日、サッカー部の試合があるんだけど、部員の一人が怪我をしちゃって、白夜くんが代わりに出ることになったんだって。
それで私は、その取材をしにきたんだけど……。
「すごいね……まさかこれ、みんな白夜くんのファンなの?」
沙雪ちゃんが目を丸くする。
本当、わたしもびっくりだよ。
「だよね。他の学校の生徒もいるし、小学生も、高校生もいるね、すごい」
私が答えると、沙雪ちゃんは小さくため息をついた。
「いいなあ、花は。そんなスーパースターと隣の部屋なんだから」
結局、私は沙雪ちゃんに白夜くんと隣の部屋同士になったことを話したんだ。
お弁当を作ってあげることになったことや、たまにうちに来て晩ご飯を食べていることはナイショだけどね。
「ははは。私もまだ実感が湧かないよ」
私は頭をポリポリとかいて、グラウンドを見つめた。
丁度よく、試合開始のホイッスルが鳴る。
割れんばかりの声援の中、白夜くんが相手チームからボールをうばった。
「キャーッ!」
「白夜くーん!」
白夜くんはそのままの一人でドリブルし、軽々とシュートを決めてしまった。
パサッ。
ボールがゴールに突き刺さる音。
地響きみたいな大きな歓声が上がる。
わあっ、綺麗なシュート。
私が夢中でシャッターを切っていると、急に白夜くんが振り向いた。
ん?
白夜くんはこちらの方を見ると、ニヤリと笑い、少しだけ舌を出した。
キャー!
悲鳴みたいな歓声が上がる。
「ねえねえ、今、こっち見なかった?」
「友達でもいたのかな?」
興奮しながらぴょんぴょん跳ねる女子たち。
ひょっとして今、私に向かって舌出してた?
気のせいかな?
「ねえねえ、今、白夜くんこっちのほう見てなかった!?」
沙雪ちゃんは顔を真っ赤にしながら背中をバンバンたたく。
「そ、そうだね」
私が適当に返事をすると、沙雪ちゃんはぷうっと頬をふくらませた。
「もー、相変わらず花ったら白夜くんに興味ないんだからー」
「あはは……」
その後も白夜くんは、さらに三得点を上げ、アシストまでして、大活躍だった。
改めて見ると、凄いなあ。サッカー部でもないのにハットトリックだなんて。
勉強も運動も、他の人とは次元が違うって感じ。
結局、試合は6対0で大勝ち。
ここまでくると、なんだか相手チームが可哀想かも。
「ねえねえ、白夜くんのこと、出待ちしない?」
沙雪ちゃんが提案してくる。
「うん、そうしよっか」
ひょっとしたら、試合終わりの白夜くんのインタビューできるかも。
そう思って、私たちは裏の出口へとやってきたんだけど――。
「うわ、すごい人だかり」
出口には、白夜くんファンの女の子たちがたくさん。
これじゃあ、インタビューどころか近づくこともできないよ。
なんて、あきらめていたその時――。
「ほらお前ら、邪魔だ邪魔だ!」
サッカー部のコーチの声がして私が顔を上げと、チラッとだけど、着替えを終えて出てくる白夜くんが見えた。
あっ、白夜くん。
私が白夜くんを呼び止めようとしたその時、一人の女子が白夜くんに駆け寄った。
白夜くん、お疲れ様。これどうぞ」
タオルを渡す、長いストレートヘアーの美少女。
あっ、あの子――生徒会副会長の綾瀬梨花ちゃんだ!
「ありがとう、副会長。わざわざ見に来てたんだ?」
ファンの子たちには塩対応なのに、綾瀬さんからは素直にタオルを受け取る白夜くん。
「あーん、先こされた!」
「仕方ないよ、相手はあの綾瀬さんだもん」
「梨香ちゃん、相変わらず可愛い!」
白夜くんファンの女の子たちがさわぐ。
「お似合いだよね、あの二人」
沙雪ちゃんもため息をつく。
「そ、そうだね」
私は綾瀬さんをじっと見つめた。
長いサラサラの黒髪に真っ白な肌。赤い唇に、大きな目。
ついたあだ名は生徒会の姫。
しかも、綾瀬さんは美人なだけでなく、成績もいつもトップクラスで運動神経も良い。
白夜くんファンの子たちも、綾瀬さんには敵わないって思ってるみたいで、誰も綾瀬さんには文句を言わない。
言ってみれば、公認カップルって感じ?
私が白夜くんの顔をチラリと見ると、白夜くんは涼しい顔で綾瀬さんと話してる。
白夜くん、女の子は苦手なはずなのに、綾瀬さんは平気みたい。
でも、あんな公認の彼女みたいな子がいるのに、私にお弁当や晩ごはんを作ってもらっていいのかな?
私がモヤモヤしていると、不意に白夜くんがこちらへ振り向き、笑顔で手を振った。
「あっ五十鈴さん」
わあっ、見てたのバレた!
すると、白夜くんが女の子の群れをかき分けてこっちにずんずんと歩いてきた。
「五十鈴さん、それ、ちょうだい」
「えっ!?」
白夜くんが指さしたのは、私が持っていたペットボトルの麦茶。
「……えーっと、飲みかけだけど、それでも良ければ」
「いいよ。なんか、試合後にスポーツドリンクは配られたんだけど、俺甘いの苦手だから麦茶が飲みたくて」
「そ、そうなんだ」
白夜くんは、私の持っていた麦茶をぐいっと飲み干すと、ヒラヒラ手を振り去っていく。
それじゃ、お疲れ様」
私はポカンとしながらその後ろ姿を見送った。
「何あの子」
「白夜くんとどういう関係!?」
「白夜くんが、女の子の飲み物をもらうだなんて!」
ヒソヒソと噂する女子たち。
うう、視線が痛い!
「い、行こうか」
「うん」
私と沙雪ちゃんは、そそくさその場を離れた。
はあ。結局、インタビューどころじゃなかったな。
白夜くん、親しくなるのはいいんだけどさ、できればみんなの前で話しかけてこないでほしいな。
ファンの子たち、怖いんだもん!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる