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9話 妨害①
しおりを挟む「シンデレラさんっ! ぜひ僕とダンスを!」
「いや、私が先だ!」
「君は男爵だろう! 爵位の高い私に譲れ!」
王子の挨拶が終わってからというもの、再びシンデレラは男性陣に囲まれてしまった。
シンデレラの意思関係なしに勝手に目の前で諍いが起こっているため、彼女はただ傍観している。
「ふう……何だか疲れますね。そろそろ帰りたいなあ……」
「ま、待ってくれ! 今何とかするから!」
不穏なことを言い出したシンデレラを、シゼルは必死の形相で止める。
シゼルが静かに手を上げると、その指先に青白い光が集まって、眩い閃光を放った。
「あれ、シンデレラさん!?」
「彼女はどこへ行った!?」
「一時的に君の姿を見えなくした。今のうちに移動しよう」
シゼルはシンデレラの手を引いて男性の輪から離脱し、比較的女性が集まるエリアに逃げ込む。
「よし、ここなら大丈夫か。魔法を解くよ」
会場の隅の目立たない場所で魔法を解き、粒子のような光と共にシンデレラが再び人の目に見えるようになる。
「あっ……悪い」
シンデレラの目線が下の方を見ており、シゼルがその視線を追うと、彼女の腕を持ったままだったことに気付く。シゼルは慌てて手を離した。
何となく気まずくて、シゼルはゴホンと咳払いをする。
「あとは王子と近付くことが出来たらいいんだけど」
シンデレラはシゼルが触れていた自分の腕を擦りながら、会場中央にいる王子を見つめている。
「一曲踊ったら帰っていいですか?」
「ええと……今何時だ?」
会場に時計はなく、シゼルはポケットから懐中時計を取り出して時間を確認する。
夜の十一時を回った頃だった。
「いや、早いな。十二時になる少し前にこの会場を抜け出して欲しいんだ。言ってなかったが、君の魔法は十二時で解けるから」
「え? なぜですか? 別に十二時以降も魔法使えますよね?」
「そういうもんだから! 深く突っ込まないでくれ!」
神のお告げで『十二時に魔法が解ける』と伝えられているのだから、シゼルは守るしかない。
シンデレラもわかっていてわざと聞いたのだ。からかう目的が満たされれば、それ以上何も言うことはなかった。
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