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六章 Return
十一月 <因果> 5
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俺達が
「Paradise Garden 中之島」に着いたとき、
太陽がはるか向こうの稜線に
その姿を消そうとしていた。
「二人共もう帰ったみたいだな」
「翔太さんも洋さんも冷たいわ」
茜は頬を膨らませたが、
いつ来るかわからない俺達を待てというのは
酷な話だった。
俺達は並んで腰を下ろした。
茜が鞄から煙草を出した。
俺は差し出されたケースから
黙って一本手に取った。
茜がライターを擦り、
俺は煙草をその火に近づけた。
手が小さく震えていた。
俺は茜にそれを悟られぬようすぐに火から離した。
そして大きく吸い込んでから
ゆっくりと煙を吐き出した。
眩暈にも似た感覚が襲ってきて
一瞬だけ俺の頭をぼんやりとさせた。
同時に気持ちが少し落ち着いた。
隣を見ると茜が煙草に火を点けたところだった。
茜は吸い込んだ煙を
「ぽっ」と小さな輪っかにして吐き出した。
俺は茜よりも大きな輪っかを
連続で三つ吐き出した。
それを見て茜が笑った。
「茜、今日はピアノのレッスンはないのか?」
「うん」
そして俺達は黙り込んだ。
沈黙が俺に考える時間をくれた。
なぜボス猿が死んでいたのか?
あの状況からしてボス猿は転落したと思われる。
しかし誤って転落したとは考え難い。
誰かが突き落とした・・。
一体誰が?
そしてそれはいつのことなのか?
俺が屋上へ上がったのは十六時四十分。
その時点ですでにボス猿は死んでいた。
俺達のクラスの帰りの会が終わり、
皆が教室からいなくなったのは十五時四十分。
そしてこの時、
二組の教室に残っている生徒もいなかった。
ボス猿は十五時四十分から十六時四十分の間に
殺されたことになる。
正確にはもっと絞り込める。
もし放課後すぐにボス猿が殺されたのだとしたら、
誰かがボス猿の死体を発見しているはずだ。
つまりボス猿は放課後、
子供達が学校からいなくなった後で殺されたのだ。
「・・どうしたの?あっくん」
茜の言葉で俺は我に返った。
「学校を出たときから何だか変だわ」
「そんなことないさ」
「・・そう。それならいいんだけど」
茜は小さな煙の輪っかを
「ぽっ」と吐き出してにこりと微笑んだ。
茜の真っ直ぐな目から逃げるように
俺は立ち上がった。
「茜、それを吸い終わったら帰ろう。
遅くなったら家の人が心配するだろ?」
「うん」
俺達は並んでマンションを出た。
辺りはすっかり闇に包まれていた。
俺達の前でタクシーが停まって
中からスーツ姿の若い男女が降りてきた。
二人は体を寄せ合ってマンションの中へと
消えていった。
俺は茜に一万円札を手渡して
そのタクシーに乗せた。
「あっくんは?」と言う茜を無視して、
俺は運転手に
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
ドアが閉まって窓から戸惑いの表情を見せる茜に
俺は手を振った。
タクシーが走り出したのを見届けてから、
俺は闇に紛れて学校へ戻った。
正門の前が騒がしかった。
数台のパトカーと制服警官、
それに野次馬らしき人だかりが見えた。
俺は脇道へ入ると
学校を大きく迂回して家に帰った。
帰宅後、
晩御飯の時に掛かってきた電話で
俺は明日が休校になったことを知らされた。
「Paradise Garden 中之島」に着いたとき、
太陽がはるか向こうの稜線に
その姿を消そうとしていた。
「二人共もう帰ったみたいだな」
「翔太さんも洋さんも冷たいわ」
茜は頬を膨らませたが、
いつ来るかわからない俺達を待てというのは
酷な話だった。
俺達は並んで腰を下ろした。
茜が鞄から煙草を出した。
俺は差し出されたケースから
黙って一本手に取った。
茜がライターを擦り、
俺は煙草をその火に近づけた。
手が小さく震えていた。
俺は茜にそれを悟られぬようすぐに火から離した。
そして大きく吸い込んでから
ゆっくりと煙を吐き出した。
眩暈にも似た感覚が襲ってきて
一瞬だけ俺の頭をぼんやりとさせた。
同時に気持ちが少し落ち着いた。
隣を見ると茜が煙草に火を点けたところだった。
茜は吸い込んだ煙を
「ぽっ」と小さな輪っかにして吐き出した。
俺は茜よりも大きな輪っかを
連続で三つ吐き出した。
それを見て茜が笑った。
「茜、今日はピアノのレッスンはないのか?」
「うん」
そして俺達は黙り込んだ。
沈黙が俺に考える時間をくれた。
なぜボス猿が死んでいたのか?
あの状況からしてボス猿は転落したと思われる。
しかし誤って転落したとは考え難い。
誰かが突き落とした・・。
一体誰が?
そしてそれはいつのことなのか?
俺が屋上へ上がったのは十六時四十分。
その時点ですでにボス猿は死んでいた。
俺達のクラスの帰りの会が終わり、
皆が教室からいなくなったのは十五時四十分。
そしてこの時、
二組の教室に残っている生徒もいなかった。
ボス猿は十五時四十分から十六時四十分の間に
殺されたことになる。
正確にはもっと絞り込める。
もし放課後すぐにボス猿が殺されたのだとしたら、
誰かがボス猿の死体を発見しているはずだ。
つまりボス猿は放課後、
子供達が学校からいなくなった後で殺されたのだ。
「・・どうしたの?あっくん」
茜の言葉で俺は我に返った。
「学校を出たときから何だか変だわ」
「そんなことないさ」
「・・そう。それならいいんだけど」
茜は小さな煙の輪っかを
「ぽっ」と吐き出してにこりと微笑んだ。
茜の真っ直ぐな目から逃げるように
俺は立ち上がった。
「茜、それを吸い終わったら帰ろう。
遅くなったら家の人が心配するだろ?」
「うん」
俺達は並んでマンションを出た。
辺りはすっかり闇に包まれていた。
俺達の前でタクシーが停まって
中からスーツ姿の若い男女が降りてきた。
二人は体を寄せ合ってマンションの中へと
消えていった。
俺は茜に一万円札を手渡して
そのタクシーに乗せた。
「あっくんは?」と言う茜を無視して、
俺は運転手に
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
ドアが閉まって窓から戸惑いの表情を見せる茜に
俺は手を振った。
タクシーが走り出したのを見届けてから、
俺は闇に紛れて学校へ戻った。
正門の前が騒がしかった。
数台のパトカーと制服警官、
それに野次馬らしき人だかりが見えた。
俺は脇道へ入ると
学校を大きく迂回して家に帰った。
帰宅後、
晩御飯の時に掛かってきた電話で
俺は明日が休校になったことを知らされた。
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