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四章 Reappearance
八月 <告解> 2
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八月六日の登校日。
この日、
校長の勅使河原から
葉山実果の死について子供達に話があった。
校長は詳しいことは話さず
「夏休み中の不幸な事故でした」
とだけ説明した。
余計な心配を子供達に与えないように
という配慮からだろう。
しかし子供は大人が考えているよりも
ずっと情報に明るい。
噂話が好きな大人の傍で
子供は常に聞き耳を立てている。
葉山の死が事故ではないことを
子供達は知っていた。
葉山実果は八月五日の夕暮れ、
六年二組の教室のベランダから飛び降りた。
葉山が一時期ふさぎ込んでいたという証言が
多数寄せられたこともあって、
警察は自殺と判断したようだった。
結局、俺は彼女の命を救うことができなかった。
今にして思えば、
彼女の言葉の中にあった「自分の意志」とは
自殺する意志だったのかもしれない。
彼女が以前のような明るさを取り戻していたのは、
死を決意したことで
迷いが吹っ切れたからだったのか。
俺はもっと慎重に
彼女の言葉の意味を考えるべきだったのだ。
人の命を奪うことは簡単なのに、
その命を救うことは難しい。
少女一人の命を救えなくて何が探偵団だ。
俺は翌日からの中期の夏期講習をすべて休んだ。
何度か洋から電話がかかってきたが
体調が悪いと嘘を吐いた。
この日、
校長の勅使河原から
葉山実果の死について子供達に話があった。
校長は詳しいことは話さず
「夏休み中の不幸な事故でした」
とだけ説明した。
余計な心配を子供達に与えないように
という配慮からだろう。
しかし子供は大人が考えているよりも
ずっと情報に明るい。
噂話が好きな大人の傍で
子供は常に聞き耳を立てている。
葉山の死が事故ではないことを
子供達は知っていた。
葉山実果は八月五日の夕暮れ、
六年二組の教室のベランダから飛び降りた。
葉山が一時期ふさぎ込んでいたという証言が
多数寄せられたこともあって、
警察は自殺と判断したようだった。
結局、俺は彼女の命を救うことができなかった。
今にして思えば、
彼女の言葉の中にあった「自分の意志」とは
自殺する意志だったのかもしれない。
彼女が以前のような明るさを取り戻していたのは、
死を決意したことで
迷いが吹っ切れたからだったのか。
俺はもっと慎重に
彼女の言葉の意味を考えるべきだったのだ。
人の命を奪うことは簡単なのに、
その命を救うことは難しい。
少女一人の命を救えなくて何が探偵団だ。
俺は翌日からの中期の夏期講習をすべて休んだ。
何度か洋から電話がかかってきたが
体調が悪いと嘘を吐いた。
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