上 下
74 / 148
四章 Reappearance

八月 <告解> 2

しおりを挟む
八月六日の登校日。
この日、
校長の勅使河原から
葉山実果の死について子供達に話があった。

校長は詳しいことは話さず
「夏休み中の不幸な事故でした」
とだけ説明した。
余計な心配を子供達に与えないように
という配慮からだろう。
しかし子供は大人が考えているよりも
ずっと情報に明るい。
噂話が好きな大人の傍で
子供は常に聞き耳を立てている。
葉山の死が事故ではないことを
子供達は知っていた。

葉山実果は八月五日の夕暮れ、
六年二組の教室のベランダから飛び降りた。

葉山が一時期ふさぎ込んでいたという証言が
多数寄せられたこともあって、
警察は自殺と判断したようだった。

結局、俺は彼女の命を救うことができなかった。

今にして思えば、
彼女の言葉の中にあった「自分の意志」とは
自殺する意志だったのかもしれない。
彼女が以前のような明るさを取り戻していたのは、
死を決意したことで
迷いが吹っ切れたからだったのか。
俺はもっと慎重に
彼女の言葉の意味を考えるべきだったのだ。

人の命を奪うことは簡単なのに、
その命を救うことは難しい。

少女一人の命を救えなくて何が探偵団だ。

俺は翌日からの中期の夏期講習をすべて休んだ。
何度か洋から電話がかかってきたが
体調が悪いと嘘を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【実話】友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
青春
とあるオッサンの青春実話です

the She

ハヤミ
青春
思い付きの鋏と女の子たちです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

葬儀場の多い町

鴉越
青春
中学生の千明と裕也の  すれ違い,恋,将来。 そんなあやふやで捉えることのできない『重要』とされるものを遠回しに知る会話。  必要のない時間を必要だと思えるよう教えてくれる人はいなかったがいつからかそう思っていた。    考え方のちがいを少しずつ感じる二人のお話。

処理中です...