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四章 Reappearance
七月 <会談> 7
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それから二日間で三人の集めてきた情報に
目ぼしいものはなかった。
元々葉山は隣クラスの生徒だし、
翔太と洋に関しては異性である。
二人の持ってきた情報は、
葉山に彼氏がいるということを
隣のクラスの男子は誰も知らない
ということだった。
頼みの綱は茜だったが、
女子のネットワークを駆使しても
葉山に彼氏がいるという話は
誰も聞いたことがないということだった。
葉山のクラスメイトは皆が皆、
口を揃えて彼女に恋人がいることを否定した。
もしかして葉山の彼氏は他のクラスの生徒なのか。
六年は全部で三クラス。
当然、俺達のクラスには葉山の彼氏はいない。
ならば。
一組の生徒の中に該当者がいるのか。
それからさらに一週間が過ぎた。
その間、
俺は翔太と洋に協力してもらって
一組の男子生徒を調べた。
結果、一組にも葉山の彼氏はいなかった。
俺は葉山の彼氏は他の学年の生徒かもしれない
という意見を出したが、
三人はその可能性は絶対にないと言い張った。
「葉山に彼氏がいるっていう情報が
出鱈目なんだよ」
と疑いの目を向ける洋に
翔太も「うんうん」と頷いた。
結局、葉山の彼氏の存在は確認できなかった。
そんな中、当の葉山に大きな変化がみられた。
不思議なことに、
学校で見かける彼女は
以前のように明るく元気な笑顔を取り戻していた。
ある日の放課後、
校庭でドッジボールをしていると、
葉山が数人の女子生徒と
楽しそうに歩いている姿を目撃した。
葉山は俺に気付くと笑顔で大きく手を振った。
それは何かが吹っ切れたかのような
元気な笑顔だった。
俺も左手を軽く上げてそれに応えた。
その様子を見た翔太と洋が邪推したが、
俺は二人の考えを笑って否定した。
何かが葉山の心に変化をもたらした。
その何かは
「前世」にはなく「今世」にだけ存在する。
つまり俺の存在だ。
正確には俺のとった行動に他ならない。
俺と葉山の間で交わされた会話は
取るに足らない世間話だった。
それでも。
俺が、いや俺と奥川が味方であることは
彼女には伝わった。
たったそれだけのことが彼女を勇気づけ、
生きる力を与えたのだとしたら。
悩みを抱えて命を絶つ人間は
世の中に多く存在する。
そのような人々を救うのは
案外、
些細な思いやりだったりするのかもしれない。
俺は葉山の元気な姿を見て、
彼女は「今世」では死を選ばないだろうと思った。
目ぼしいものはなかった。
元々葉山は隣クラスの生徒だし、
翔太と洋に関しては異性である。
二人の持ってきた情報は、
葉山に彼氏がいるということを
隣のクラスの男子は誰も知らない
ということだった。
頼みの綱は茜だったが、
女子のネットワークを駆使しても
葉山に彼氏がいるという話は
誰も聞いたことがないということだった。
葉山のクラスメイトは皆が皆、
口を揃えて彼女に恋人がいることを否定した。
もしかして葉山の彼氏は他のクラスの生徒なのか。
六年は全部で三クラス。
当然、俺達のクラスには葉山の彼氏はいない。
ならば。
一組の生徒の中に該当者がいるのか。
それからさらに一週間が過ぎた。
その間、
俺は翔太と洋に協力してもらって
一組の男子生徒を調べた。
結果、一組にも葉山の彼氏はいなかった。
俺は葉山の彼氏は他の学年の生徒かもしれない
という意見を出したが、
三人はその可能性は絶対にないと言い張った。
「葉山に彼氏がいるっていう情報が
出鱈目なんだよ」
と疑いの目を向ける洋に
翔太も「うんうん」と頷いた。
結局、葉山の彼氏の存在は確認できなかった。
そんな中、当の葉山に大きな変化がみられた。
不思議なことに、
学校で見かける彼女は
以前のように明るく元気な笑顔を取り戻していた。
ある日の放課後、
校庭でドッジボールをしていると、
葉山が数人の女子生徒と
楽しそうに歩いている姿を目撃した。
葉山は俺に気付くと笑顔で大きく手を振った。
それは何かが吹っ切れたかのような
元気な笑顔だった。
俺も左手を軽く上げてそれに応えた。
その様子を見た翔太と洋が邪推したが、
俺は二人の考えを笑って否定した。
何かが葉山の心に変化をもたらした。
その何かは
「前世」にはなく「今世」にだけ存在する。
つまり俺の存在だ。
正確には俺のとった行動に他ならない。
俺と葉山の間で交わされた会話は
取るに足らない世間話だった。
それでも。
俺が、いや俺と奥川が味方であることは
彼女には伝わった。
たったそれだけのことが彼女を勇気づけ、
生きる力を与えたのだとしたら。
悩みを抱えて命を絶つ人間は
世の中に多く存在する。
そのような人々を救うのは
案外、
些細な思いやりだったりするのかもしれない。
俺は葉山の元気な姿を見て、
彼女は「今世」では死を選ばないだろうと思った。
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