残春はさ迷える子羊達のコンチェルト

Mr.M

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第12楽章

第82話 クラブの2

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遊戯室のドアの前で僕は茜の表情を窺った。
少女の表情はやや暗かったが、
口をきつく結んで精一杯気丈に振舞っていた。
僕はゆっくりとドアを開けた。

奥のカウンターに座っていた西岡が
振り返って椅子から立ち上がった。
「どこに行ってたんだ?」
「・・君に聞きたいことがある」
僕は努めて冷静に返した。
「その前に。
 まずは俺の話を聞いてもらおうか。
 このゲームの謎を解く
 決定的な証拠を見つけたぜ」
そう言うと西岡は
両手をデニムのポケットに突っ込んだまま
「くっくっく」
と不敵に笑った。
茜が僕の方を見て小さく頷いた。

遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。

茜はカウンターの横の小さな丸テーブルの前に
車椅子を着けた。
西岡は彼女とは正反対のカウンターの端に、
座っていた。

「何か・・作ろうか?」
僕はカウンターの中から2人に声をかけた。
「俺はコイツがあるから大丈夫だ」
西岡はそう言って
ジンジャーエールの瓶を揺らした。
「わ、私は・・
 アルコールの入った甘いモノを
 お願いできますか」
茜はやや躊躇いがちに呟いた。

遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。

「『カルーア・ミルク』です。
 甘口で飲みやすいけど
 アルコール度数は高いから気を付けて」
僕はそう言葉を添えて茜の前にグラスを置いた。
茜は恐る恐る口をつけた。
それから僕の方を見て微笑んだ。
僕は小さく頷いてから
西岡の背後を大きく回ってカウンターに戻った。

「それで。
 ・・西岡くん。
 一体君は何を見つけたんだい?」
西岡はそれには答えずに
瓶に口をつけてからコクコクと
ジンジャーエールを飲んだ。
それから徐に1枚のカードを取り出すと
カウンターに置いた。
それは端々が僅かに折れ曲がった
『クラブの2』だった。
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