ボクは名探偵？

八章 日暮れと死

第48話 辞世

秀吉は乾の宅の寝間の畳の上で
息を引き取っていた。

死体には目立った外傷はなく、
その着衣にも
そして部屋にも乱れたところはなかった。

「・・心不全かと思われます」
秀吉の体を調べていた五代がポツリと呟いた。

なぜ秀吉が？
それが一番最初に浮かんだ疑問だった。
一体誰が？
そして政子と富子の顔が浮かんだ。

「せ、先生、こんな物が・・」
ボクの方を振り返った五代の手には
一枚の紙があった。
ボクは五代の許へ近づいてその紙を受け取った。

『霧かかり
　霧が晴れにし
　夜霧かな
　この世のことも
　夢のまた夢』

ボクは死体の顔を覗き込んだ。
秀吉の死顔はまるで寝ているかのような
穏やかな表情だった。

「とにかく・・本宅へ戻りましょう」
ボクは小さく呟いた。