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ルームナンバー319(3)
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通勤ルートの電車を逆方向から乗り込んだ私達だが、日中ましてや休日にこの路線を利用することなんてほぼ無いので、いつもより空いている車内も周囲の景色も、初めて見るような錯覚を覚えてしまう。
車窓からいつも見ていた公園の噴水も昼の光に照らされて通勤時よりもキラキラ輝いている。
その周りには沢山の親子連れが夏にはまだ少し早いだろうに水浴びなんかもしていたり。
神山透もそれに気がついたようで、どこか柔らかい表情でその様子を眺めている。
「噴水、キレイですね。いつか子供が生まれたりしたら、あんなところに遊びに連れて行くのも良さそうですよね」
繋いた手をきゅっと握りしめると、そんな事を言うのだった。
そうか、神山透もいつか誰かと結婚して、子供が生まれてパパになったりするのだな。
今の話に深い意味などないとは思いつつ、改めて神山透からそんなことを口にされるとツキンと胸が痛くなり、なぜかちょっと泣きそうになってくる。
「この辺りは高級住宅地なんで、あちこちに公園があるみたいですよ。緑の多いところに住めるのはいいですよね」
けれどそんな一瞬の感情の揺れを悟られたくない私は、同じ景色を見る振りをして適当に相槌を打ってみるのだった。
しばらく電車に揺られ最寄り駅に到着し、駅ナカのカフェで朝食兼昼食を軽く取って店を出ると、神山透はケーキの箱を手に持っていた。
「手ぶらで山本さんちにお伺いするのも何なので」
ニヤリと笑う神山透。あれ、どっかで聞いたことある台詞だな。
前回神山透のお宅に訪問した際の、ほんのちょっとしたやり取りなのに、覚えてくれていたのって、なんだか嬉しくなってくる。
「とは言っても、うちには私しか住んでませんけどね」
頬が自然と緩むのを感じながら、私はこれまた誰かさんの言葉をそのままそっくりお返しするのだった。
しばらく歩いた後に、5階建ての単身者用マンションに到着。その中の一室が私の部屋。通勤時間の短さと家賃の安さを優先させた為、築年数は古いが8畳の広さが確保されたスペースは、狭いながらも、一応は私の城だった。
「神山さんの叔父さんのおうちに比べたら狭いんですが、まあどうぞお入りください」
一応謙遜しながらも神山透を部屋の中へと招き入れて、とりあえずコーヒーでも入れますね、なんてキッチンに立つ私である。
「せっかく頂いたので、お持たせですがどうぞ」
なんて言って、神山透から頂いたケーキを早速出してみる。
小振りながらも真っ赤なイチゴと白いクリームのコントラストが映える、大変可愛らしくて美味しいケーキを堪能しつつ、他愛ない話をする私達。
が、心の中では「これからどうする?どうすればいい?」と半ばパニックである。異性を家に上げたことなど数少なく、ましてやイチャイチャする為だけに招くのなんて初めてなものだから、これからどうしてよいのか全くわからない。
そんな私の心を知ってか知らずか神山透は本棚の漫画の単行本を目ざとく見つけ、「この漫画、読みたいと思ってたやつなんですよね。読んでもいいですか?」なんてのんきに聞いてくる。
どうぞ、と言うと早速手に取りパラパラと本をめくり始める。
確かにその本は、映画化もされたベストセラーの漫画で、大変面白い本だった。
けど、それ、今?今読まないといけないやつ?
真剣な顔で漫画を読む神山透をややしばらく眺めていたが、やっぱり漫画よりもこちらを向いてほしい。
私を気にかけてほしい。
私だけを見ていてほしい。
……そう思ってしまった私は、足を伸ばして床に座る神山透の体を跨いで正面に乗ると、日中の、自分の部屋の中だというのに、
「神山さん、私とキスしません?」
と、大胆にも誘ってしまったのだった。
少し目を丸くした神山透はその後すぐに優しく笑うと、「いいですよ?」とわたしの唇に軽く触れるようなキスをする。
が、違う。欲しいのはそういうんじゃない。そういうんじゃなくて……。
思わず神山透の首に腕を回して、その目を見つめると、そのままゆっくり顔を近づけ、唇を奪うのだった。
唇を食んだ後、顔の角度を変えて舌先でノックするように唇に触れれば、神山透の唇が開かれ内へと誘われる。
舌と舌が絡み合ってお互いの口の内を行き来させると、くちゅくちゅと舌を動かす度に唾液の音が耳に響いて、益々いやらしい気持ちになってくる。
一旦口を離すと、神山透も息を弾ませ、その目は欲望を湛えているように見受けられた。
「神山さん、私と一緒に、気持ちいいことしませんか?」
堪らずそう誘うと、「もちろん喜んで」と微笑まれ、そのまま優しく押し倒されたのだった。
攻守交代。
口の中を蹂躪されながら、露わになった胸を揉みしだかれたり先端を摘まれたり。
お互いの一番敏感なところを擦り合わせてみたりしたら、相変わらずあっという間にグズグズに溶けてしまう。
そんな私の中に、神山透は素早く入ってきて抽挿を始めるが、ホテルでの朝とはまた違う性急さ。
遠慮の無い動きと荒い息遣いに神山透の余裕の無さを感じ取って、堪らない快楽と、なぜだか無性に愛おしさを覚えてしまう私なのだった。
……その後、今回もまた「好きって、言って?沢山聞かせて?」と言われて、まんまと好き好き言ってしまった私であるが、前回とちょっと違ったところと言えば、神山透もキスの雨を降らせながら「うん。僕も好き。大好き」とそれに応えていたところ。
「好き」を指す意味が何なのかはともかくとして、好きと言われた時の多幸感ときたら!!
胸がムズムズするような、身も心も蕩けてしまうのでないかと思うくらいのひどく甘い衝撃たるや、他に例えるものが見つからない。
こりゃ神山透も言わせたくなるはずだと妙に納得。これは取り扱い注意が必要だ。適切な用法・用量で使用しなければ、中毒になってしまいそうな予感。色々な意味で戻れなくなってしまいそう。
……どこかで、もう手遅れなんじゃないの?と言う声も聞こえたような気もするが、聞こえなかったものとして、取りあえず、十分気をつけなければならぬと肝に命ずる私であった。
車窓からいつも見ていた公園の噴水も昼の光に照らされて通勤時よりもキラキラ輝いている。
その周りには沢山の親子連れが夏にはまだ少し早いだろうに水浴びなんかもしていたり。
神山透もそれに気がついたようで、どこか柔らかい表情でその様子を眺めている。
「噴水、キレイですね。いつか子供が生まれたりしたら、あんなところに遊びに連れて行くのも良さそうですよね」
繋いた手をきゅっと握りしめると、そんな事を言うのだった。
そうか、神山透もいつか誰かと結婚して、子供が生まれてパパになったりするのだな。
今の話に深い意味などないとは思いつつ、改めて神山透からそんなことを口にされるとツキンと胸が痛くなり、なぜかちょっと泣きそうになってくる。
「この辺りは高級住宅地なんで、あちこちに公園があるみたいですよ。緑の多いところに住めるのはいいですよね」
けれどそんな一瞬の感情の揺れを悟られたくない私は、同じ景色を見る振りをして適当に相槌を打ってみるのだった。
しばらく電車に揺られ最寄り駅に到着し、駅ナカのカフェで朝食兼昼食を軽く取って店を出ると、神山透はケーキの箱を手に持っていた。
「手ぶらで山本さんちにお伺いするのも何なので」
ニヤリと笑う神山透。あれ、どっかで聞いたことある台詞だな。
前回神山透のお宅に訪問した際の、ほんのちょっとしたやり取りなのに、覚えてくれていたのって、なんだか嬉しくなってくる。
「とは言っても、うちには私しか住んでませんけどね」
頬が自然と緩むのを感じながら、私はこれまた誰かさんの言葉をそのままそっくりお返しするのだった。
しばらく歩いた後に、5階建ての単身者用マンションに到着。その中の一室が私の部屋。通勤時間の短さと家賃の安さを優先させた為、築年数は古いが8畳の広さが確保されたスペースは、狭いながらも、一応は私の城だった。
「神山さんの叔父さんのおうちに比べたら狭いんですが、まあどうぞお入りください」
一応謙遜しながらも神山透を部屋の中へと招き入れて、とりあえずコーヒーでも入れますね、なんてキッチンに立つ私である。
「せっかく頂いたので、お持たせですがどうぞ」
なんて言って、神山透から頂いたケーキを早速出してみる。
小振りながらも真っ赤なイチゴと白いクリームのコントラストが映える、大変可愛らしくて美味しいケーキを堪能しつつ、他愛ない話をする私達。
が、心の中では「これからどうする?どうすればいい?」と半ばパニックである。異性を家に上げたことなど数少なく、ましてやイチャイチャする為だけに招くのなんて初めてなものだから、これからどうしてよいのか全くわからない。
そんな私の心を知ってか知らずか神山透は本棚の漫画の単行本を目ざとく見つけ、「この漫画、読みたいと思ってたやつなんですよね。読んでもいいですか?」なんてのんきに聞いてくる。
どうぞ、と言うと早速手に取りパラパラと本をめくり始める。
確かにその本は、映画化もされたベストセラーの漫画で、大変面白い本だった。
けど、それ、今?今読まないといけないやつ?
真剣な顔で漫画を読む神山透をややしばらく眺めていたが、やっぱり漫画よりもこちらを向いてほしい。
私を気にかけてほしい。
私だけを見ていてほしい。
……そう思ってしまった私は、足を伸ばして床に座る神山透の体を跨いで正面に乗ると、日中の、自分の部屋の中だというのに、
「神山さん、私とキスしません?」
と、大胆にも誘ってしまったのだった。
少し目を丸くした神山透はその後すぐに優しく笑うと、「いいですよ?」とわたしの唇に軽く触れるようなキスをする。
が、違う。欲しいのはそういうんじゃない。そういうんじゃなくて……。
思わず神山透の首に腕を回して、その目を見つめると、そのままゆっくり顔を近づけ、唇を奪うのだった。
唇を食んだ後、顔の角度を変えて舌先でノックするように唇に触れれば、神山透の唇が開かれ内へと誘われる。
舌と舌が絡み合ってお互いの口の内を行き来させると、くちゅくちゅと舌を動かす度に唾液の音が耳に響いて、益々いやらしい気持ちになってくる。
一旦口を離すと、神山透も息を弾ませ、その目は欲望を湛えているように見受けられた。
「神山さん、私と一緒に、気持ちいいことしませんか?」
堪らずそう誘うと、「もちろん喜んで」と微笑まれ、そのまま優しく押し倒されたのだった。
攻守交代。
口の中を蹂躪されながら、露わになった胸を揉みしだかれたり先端を摘まれたり。
お互いの一番敏感なところを擦り合わせてみたりしたら、相変わらずあっという間にグズグズに溶けてしまう。
そんな私の中に、神山透は素早く入ってきて抽挿を始めるが、ホテルでの朝とはまた違う性急さ。
遠慮の無い動きと荒い息遣いに神山透の余裕の無さを感じ取って、堪らない快楽と、なぜだか無性に愛おしさを覚えてしまう私なのだった。
……その後、今回もまた「好きって、言って?沢山聞かせて?」と言われて、まんまと好き好き言ってしまった私であるが、前回とちょっと違ったところと言えば、神山透もキスの雨を降らせながら「うん。僕も好き。大好き」とそれに応えていたところ。
「好き」を指す意味が何なのかはともかくとして、好きと言われた時の多幸感ときたら!!
胸がムズムズするような、身も心も蕩けてしまうのでないかと思うくらいのひどく甘い衝撃たるや、他に例えるものが見つからない。
こりゃ神山透も言わせたくなるはずだと妙に納得。これは取り扱い注意が必要だ。適切な用法・用量で使用しなければ、中毒になってしまいそうな予感。色々な意味で戻れなくなってしまいそう。
……どこかで、もう手遅れなんじゃないの?と言う声も聞こえたような気もするが、聞こえなかったものとして、取りあえず、十分気をつけなければならぬと肝に命ずる私であった。
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