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「あっ……はぁっ、んっ!だ、だからダメだっ……って言っているだろう!!」

 恥辱に頬を染めながら拒否の言葉を放つ癖に、その声色はどこか官能的な甘い響きを秘めている。

 ……ここまでくれば、いくら花も恥らう乙女のルーシーと言えど、自分が男の何を触っていたのか大体の察しがついた。
 ズボンのポケットの最奥。その行き着く先といえば、足と足の付け根である。そこに収まる熱を持ったものといえば……まあ、要するに、そういうことだろう。

 盗まれた鋳貨を探す為だったとはいえ、とんでもないものを触ってしまった!!

「や、やだ、もうっ!なに変な声上げてるのよ!」
 
 やってしまった行為を振り返れば、急に羞恥心が湧いてくる。ぶわりと顔に血が上るのを感じながら、慌ててポケットから手を引っこ抜いたルーシーは男をギロリと睨みつけた。

「そ、それはお前がおかしなところを触ってくるからだろうがっ!」

 相変わらず涙目ながら、頬を真っ赤に染めた男も負けじと反論をする。
 
「うっ。だってそれは……紛らわしいところに紛らわしいものがあるんだもの。うっかり触れても仕方無いじゃないのっ!」
「紛らわしいも何も、人体の仕組みというものはそういうものだろう!仕方無いとはこちらの台詞だっ」
「だったら触った時点で、それは違うって言ってくれなきゃわからないわよ!変態!エッチ!」
「なっ……!それを言うならば最初から、触るなと言っていただろうが!そもそも聞く耳を持たなかったのはお前ではないか!」
 
 まずは謝罪、とは思うものの、泥棒相手に己の過ちを認めてしまうのはなんとも癪に障ってしまう。夢中になって触っていた事は棚に上げ、ルーシーがその感触を忘れようと必死に手を振り払いながら、男にギャンギャン噛みついていると、シイラの叫ぶ声が聞えてきた。
 
「ちょいとルーシーちゃん?!何やってるのさ!!」
「えぇ?何やってるも何も、さっきの泥棒を捕まえたのよ?シイラ婆ちゃん、もう大丈夫だからね!」

 今の会話を聞かれていませんように!
 都合の悪いところを省略しまくって、ルーシーはエヘンと胸を張るが、それを聞いたシイラはぎょっとした表情で先程より大きな声を張り上げるのだった。



「ルーシーちゃん!さっきの犯人は、憲兵さんに捕まえてもらったんだよ!あんた、一体誰を捕まえたっていうのさ?」


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