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初冒険者

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帝国の法の整備に各種条約の締結、各種税の扱いなどなど、様々な事を話し合い、ついに今日戦後交渉が終了する。
日数だけで言えばだったの7日。
しかし、参加した者達にとってはとても濃密な7日だった。

「後は帝国内外への通達だな。それは全て貴君らに任せよう。」
「「「はっ!  仰せのままに。」」」

帝国との戦後交渉が終われば次はグレイフィア王国内での会議だ。
主な内容は帝国に設立される大使館に赴任する者達の選出と論功行賞だ。
帝国の賠償金から報酬が出るが誰がどの程度か、また陞爵する者が誰か、新たに授爵する者はいるかなどを話し合う必要がある。
リリアはまだまだ休む事はできないようだ。

一方勇輝と葵だが……。

「ゆー君、薬草ってこれで合ってる?」
「えーと……うん。指定の薬草はそれで合ってるね。」

森の中で薬草採集をしていた。
もちろん遊んでいるわけではなくこれも立派な仕事だ。
というのも、折角冒険者として登録したのに全く仕事ができていない事を不満に思った勇輝がギルドに赴き依頼を受注したからだ。
葵は勇輝が出かける所を目ざとく見つけ、くっついてきた。
そのまま葵も冒険者として登録し、冒険者としてど定番のお仕事、薬草採集を行なっている。
どっかの誰かさんは薬草がどんなものかまるで分かってないのに勇んで出かけてすぐに戻ってくるという恥ずかしい失態を犯していたが、この2人はちゃんと確認を取っていた。

「よし、と。これで指定分集まったかな。」

依頼で指定された数を集めた2人は街道付近まで一旦戻り休憩を取る。

「式神召喚・白音」

癒しを求めて勇輝は白音を召喚する。
癒しという点では今は小狐になっている琥珀も候補のうちなのだが、1度出てきて以降、常に出っぱなし、式符へと送還される気配がまるでなく現在は王城でのんびりしている。
常に自由行動をしている式神が雪羅に続いて2体目となってしまった。
その為自由に使える式神はこの間の戦闘で式神使いのスキルLVが上がっても2体のままとなっている。
とはいえ、戦闘になった際は使える式神が最大の半分というのは少々心許ない気がしてくる。
人は総量の半分である50%となった際に、もう、と感じるか、まだと感じるかの2種類の人間が存在する。
携帯電話の電池残量で考えると分かりやすいだろう。
どうやら勇輝は前者のようだ。

「勇輝様。人の気配がするの。」

のんびりと、白音を撫でて癒されていたが白音の声に警戒する勇輝と葵。
そうしてしばらく待つと木々の向こう側から2人の少年と3人の少女が出てきた。

「あの、座り込んでますけど大丈夫ですか?」
「え、あ、大丈夫です。ちょっと休憩しているだけなので。」

どうやらこの少年少女達は森の中で座り込んでいる勇輝達を心配してくれたようだ。

「だから大丈夫って言ったろー。森の中でも浅い所だから問題ないって。」
「でも万が一があるかもしれないじゃないか。」
「まあまあ、この通り無事だったんだしそれでいいじゃないですか。」

やいやいと騒ぐ5人を見て勇輝達は随分と仲良いなと感心する。
ひょっとしたら自分達と同じように幼馴染みなのかもと考えた。

「随分と仲良いんだね。ひょっとして幼馴染み?」
「あ、はい。まあ幼馴染みというか腐れ縁ですね。」
「なんだと!?」
「まあまあ、言葉の綾だろうから落ち着いて。それよりもまずは自己紹介が先だよ。」
「ぐっ!  ま、まあ、そうだな。俺はロイ。冒険者をやっている。」
「僕はティムス。」
「私はティリア。」
「私はロココって言います。」
「最後は私ね。私はジュノン。よろしくね。」

赤髪短髪のロイ、茶髪のティムス、緑髪ショートのティリア、金髪セミロングのロココ、茶髪のロングツインテのジュノン。
最初に声をかけてきたのがティムスで、その後の問題ない発言をしたのがロイ。
ティリアは仲裁役というか、宥め役をやる事が多いようだ。
そして腐れ縁発言はジュノン。
ロココは今の所発言はない。

「じゃあ次は僕達だね。僕は勇輝。で、こっちが…「私は葵。ゆー君のフィアンセだよ。」…えっと、幼馴染みです。」
「えー!  結婚するって約束したじゃない!」
「したけど!  したけど今言う必要ないよね!?」
「とまあ、こんな感じでお二人は大変仲がいいの。最後に、私は白音。勇輝様の式神……まあ、使い魔のようなものと思って欲しいの。」
「「「「喋った!?」」」」

猫が突然喋るんだもの。
そりゃ驚くよね。

「か……か……か……か……」
「あっ!」

そしてロココが、か、という文字を繰り返しつぶやきながら俯きふるふると震えている。
その様子を見てジュノンがしまったという表情をしながら声を出し、止めようと動いている。
しかし止めることはできなかった。

「か?」
「かっわっ、いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
「ふにゃああああああ、なの!」
「「「「しまった……。」」」」

まるでラグビー部のようなタックルをかまし、白音を確保すると超高速なでなでを披露するロココ。
あまりの早さに呆然とし止めるのが遅れる勇輝。
その間もなでなでは止まらない。

「えっと、これは一体……?」
「すみません、ロココは可愛い物が大好きで、特にその中でも小動物が好きでして、我を忘れてこうなっちゃうんです。その、偶に、時々、それなりに……。」
「あ、ああ、そうなんだ……。」

それを聞いた勇輝はついっと視線をロココに向ける。
その向けた先では今もなでなでは止まっておらず、腕の中では白音がぐったりとしていた。
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