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戦後交渉
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祝勝会から1週間が経った。
1週間が経った今も国民は喜びお祭り騒ぎをしている。
一応国からは祝勝会の翌日、国民に向けて1月後に終戦及び祝勝の祭りを開催する事を通達しているが、恐らくその日までこのお祭り騒ぎは続くのではないかと思われる。
そして勇輝はといえば、その1週間の間退廃的な日々を過ごしていた。
勇輝本人はそんなつもりはないが、客観的に見れば退廃的としか言えないだろう。
勇輝はこの世界に来てからなんだかんだと元気に生活していたが、元々は身体が弱くずっと病院で生活していたのだ。
一度死にかけたという事もあるし、しばらくの間ゆっくりと過ごすようにという事になったわけだが……とある3人が暴走した。
日本にいた頃から虎視眈々と勇輝を狙っていた葵は勿論のこと、一騎打ち最終日前夜に結ばれたリリア、そして2人に負けるものかとアリスも勇輝の肉体を貪った。
結果退廃的な日々になった。
しかしそれも昨日まで。
今日はこれからラベスタ帝国との戦後交渉があるからだ。
いくら色に溺れてもリリアとアリスは勇輝を貪っていない時はしっかりとお仕事をしている。
国王であるリリアとリリアのサポートとしてアリスは大臣やら官僚やら貴族家当主やらとちゃんと会議をして来た。
勇輝にべったり、時に勇輝を貪る葵とは違うのだよ。
そんなわけでラベスタ帝国の将軍やら皇帝やら書記官やら大臣やらといった面々がやって来ていざ戦後交渉である。
「こちらからの要望は1つ。ラベスタ帝国の全て。」
リリアがいきなりふっかけた。
もちろん、最初から通るとは思ってはいない。
交渉術の基本、最初にふっかける事で本命の要求のハードルを下げるという奴だ。
しかし、ラベスタ帝国の全てという要求も無茶な要求というわけではない。
今回の戦争を仕掛けて来たラベスタ帝国の要求がグレイフィア王国だったのだから。
これまでは国境沿いの川の下流の権利、国境付近の森、廃坑寸前の金山などを要求するような小さな戦争を仕掛けられて来ていた。
その都度敗北し奪われた。
それが突然グレイフィア王国の全てを要求する大きなものとなった。
これまでは小手調べ、戦力を確認する為のものだったのだろう。
「分かった……全てを飲もう。」
だから、この皇帝の言葉にはたいそう驚かされた。
それはラベスタ帝国側も同様だったようで、皇帝以外の全ての人間が驚愕の表情を浮かべていた。
「……私は皇帝になりたかった。だが、私は次男であり兄は優秀、私が帝位を継ぐことは難しい。だから私は燻っていた軍部を掌握し武力を持って帝位を奪った。そんな私に待っていたのは忙殺されかねない仕事に、周りからの戦争をという声だ。私に自由はなくあるのは仕事のみ。……もう、疲れたのだ。」
開いた口が塞がらないとはこの事だろう……リリアはそう思った。
多くの人を、国を不幸にし、勇者召喚という秘術すらも使わせた癖に、疲れたなどと宣う皇帝に、怒りすら覚えると、そう感じ、体を小刻みに震わせる。
リリアはきっと感情に任せて怒鳴らなかった自分を褒めている事だろう。
「そう、ですか……では、今この瞬間より私がラベスタ帝国の皇帝位も貰い受けた。つまり貴方は用済みという事です。衛兵!」
「はっ!」
「この男を牢へ連れて行け。」
「は?」
「聞こえなかったの? 私は連れて行けと言ったのです。早くしなさい。この男を見てると気が狂いそうになる……。」
「はっ、はい! 直ちに!」
感情に任せて怒鳴らなかっただけで精神はギリギリだったようで、リリアは衛兵に追い出すように言い渡す。
まだ皇帝が要求を飲むと言っただけで正式に移譲が決まったわけではないし契約をしたわけではないのでこんなことを言えるわけではないが、帝国側としても皇帝にこのまま居られると困るのか文句の1つも出てこなかった。
「見苦しい姿を見せた。すまない。」
王として尊大に、言葉数少なく、それでもきっちりと謝罪を、という考えのもとリリアが謝る。
帝国側は相手は自分達に勝った国の王であり文句の言える立場ではないからか謝罪を受け入れる。
受け入れるしかないのだ。
自分達の命はこの王にかかっているのだから。
「では、改めて話し合おう。先程帝国の全てと言ったが、無意味に人を殺すつもりはない。」
殺すつもりはないと聞き安心してホッと息を吐く帝国側だが、リリアの言葉まだ続いている。
「だが此度の、いや、これまでの責任を取ってもらう必要はある。まず皇帝の処刑。これは不可避だ。多くの国が辛い目にあわされたのだからな。次に、今回の戦争に関わった全ての帝国貴族達は、程度によって爵位の降格あるいは返還、もしくは引退などをしてもらう。帝国は今後我が国の属国として支配下に入ってもらう。帝国運営の再編についてはまた後日話し合うが、それ以降は基本的には干渉しない。無論、こちらが上位であり、有事の際にはこちら側の決定を最優先させてもらうがな。次に賠償金だが、白金貨10万枚を支払ってもらう。これは今までに侵略してきた国の分も含まれている。最後に、諸君らが出来るのは欲を出すことではなく如何にして損失を少なくするか、それのみである。強大国であったという考えは捨て、殊勝な態度を期待する。では、話し合いを始めようではないか。」
自分が上位であると示すように、上から目線で言っていくリリア。
リリア個人はそういう性格ではないが、立場としてはそういう話し方が必要な時もある。
きっと後でこれでよかったのだろうか? と悩み、思い出して身悶えすることだろう。
王として必要だとは分かっていても羞恥心を刺激しないというわけではないのだ。
◇
話し合いは長々と、ほんとーーーに、長々と続いた。
午前からやっていたはずなのに気づけばお外は真っ暗、夜中の0時を超えてしまっていた。
その理由の1つに欲を出した馬鹿がいたのだ。
帝国側にも、王国側にも。
帝国側は再編後の良いポジションを要求するというものだったが、王国側のは帝国の美姫を差し出せというもの。
一応遠回しな言い方をしてはいたが、魂胆は丸見え。
これにはリリアも大激怒。
自分がそうなるんじゃないかと怯えていたのに、あろう事か身内がそんな事を考えたからだ。
怒ったリリアは退室してしまいしばらくの間休憩を余儀なくされたのだ。
ちなみに、リリアが戻ってきた後、疲れはてて寝ていた勇輝が見つかったとかなんとか……。
その後も話し合いは続き、数日にわたって行われた。
疲れて寝ている勇輝も何度か見られた。
1週間が経った今も国民は喜びお祭り騒ぎをしている。
一応国からは祝勝会の翌日、国民に向けて1月後に終戦及び祝勝の祭りを開催する事を通達しているが、恐らくその日までこのお祭り騒ぎは続くのではないかと思われる。
そして勇輝はといえば、その1週間の間退廃的な日々を過ごしていた。
勇輝本人はそんなつもりはないが、客観的に見れば退廃的としか言えないだろう。
勇輝はこの世界に来てからなんだかんだと元気に生活していたが、元々は身体が弱くずっと病院で生活していたのだ。
一度死にかけたという事もあるし、しばらくの間ゆっくりと過ごすようにという事になったわけだが……とある3人が暴走した。
日本にいた頃から虎視眈々と勇輝を狙っていた葵は勿論のこと、一騎打ち最終日前夜に結ばれたリリア、そして2人に負けるものかとアリスも勇輝の肉体を貪った。
結果退廃的な日々になった。
しかしそれも昨日まで。
今日はこれからラベスタ帝国との戦後交渉があるからだ。
いくら色に溺れてもリリアとアリスは勇輝を貪っていない時はしっかりとお仕事をしている。
国王であるリリアとリリアのサポートとしてアリスは大臣やら官僚やら貴族家当主やらとちゃんと会議をして来た。
勇輝にべったり、時に勇輝を貪る葵とは違うのだよ。
そんなわけでラベスタ帝国の将軍やら皇帝やら書記官やら大臣やらといった面々がやって来ていざ戦後交渉である。
「こちらからの要望は1つ。ラベスタ帝国の全て。」
リリアがいきなりふっかけた。
もちろん、最初から通るとは思ってはいない。
交渉術の基本、最初にふっかける事で本命の要求のハードルを下げるという奴だ。
しかし、ラベスタ帝国の全てという要求も無茶な要求というわけではない。
今回の戦争を仕掛けて来たラベスタ帝国の要求がグレイフィア王国だったのだから。
これまでは国境沿いの川の下流の権利、国境付近の森、廃坑寸前の金山などを要求するような小さな戦争を仕掛けられて来ていた。
その都度敗北し奪われた。
それが突然グレイフィア王国の全てを要求する大きなものとなった。
これまでは小手調べ、戦力を確認する為のものだったのだろう。
「分かった……全てを飲もう。」
だから、この皇帝の言葉にはたいそう驚かされた。
それはラベスタ帝国側も同様だったようで、皇帝以外の全ての人間が驚愕の表情を浮かべていた。
「……私は皇帝になりたかった。だが、私は次男であり兄は優秀、私が帝位を継ぐことは難しい。だから私は燻っていた軍部を掌握し武力を持って帝位を奪った。そんな私に待っていたのは忙殺されかねない仕事に、周りからの戦争をという声だ。私に自由はなくあるのは仕事のみ。……もう、疲れたのだ。」
開いた口が塞がらないとはこの事だろう……リリアはそう思った。
多くの人を、国を不幸にし、勇者召喚という秘術すらも使わせた癖に、疲れたなどと宣う皇帝に、怒りすら覚えると、そう感じ、体を小刻みに震わせる。
リリアはきっと感情に任せて怒鳴らなかった自分を褒めている事だろう。
「そう、ですか……では、今この瞬間より私がラベスタ帝国の皇帝位も貰い受けた。つまり貴方は用済みという事です。衛兵!」
「はっ!」
「この男を牢へ連れて行け。」
「は?」
「聞こえなかったの? 私は連れて行けと言ったのです。早くしなさい。この男を見てると気が狂いそうになる……。」
「はっ、はい! 直ちに!」
感情に任せて怒鳴らなかっただけで精神はギリギリだったようで、リリアは衛兵に追い出すように言い渡す。
まだ皇帝が要求を飲むと言っただけで正式に移譲が決まったわけではないし契約をしたわけではないのでこんなことを言えるわけではないが、帝国側としても皇帝にこのまま居られると困るのか文句の1つも出てこなかった。
「見苦しい姿を見せた。すまない。」
王として尊大に、言葉数少なく、それでもきっちりと謝罪を、という考えのもとリリアが謝る。
帝国側は相手は自分達に勝った国の王であり文句の言える立場ではないからか謝罪を受け入れる。
受け入れるしかないのだ。
自分達の命はこの王にかかっているのだから。
「では、改めて話し合おう。先程帝国の全てと言ったが、無意味に人を殺すつもりはない。」
殺すつもりはないと聞き安心してホッと息を吐く帝国側だが、リリアの言葉まだ続いている。
「だが此度の、いや、これまでの責任を取ってもらう必要はある。まず皇帝の処刑。これは不可避だ。多くの国が辛い目にあわされたのだからな。次に、今回の戦争に関わった全ての帝国貴族達は、程度によって爵位の降格あるいは返還、もしくは引退などをしてもらう。帝国は今後我が国の属国として支配下に入ってもらう。帝国運営の再編についてはまた後日話し合うが、それ以降は基本的には干渉しない。無論、こちらが上位であり、有事の際にはこちら側の決定を最優先させてもらうがな。次に賠償金だが、白金貨10万枚を支払ってもらう。これは今までに侵略してきた国の分も含まれている。最後に、諸君らが出来るのは欲を出すことではなく如何にして損失を少なくするか、それのみである。強大国であったという考えは捨て、殊勝な態度を期待する。では、話し合いを始めようではないか。」
自分が上位であると示すように、上から目線で言っていくリリア。
リリア個人はそういう性格ではないが、立場としてはそういう話し方が必要な時もある。
きっと後でこれでよかったのだろうか? と悩み、思い出して身悶えすることだろう。
王として必要だとは分かっていても羞恥心を刺激しないというわけではないのだ。
◇
話し合いは長々と、ほんとーーーに、長々と続いた。
午前からやっていたはずなのに気づけばお外は真っ暗、夜中の0時を超えてしまっていた。
その理由の1つに欲を出した馬鹿がいたのだ。
帝国側にも、王国側にも。
帝国側は再編後の良いポジションを要求するというものだったが、王国側のは帝国の美姫を差し出せというもの。
一応遠回しな言い方をしてはいたが、魂胆は丸見え。
これにはリリアも大激怒。
自分がそうなるんじゃないかと怯えていたのに、あろう事か身内がそんな事を考えたからだ。
怒ったリリアは退室してしまいしばらくの間休憩を余儀なくされたのだ。
ちなみに、リリアが戻ってきた後、疲れはてて寝ていた勇輝が見つかったとかなんとか……。
その後も話し合いは続き、数日にわたって行われた。
疲れて寝ている勇輝も何度か見られた。
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