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*WEB連載版
第57話 発覚していく日常
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「へー」
ロゼッタさんとイリーナのやり取りを見ていたルベルド殿下が、興味深そうに言った。
「なんか面白いことしてるじゃないか。おいしくはないのになんとか食べられるって、俺は気になるなぁ。俺にも用意してくれるか、ロゼッタ?」
「かしこまりました、ルベルド様」
「あ、私もお願いします、ロゼッタさん!」
どんな味か、私もちょっと興味があるわ。
「はい、アデライザ様。ではみなさんの分を用意してきます」
と、ロゼッタさんは厨房の方へと消えていったのだった。
そしてすぐに料理が運ばれてきた。
「……冷めてるぞ、これ」
ルベルド殿下が残念そうな顔で言う。
「冷めているのではありません。冷たくしてあるのです」
と、ロゼッタさんが言い放つ。
「ふぅん。まあいいや、いただきます」
と口に含むルベルド殿下――。しかしその顔色がすぐに変わった。
「……マズい」
「え?」
私も自分の前に供された冷めたスープを口に含む。
「……うっ」
……それは、冷めているわ酸っぱいわでとても美味しいとはいえないようなスープだったのだ。
「そうですかしら。わたくし、これならなんとか食べられますけど」
と冷たい酸っぱいスープを口に運ぶイリーナ。
「イリーナ……?」
イリーナの食の好みの急激な変化に、私は戸惑いを覚えるのだった。
ダドリー様の急な来訪といい、イリーナの体調といい、何かがおかしい気がした。なんだか胸騒ぎがする。
結局、スープは……もったいないけど下げてもらった。
「アデライザ様。少しお話をよろしいでしょうか」
食事を終えて部屋に戻ろうとしたところで、不意に呼び止められた。
振り返るとそこには、いつも通り無表情のロゼッタさんがいて……。
「はい、なんでしょうか?」
「イリーナ様のことで、ご報告しておきたいことがございます」
「なにかしら」
「……アデライザ様、イリーナ様は妊娠していると思われます」
「え?」
あ、そうか。ロゼッタさんはまだ、イリーナの妊娠が嘘だって知らないのね。
「それなんだけどね、妊娠は嘘だってイリーナが……」
「いえ。ダドリー様を寝取ったときの話ではございません。いま、現実に、リアルタイムで、妊娠していると思われます」
「は?」
「……つまり、イリーナ様の体調が悪いのは、つわりです」
「え……?」
つわり? つわりって、あの、妊婦さんがなるという……気分が悪くなったり、食の好みが変化したり、酸っぱいものが食べたくなるっていう……。……いまのイリーナの症状、そのままだわ。
「え、ま、待ってよ。イリーナは酸っぱいものが食べたいとはいってないわ。これなら食べられる、とは言っていたけど……」
「つわりと言っても人によって様々に違うんです。酸っぱいものが積極的に食べたくなる人もいるでしょうが、私の知り合いに出産経験のある女性がいるのですが、彼女も酸っぱいものくらいしか食べられない、という状態でした。その状態にイリーナ様はそっくりだったのです。……私の経験上、それしか知らない、ともいえますが……」
「で、でも、それだけでは……」
「ルベルド殿下が魔力妊娠検査薬を調合できますので、それを使って検査していただこうと思っております」
「………………そ、そうね。検査薬を作れるなら、それを使うべきだわ。でも本当に作れるの? 魔力妊娠検査薬なんて……」
魔力妊娠検査薬とは、魔力によって妊娠を検査する、というものである。
胎児にはほんの少しだけ魔力が宿るのだ。それを調べれば、父親が誰かまで分かる。
ちなみにこれは胎児期のみに見られる現象で、生まれてからも魔力が永続しているかどうかは定かではない。ちなみに私は永続しなかった。
魔力検査薬は魔法薬なので、作る際には魔力が必要になる。
魔力のない私やルベルドには作れない薬だ……。
「薬を作る際の魔力は私が担当します。ルベルド様には知識をお借りするだけです」
「そ、そう……。ルベルド殿下にはきちんと説明してあげてね。もちろんイリーナには説明してから使ってあげてね……」
「もちろんですとも。ルベルド様は快諾して下さるはずですわ。……では、失礼いたします」
ロゼッタさんはスカートの端を摘まむ淑女の礼をし去って行った。
取り残された私は急展開に呆然としていた。
ロゼッタが本当に妊娠……?
ええと、じゃあ、父親は誰なの? 殿下じゃないだろうし、やっぱりダドリー様?
ダドリー様はこのことは知っているの……?
ロゼッタさんとイリーナのやり取りを見ていたルベルド殿下が、興味深そうに言った。
「なんか面白いことしてるじゃないか。おいしくはないのになんとか食べられるって、俺は気になるなぁ。俺にも用意してくれるか、ロゼッタ?」
「かしこまりました、ルベルド様」
「あ、私もお願いします、ロゼッタさん!」
どんな味か、私もちょっと興味があるわ。
「はい、アデライザ様。ではみなさんの分を用意してきます」
と、ロゼッタさんは厨房の方へと消えていったのだった。
そしてすぐに料理が運ばれてきた。
「……冷めてるぞ、これ」
ルベルド殿下が残念そうな顔で言う。
「冷めているのではありません。冷たくしてあるのです」
と、ロゼッタさんが言い放つ。
「ふぅん。まあいいや、いただきます」
と口に含むルベルド殿下――。しかしその顔色がすぐに変わった。
「……マズい」
「え?」
私も自分の前に供された冷めたスープを口に含む。
「……うっ」
……それは、冷めているわ酸っぱいわでとても美味しいとはいえないようなスープだったのだ。
「そうですかしら。わたくし、これならなんとか食べられますけど」
と冷たい酸っぱいスープを口に運ぶイリーナ。
「イリーナ……?」
イリーナの食の好みの急激な変化に、私は戸惑いを覚えるのだった。
ダドリー様の急な来訪といい、イリーナの体調といい、何かがおかしい気がした。なんだか胸騒ぎがする。
結局、スープは……もったいないけど下げてもらった。
「アデライザ様。少しお話をよろしいでしょうか」
食事を終えて部屋に戻ろうとしたところで、不意に呼び止められた。
振り返るとそこには、いつも通り無表情のロゼッタさんがいて……。
「はい、なんでしょうか?」
「イリーナ様のことで、ご報告しておきたいことがございます」
「なにかしら」
「……アデライザ様、イリーナ様は妊娠していると思われます」
「え?」
あ、そうか。ロゼッタさんはまだ、イリーナの妊娠が嘘だって知らないのね。
「それなんだけどね、妊娠は嘘だってイリーナが……」
「いえ。ダドリー様を寝取ったときの話ではございません。いま、現実に、リアルタイムで、妊娠していると思われます」
「は?」
「……つまり、イリーナ様の体調が悪いのは、つわりです」
「え……?」
つわり? つわりって、あの、妊婦さんがなるという……気分が悪くなったり、食の好みが変化したり、酸っぱいものが食べたくなるっていう……。……いまのイリーナの症状、そのままだわ。
「え、ま、待ってよ。イリーナは酸っぱいものが食べたいとはいってないわ。これなら食べられる、とは言っていたけど……」
「つわりと言っても人によって様々に違うんです。酸っぱいものが積極的に食べたくなる人もいるでしょうが、私の知り合いに出産経験のある女性がいるのですが、彼女も酸っぱいものくらいしか食べられない、という状態でした。その状態にイリーナ様はそっくりだったのです。……私の経験上、それしか知らない、ともいえますが……」
「で、でも、それだけでは……」
「ルベルド殿下が魔力妊娠検査薬を調合できますので、それを使って検査していただこうと思っております」
「………………そ、そうね。検査薬を作れるなら、それを使うべきだわ。でも本当に作れるの? 魔力妊娠検査薬なんて……」
魔力妊娠検査薬とは、魔力によって妊娠を検査する、というものである。
胎児にはほんの少しだけ魔力が宿るのだ。それを調べれば、父親が誰かまで分かる。
ちなみにこれは胎児期のみに見られる現象で、生まれてからも魔力が永続しているかどうかは定かではない。ちなみに私は永続しなかった。
魔力検査薬は魔法薬なので、作る際には魔力が必要になる。
魔力のない私やルベルドには作れない薬だ……。
「薬を作る際の魔力は私が担当します。ルベルド様には知識をお借りするだけです」
「そ、そう……。ルベルド殿下にはきちんと説明してあげてね。もちろんイリーナには説明してから使ってあげてね……」
「もちろんですとも。ルベルド様は快諾して下さるはずですわ。……では、失礼いたします」
ロゼッタさんはスカートの端を摘まむ淑女の礼をし去って行った。
取り残された私は急展開に呆然としていた。
ロゼッタが本当に妊娠……?
ええと、じゃあ、父親は誰なの? 殿下じゃないだろうし、やっぱりダドリー様?
ダドリー様はこのことは知っているの……?
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