1 / 8
第1話 婚約破棄された公爵令嬢
しおりを挟む
私はミリフィア・シリオス。シリオス公爵家の長女です。
私の運命は、その夜、唐突に変わりました。
ある夜会でのことです。
「ミリフィア・シリオスよ! 貴様との婚約を破棄する!」
王子殿下より直々にそう宣言されたのです。
「この俺、オーティグロッド・アーウィンディークの婚約者でありながら、そなたは男爵家の令嬢であるリディア嬢に対し酷い嫌がらせをしたそうだな!」
私はただ唖然としておりました。
嫌がらせ? なんのことでしょう?
私は王子妃になるために、幼い頃から努力してまいりましたのに……。
私の表情を見て、オーティグロッド殿下は続けます。
「さらにだ! お前はリディア嬢に対して嫌がらせを行い、ついには階段から突き落としたというではないか! これは許されざる行為だぞ! 本来なら極刑ものだが、情けをかけて命だけは助けてやる。だが今後一切、貴族社会に戻ることは許さん! 平民として生きるがいい!」
私がリディア様に嫌がらせ? しかも階段から突き落とす!? そんなはずありませんわ!
だって私、リディア様から露骨に避けられていたようなところはありましたけれど、でもそこまで険悪になるほどのことはありませんでしたもの。
そう思っていましたら、周りにいた貴族達が騒ぎ始めました。
「聞きまして? シリオス公爵家のミリフィア様ったら、王子殿下の婚約者なのに男爵家の令嬢に嫌がらせをしていたそうですわよ!」
「最低ですね。そういえば僕に媚び売ってきたことがあったっけ。あれは気持ちが悪かったなぁ」
「ええ、ええ、わかりますわ~! わたくしもシリオス公爵家の方ってどうも苦手でしたもの~!」
ひ、酷い。そんな根も葉もないことを……。
信じられない思いのまま立ち尽くしていると、王子殿下はふんと鼻で笑いました。
「それにミリフィア、お前には莫大な借金あるそうではないか」
「そっ、それは親戚の方々が……」
この春父が亡くなってからというもの、我がシリオス公爵家は親戚の方々が牛耳る有名無実の公爵家となっているのでした。
親戚の方々は今もシリオス家から資産や財産を抜き取って、やりたい放題に毎夜毎夜屋敷で宴会をしています。
潤沢な資金のあったはずのシリオス家ですが、さすがにそこまでの散財には耐えられません。
お金のなくなった親戚の方々は、ついにはシリオス家の名を使い借金を始めてしまったのでした。
「はんっ、借金まみれの落ちぶれ公爵令嬢か。そんなやつが王家に嫁げるとでも思っていたのか?」
「そ、それは……」
確かに、厄介な親戚に食いつぶされた公爵家の令嬢など王家に入れることはできないでしょう。ともすれば王家すら寄生される危険があるからです。
けれどその時、王子殿下は言いました。
「そんなお前への、これは俺からの情けだ……、感謝するがいい。お前には高級娼館を紹介してやろう。もちろん紹介料は俺が貰うがな!」
王子殿下の言葉。これこそが私の運命を変えた一言だったのです。
「しょうかん? それは一体どういう意味なのでしょう? 私は娼婦になるつもりはありませ──」
「さらばだミリフィア! せいぜい励めよ!」
「あっ! 待ってくださいまし!」
私は必死に呼び止めようとしましたが、王子殿下は振り返ることなくその場を去ってしまいした。
ともに去ろうとしていたリディア様が振り返ったかと思ったら、勝ち誇ったような顔で私を鼻で笑いました。
「お可愛らしいあなたならすぐに太客もついて大人気になるでしょうね、ミリフィア様!」
「え、ちょっ……リディア様、待って下さいまし! 私はあなたをいじめてなんか……」
「ごきげんよう、公爵令嬢ミリフィア様。娼婦は身体が資本とききますわ、ご商売のためにお身体をお大事になさいませね!」
私の運命は、その夜、唐突に変わりました。
ある夜会でのことです。
「ミリフィア・シリオスよ! 貴様との婚約を破棄する!」
王子殿下より直々にそう宣言されたのです。
「この俺、オーティグロッド・アーウィンディークの婚約者でありながら、そなたは男爵家の令嬢であるリディア嬢に対し酷い嫌がらせをしたそうだな!」
私はただ唖然としておりました。
嫌がらせ? なんのことでしょう?
私は王子妃になるために、幼い頃から努力してまいりましたのに……。
私の表情を見て、オーティグロッド殿下は続けます。
「さらにだ! お前はリディア嬢に対して嫌がらせを行い、ついには階段から突き落としたというではないか! これは許されざる行為だぞ! 本来なら極刑ものだが、情けをかけて命だけは助けてやる。だが今後一切、貴族社会に戻ることは許さん! 平民として生きるがいい!」
私がリディア様に嫌がらせ? しかも階段から突き落とす!? そんなはずありませんわ!
だって私、リディア様から露骨に避けられていたようなところはありましたけれど、でもそこまで険悪になるほどのことはありませんでしたもの。
そう思っていましたら、周りにいた貴族達が騒ぎ始めました。
「聞きまして? シリオス公爵家のミリフィア様ったら、王子殿下の婚約者なのに男爵家の令嬢に嫌がらせをしていたそうですわよ!」
「最低ですね。そういえば僕に媚び売ってきたことがあったっけ。あれは気持ちが悪かったなぁ」
「ええ、ええ、わかりますわ~! わたくしもシリオス公爵家の方ってどうも苦手でしたもの~!」
ひ、酷い。そんな根も葉もないことを……。
信じられない思いのまま立ち尽くしていると、王子殿下はふんと鼻で笑いました。
「それにミリフィア、お前には莫大な借金あるそうではないか」
「そっ、それは親戚の方々が……」
この春父が亡くなってからというもの、我がシリオス公爵家は親戚の方々が牛耳る有名無実の公爵家となっているのでした。
親戚の方々は今もシリオス家から資産や財産を抜き取って、やりたい放題に毎夜毎夜屋敷で宴会をしています。
潤沢な資金のあったはずのシリオス家ですが、さすがにそこまでの散財には耐えられません。
お金のなくなった親戚の方々は、ついにはシリオス家の名を使い借金を始めてしまったのでした。
「はんっ、借金まみれの落ちぶれ公爵令嬢か。そんなやつが王家に嫁げるとでも思っていたのか?」
「そ、それは……」
確かに、厄介な親戚に食いつぶされた公爵家の令嬢など王家に入れることはできないでしょう。ともすれば王家すら寄生される危険があるからです。
けれどその時、王子殿下は言いました。
「そんなお前への、これは俺からの情けだ……、感謝するがいい。お前には高級娼館を紹介してやろう。もちろん紹介料は俺が貰うがな!」
王子殿下の言葉。これこそが私の運命を変えた一言だったのです。
「しょうかん? それは一体どういう意味なのでしょう? 私は娼婦になるつもりはありませ──」
「さらばだミリフィア! せいぜい励めよ!」
「あっ! 待ってくださいまし!」
私は必死に呼び止めようとしましたが、王子殿下は振り返ることなくその場を去ってしまいした。
ともに去ろうとしていたリディア様が振り返ったかと思ったら、勝ち誇ったような顔で私を鼻で笑いました。
「お可愛らしいあなたならすぐに太客もついて大人気になるでしょうね、ミリフィア様!」
「え、ちょっ……リディア様、待って下さいまし! 私はあなたをいじめてなんか……」
「ごきげんよう、公爵令嬢ミリフィア様。娼婦は身体が資本とききますわ、ご商売のためにお身体をお大事になさいませね!」
2
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
公爵家のご令嬢は婚約者に裏切られて~愛と溺愛のrequiem~
一ノ瀬 彩音
恋愛
婚約者に裏切られた貴族令嬢。
貴族令嬢はどうするのか?
※この物語はフィクションです。
本文内の事は決してマネしてはいけません。
「公爵家のご令嬢は婚約者に裏切られて~愛と復讐のrequiem~」のタイトルを変更いたしました。
この作品はHOTランキング9位をお取りしたのですが、
作者(著者)が未熟なのに誠に有難う御座います。
淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。
一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。
そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。
ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。
慕ってはいても恋には至らなかった。
やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。
私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす
――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎
しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎
困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で……
えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね?
※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。
※pixivにも掲載。
8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~
sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。
ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。
そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
悪役令嬢はオッサンフェチ。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
侯爵令嬢であるクラリッサは、よく読んでいた小説で悪役令嬢であった前世を突然思い出す。
何故自分がクラリッサになったかどうかは今はどうでも良い。
ただ婚約者であるキース王子は、いわゆる細身の優男系美男子であり、万人受けするかも知れないが正直自分の好みではない。
ヒロイン的立場である伯爵令嬢アンナリリーが王子と結ばれるため、私がいじめて婚約破棄されるのは全く問題もないのだが、意地悪するのも気分が悪いし、家から追い出されるのは困るのだ。
だって私が好きなのは執事のヒューバートなのだから。
それならさっさと婚約破棄して貰おう、どうせ二人が結ばれるなら、揉め事もなく王子がバカを晒すこともなく、早い方が良いものね。私はヒューバートを落とすことに全力を尽くせるし。
……というところから始まるラブコメです。
悪役令嬢といいつつも小説の設定だけで、計算高いですが悪さもしませんしざまあもありません。単にオッサン好きな令嬢が、防御力高めなマッチョ系執事を落とすためにあれこれ頑張るというシンプルなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる