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第26話 【閑話】ナルティーヌの場合1:ナルティーヌ視点
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ナルティーヌはゆっくりと目を開けた。
そこは、真っ白な空間だった。
周りを見渡しても何もない。ただもやもやと白い霧が広がっているだけだ。
(なんですの、ここは? 私はどうしてここにいるんですの?)
記憶を探るも思い出せない。
分かるのは、自分がナルティーヌ・ヴァランティーヌだということだけだった。
『ああ、目を覚ましたね』
声をかけられた。
振り返るとそこには、ナルティーヌより少し年下の男の子がいた。それも女の子いたいに可愛らしい少年だ。
(この子は……?)
『初めまして。ボクの名前はトゥルッセ・イティートル。あなたとは以前からの知り合いだよ』
そうだ。彼は私の知り合いだ。
『はじめまして。――あ、ごめんなさいね。ナル、あなたのこと知ってるはずなのにど忘れしちゃったみたいなんですの』
『しょうがないなぁ。じゃあ説明するよ。ボクはヴァランティーヌ流武術の門下生の一人で、とくにナルティーヌ、あなたが指導してくれている愛弟子の一人だ。ただ、残念ながら武術には向いていないから、ナルティーヌの個人マネージャーを主にしているよ』
『個人マネージャー……?』
そんなのいたっけ?
『そうだよ。あなたは師範代なんだし個人マネージャーがいたっておかしくないだろ?』
『え、ええ。そうですわね……。あなたは私の個人マネージャーですわ』
『そうさ。ボクはあなたのお気に入りなんだ。いろいろな薬効を付与できるおいしい薬草水を差し入れしたり、マッサージをして疲れをとってあげたり、組み手の相手をしたりしているよ』
『へぇ、マッサージをしてくれるなんてありがたいですわ! ……でも組み手? 私と組み手をするんですの?』
『そうだよ。ふふっ、組み手っていうのはボクらの間の隠語だろ? ベッドの上での組み手のことだよ。あなたの性欲はボクが解消してるのさ』
『ふぅん……? そんなことには興味ないのですが……。それでもしているのですか? なんだか不思議な感じですわね』
『細かいことは気にしないでおくれよ。あなただってゼナとフレデリクのイチャイチャを見て欲求が溜まることもあるだろ?』
『そういうのは走り込みをすれば解消できるものですわ』
『うーん。予想以上に真面目だな。まあいいや。とにかく、ボクとあなたは定期的に性行為をしているんだよ』
『そ、そうですの。なんだかよく分からないけど、ありがとうございます』
『お礼なんかいらないよ。むしろこっちがお礼を言いたいくらいさ。こんなに気持ちのいいことをさせてもらって、本当に助かっているよ』
『いえ、どういたしまして。私も、その、とても気持ちいいですわ……』
『そうだろう? ははは、あなたの個人マネージャーとして性欲の管理もボクの仕事ってことさ』
『え、ええ……』
個人マネージャーは普通そんなことしないけど……、まあ、細かいことはいいか。とにかく彼との行為は気持ちいいもので……気持ちいいのか? 未知数だ。
おかしい。性欲解消をしてもらっているのに肝心の経験の記憶が欠如している。
性欲解消なんてしたことがないような気がする。どういうことだ?
『ところでさ、ナル師範代にとってゼナってどんな存在なの?』
『ゼナ様は……、いろいろあったけど、ゼナ様は私の親友ですわ』
『ゼナの【眼】についてはなにか知ってる?』
『眼……? いったいなんの話ですの?』
『ゼナの素顔を見たことはあるんだよね?』
『ええ、それはもちろん』
『変な気分にならなかった?』
『とくには……。変な気分って?』
『性的な高まりだよ。ボクとしているときに感じるようなやつ』
『感じませんわ。ねえ、私、そもそもそういう感覚がどんなものだか分からないんですの。本当にあなたとしたことがあったかしら?』
『あなたは処女か。いい拾いものをしたな……。こんど思いっきりよがらせてあげるよ』
『はい、お願いしますわ』
『素直なのは好きだぜ、ナルティーヌ。まあそれはそれとして……』
トゥルッセは顎に手を当てて考え込む。
『ゼナの【眼】は同性には効かないのか。あくまでも繁殖目的ってことかな?』
『なんの話ですの?』
『ううん、なんでもないよ。じゃあ次はパスカル殿下についてだ。ナルティーヌの新しいお弟子さんのパスカル殿下。彼のことはどう思ってる?』
『放っておけない可愛い弟ですわ。本物のお兄さんがいるのにこんなこというのもなんですけど』
『だから弟子にしたの?』
『ええ。気になってしまって。それで私が鍛え直したくなったのですわ』
『それ、パスカル殿下のこと性の対象として捕らえてるってこと?』
『いいえ。全くその気がおきませんわね。私にはあなたという人もいるのですし』
『ああ、ボクのことは勘定に入れなくていいよ。ボクたちはあくまで身体だけの関係だからさ』
『私はあなたを好きではないのですか?』
『ああそうさ。ただ性欲を解消するだけの関係だよ』
『そう、ですのね……分かりましたわ』
『パスカル殿下の話に戻すよ。彼は第二王子だ。王族だよ。でもあなたを慕っている。イケメンじゃないからその気にならないのかな?』
『そんな。パスカル殿下は確かにフレデリク殿下に比べたら華麗さはないけど……、あの子はあの子でちゃんと可愛い顔をしてますわよ。でもだからといってそういう気持ちになるかというとならないだけです。あの子は弟子ですし、あなたみたいに性欲解消の相手でもありませんし』
『なるほどね、ありがとう。本当にあなたは糞真面目なんだな、ナルティーヌ。まあ、こんなところか……』
『ねえ、結局どういうことですの? ここはいったいなんなんですの?』
白くてもやもやしている空間……。ナルティーヌとトゥルッセの二人だけしかいない、この空間。いったいなんなのだろう。
『いいのさ、あなたはそんなこと気にしなくて。さぁナルティーヌ、愛弟子が呼んでるよ。そろそろ返事をしてあげようね』
そこは、真っ白な空間だった。
周りを見渡しても何もない。ただもやもやと白い霧が広がっているだけだ。
(なんですの、ここは? 私はどうしてここにいるんですの?)
記憶を探るも思い出せない。
分かるのは、自分がナルティーヌ・ヴァランティーヌだということだけだった。
『ああ、目を覚ましたね』
声をかけられた。
振り返るとそこには、ナルティーヌより少し年下の男の子がいた。それも女の子いたいに可愛らしい少年だ。
(この子は……?)
『初めまして。ボクの名前はトゥルッセ・イティートル。あなたとは以前からの知り合いだよ』
そうだ。彼は私の知り合いだ。
『はじめまして。――あ、ごめんなさいね。ナル、あなたのこと知ってるはずなのにど忘れしちゃったみたいなんですの』
『しょうがないなぁ。じゃあ説明するよ。ボクはヴァランティーヌ流武術の門下生の一人で、とくにナルティーヌ、あなたが指導してくれている愛弟子の一人だ。ただ、残念ながら武術には向いていないから、ナルティーヌの個人マネージャーを主にしているよ』
『個人マネージャー……?』
そんなのいたっけ?
『そうだよ。あなたは師範代なんだし個人マネージャーがいたっておかしくないだろ?』
『え、ええ。そうですわね……。あなたは私の個人マネージャーですわ』
『そうさ。ボクはあなたのお気に入りなんだ。いろいろな薬効を付与できるおいしい薬草水を差し入れしたり、マッサージをして疲れをとってあげたり、組み手の相手をしたりしているよ』
『へぇ、マッサージをしてくれるなんてありがたいですわ! ……でも組み手? 私と組み手をするんですの?』
『そうだよ。ふふっ、組み手っていうのはボクらの間の隠語だろ? ベッドの上での組み手のことだよ。あなたの性欲はボクが解消してるのさ』
『ふぅん……? そんなことには興味ないのですが……。それでもしているのですか? なんだか不思議な感じですわね』
『細かいことは気にしないでおくれよ。あなただってゼナとフレデリクのイチャイチャを見て欲求が溜まることもあるだろ?』
『そういうのは走り込みをすれば解消できるものですわ』
『うーん。予想以上に真面目だな。まあいいや。とにかく、ボクとあなたは定期的に性行為をしているんだよ』
『そ、そうですの。なんだかよく分からないけど、ありがとうございます』
『お礼なんかいらないよ。むしろこっちがお礼を言いたいくらいさ。こんなに気持ちのいいことをさせてもらって、本当に助かっているよ』
『いえ、どういたしまして。私も、その、とても気持ちいいですわ……』
『そうだろう? ははは、あなたの個人マネージャーとして性欲の管理もボクの仕事ってことさ』
『え、ええ……』
個人マネージャーは普通そんなことしないけど……、まあ、細かいことはいいか。とにかく彼との行為は気持ちいいもので……気持ちいいのか? 未知数だ。
おかしい。性欲解消をしてもらっているのに肝心の経験の記憶が欠如している。
性欲解消なんてしたことがないような気がする。どういうことだ?
『ところでさ、ナル師範代にとってゼナってどんな存在なの?』
『ゼナ様は……、いろいろあったけど、ゼナ様は私の親友ですわ』
『ゼナの【眼】についてはなにか知ってる?』
『眼……? いったいなんの話ですの?』
『ゼナの素顔を見たことはあるんだよね?』
『ええ、それはもちろん』
『変な気分にならなかった?』
『とくには……。変な気分って?』
『性的な高まりだよ。ボクとしているときに感じるようなやつ』
『感じませんわ。ねえ、私、そもそもそういう感覚がどんなものだか分からないんですの。本当にあなたとしたことがあったかしら?』
『あなたは処女か。いい拾いものをしたな……。こんど思いっきりよがらせてあげるよ』
『はい、お願いしますわ』
『素直なのは好きだぜ、ナルティーヌ。まあそれはそれとして……』
トゥルッセは顎に手を当てて考え込む。
『ゼナの【眼】は同性には効かないのか。あくまでも繁殖目的ってことかな?』
『なんの話ですの?』
『ううん、なんでもないよ。じゃあ次はパスカル殿下についてだ。ナルティーヌの新しいお弟子さんのパスカル殿下。彼のことはどう思ってる?』
『放っておけない可愛い弟ですわ。本物のお兄さんがいるのにこんなこというのもなんですけど』
『だから弟子にしたの?』
『ええ。気になってしまって。それで私が鍛え直したくなったのですわ』
『それ、パスカル殿下のこと性の対象として捕らえてるってこと?』
『いいえ。全くその気がおきませんわね。私にはあなたという人もいるのですし』
『ああ、ボクのことは勘定に入れなくていいよ。ボクたちはあくまで身体だけの関係だからさ』
『私はあなたを好きではないのですか?』
『ああそうさ。ただ性欲を解消するだけの関係だよ』
『そう、ですのね……分かりましたわ』
『パスカル殿下の話に戻すよ。彼は第二王子だ。王族だよ。でもあなたを慕っている。イケメンじゃないからその気にならないのかな?』
『そんな。パスカル殿下は確かにフレデリク殿下に比べたら華麗さはないけど……、あの子はあの子でちゃんと可愛い顔をしてますわよ。でもだからといってそういう気持ちになるかというとならないだけです。あの子は弟子ですし、あなたみたいに性欲解消の相手でもありませんし』
『なるほどね、ありがとう。本当にあなたは糞真面目なんだな、ナルティーヌ。まあ、こんなところか……』
『ねえ、結局どういうことですの? ここはいったいなんなんですの?』
白くてもやもやしている空間……。ナルティーヌとトゥルッセの二人だけしかいない、この空間。いったいなんなのだろう。
『いいのさ、あなたはそんなこと気にしなくて。さぁナルティーヌ、愛弟子が呼んでるよ。そろそろ返事をしてあげようね』
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