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第3話 敏感な魔王様★

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 えっ、おでこにキス……?

 と思って顔をあげると、魔王様は優しく微笑んでいた。
 すでにその朱い瞳からは光が引いていた。
 どうやら本当に魅了は諦めたらしい。

 だけど、「次に進む」って……、どういうことだろう?

 不思議に思う私だったが、そんな私を魔王様は抱き寄せたのだった。
 そして、唇を重ねてくる。

「ん……っ」

 思わず、甘い吐息が出てしまう。

 柔らかい唇の感触が何度も何度も重ねられるうちに、私は頭がぼーっとしてきた。

 やがて、魔王様の舌が口内に侵入してくる。

「っ、ぁ」

 歯茎をなぞるように動く舌先。

 じゅる、と絡められる唾液。

「んぅっ……」

 甘い。頭がくらくらしてくる……。

 ひらがなしかしゃべれなくても、やっぱりヤルことはヤルのね、魔王様。

 そんなことを思いながら、私は魔王様の背中に手を回した。

 前世で最推しだった魔王様が目の前にいて、こんな情熱的なキスをしてきてくれるんだもの。洗脳だろうが魅了だろうがされるまえに――思いっきり堪能しなくちゃ。

 すると、魔王様の身体がビクッとなった。

(え?)

 不思議に思って視線を向けると、魔王様は口を離して真っ赤になって顔をそらした。

「……」

 あら?
 もしかして、魔王様ったら照れてる?

 そう思ったら、なんだか可愛らしく思えた。

「ら、らふぃすよ」

「はい」

「いま、おまえじぶんのいしでおれをだきしめたのか?」

「え、はい。その……気分盛り上がっちゃって。いけませんでしたでしょうか……」

 これで『おんなはしとやかにされるがままにしておれ』とか言われたら立ち直れないかも。

「い、いや。そうではなく……」

 魔王様は頬を赤らめて視線を惑わせている。

「こういうのははじめてで……、おれもどうたいおうしたらいいのか……わからない……」

「え? 魔王様って女性から抱きしめられたことないんですか?」

 こんなにイケメンなのに……!?

「ああ。こんなの、おまえがはじめてだ」

 うそみたい。なんか嬉しい。

 でもどうして……魔王様ってこんなにイケメンなのに。

「失礼ですが魔王様、今までに女性経験ってありますよね?」

「ああ、まあな」

 そりゃそうよね。これまでのこの世界の歴史のなかで、この魔王様は何度か聖女を寝取ってきているはずだから。

 こんなふうに、キスして、魅了して……。

 と、そこでひらめくものがあった。

「あ、そうか。いつも魔王様って魅了の力で聖女の女性たちをマグロにしてきたってことか……」

「まぐろ?」

「はい。ええっと、海の……まあいいや」

 いつも魔王様は魅了の力で女性から意思を消してたんだろう。

 だから女性は魔王様に抱かれるとき、いつも反応がなかったんだと思われる。歴代闇堕ち聖女は誰もがされるがままになってしまったのだ。そんな状態では魔王様のこと抱きしめるなんてこと、できるわけないよね……。

 てことは……うっそ。まさか本当に、私が魔王様の、ある意味ハジメテの女になれたってこと?

 でもそうと決まれば話は早いわ。

 最推しの魔王様が目の前にいて、しかもこんなエッチな機会に恵まれて。
 たぶんどうせ、私はゲームのシナリオどおりに『闇に堕ちた聖女・ラフィス』としてヒロインのピンク髪シエルさんに倒されるんだろうし……。

 ……今くらい、せいいっぱい楽しもっと!

「えへへ。じゃあ、魔王様。そんなに知識があるほうじゃないけど、誠心誠意、魔王様のこと気持ちよくしてさしあげますね」

 ぎゅうっ、と魔王様のことを抱きしめる私。

「あ……」

「うへへへへへ。魔王様の腰、ほそーい」

「うう……」

 恥ずかしがって俯く魔王様。そんな姿も可愛いくてキュンってなる。

「ねえ魔王様。魔王様って、普段どんなふうに女の人を抱くの?」

「……っ!」

 びくんっ、と震える魔王様。

「マグロ……じゃなくて反応のない女性相手に、なにしてたの? せっかくだからそれを魔王様にしてあげる」

「ま、まずはきすする……」

 そういえばさっきもキスしてきてたもんね。

「じゃあ、キスしますね」

 ちゅっ、と魔王様の唇に軽いキスをする。

「………………!!!」

「ん……ねえ、こう? それから? 舌を入れて、絡めるの……?」

「ぁ……」

「ふふ、可愛い」

 そのまま舌を絡める私。すると魔王様の身体がビクビクっと震えた。

「舌先をこうして絡めると、感じちゃう?」

「ぁ、ぅ……」

「ん……」

 ちゅむ、ちゅぱ、ちゅっ、と音を立てて、何度も何度もキスを重ねる。

「……っ、……っ」

 魔王様は私の背中に手を回したまま、ただただ固まっていた。

「……んっ、魔王様ってば、ほんとに動く女の子には慣れてないんだね」

「うぅ……」

 真っ赤になる魔王様。かわいい。
 私は再び魔王様の口内へと舌を差し入れた。

「んっ……」

 舌を絡め合う。
 魔王様の唾液が甘く感じる。

「っ、んっ……」

 ちゅ、ちゅ……じゅっ。

 ……ぷはっ。

 やがて、どちらからとも言わずにお互いの口を離した。二人の間を銀糸がつなぐ。そしてそれはプツンと切れて、私の胸に落ちた。

 魔王様の顔が赤い。まるで乙女のように。

「ベッドに行きましょう、魔王様」

「あ、ああ」

 顔を真っ赤にして頷く魔王様。

 ああ、もう……かわいいなあ。

 魔王シャノン。この人、こんな可愛い魔王様だったのね……。ゲームだけじゃ分からなかったなぁ。ひらがなだけしか喋れないのもなんか可愛く思えてきたし。
 しかも滅茶苦茶イケメンとか……。もう最高じゃない、この魔王様。





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