5 / 10
第5話 下着は愛
しおりを挟む
一見して分かる変態――ブラジャーとショーツを身につけたイケメン騎士グラーツ。
彼に助けてもらった引き替えに、メリアは下着のデータ取りに協力することになってしまった。
その下着フェチ変態の彼にときめくという予想外な自分に戸惑いながら、それでも強くなりたいメリアは、そっと騎士服のボタンに手を掛け――
――しかし、そこで手が止まる。
(これは強くなるためよ。そのためにこの変態に私の身体のことを知ってもらうのは必要なことなの)
自分に言い聞かせるも、心臓はドキドキしっぱなし。
というか、自分でいっておいてなんだが『身体のことを知ってもらう』という言葉のきわどさに気づいてしまったのだ。
(え、どこまでするっていうの、これ?)
公爵令嬢にして騎士団長のメリア、当年とって26歳。けっこうなナイスバディを誇っているが、実は男性経験などない。そんな暇があれば剣技研鑽にあててきたからだ。
「団長、脱げましたか?」
と背後からグラーツの声がする。
グラーツには背を向けておいてもらっていた……脱ぐところを見られるのが恥ずかしいからだ。
「ねえ、これって本当に必要なことなのよね……?」
メリアは振り返らずに訊ねてみた。
「ええ、もちろんですとも」
「サイズを口頭で伝えるだけじゃだめなの?」
「それでは結局今までと同じです。僕の下着作りに協力してもらうためには、まずは僕の手に団長のデータを集めなければなければなりませんからね」
一応筋は通っている……のか?
「団長の柔らかさとか、体温とか、汗とか、匂いとか。そういうの全部がどんな状態で僕の愛に包まれているのか。それを確かめたいんです」
それってもう完全に告白になってない!? と叫びそうになったが、我慢して……。
「……分かったわ」
助けてもらった恩もある。
メリアは覚悟を決めて騎士服のボタンをはずしていった。
「あ、上下ちゃんと見せて下さいね。僕が作るのはセットアップですから」
「う……、分かったわよ」
メリアは羞恥に耐えて、騎士服を脱ぎ捨てていった。そして……。
(うぅ……)
メリアは真っ赤になりながら、下着姿で振り向く。
「いいわよ、こっち向いても」
「ありがとうございます!」
嬉々として振り向くグラーツ。
「おお……」
そのグラーツの口から感嘆のため息が漏れた。
「美しい……」
「……え?」
「ああ、団長! なんて素晴らしいおっぱいなんでしょう……さすがは騎士団長。まさに至高の巨乳です!! その胸を包み込んでいるのが僕の愛――すなわち僕の作ったブラジャーというのがまたたまらない!!」
「ちょ、言い過ぎだってば」
「そんなことはありません。僕にとってあなた以上の女性は存在しないのです……!」
どさくさに紛れてまた告白をされたような気がする……。
それでもメリアの胸は高鳴ってしまうのだ。
相手は自作のブラジャー・ショーツのセットアップを着用した変態イケメンなのに……。
「……ていうかさ、なんであんたそんな格好してんの? いくら女性用下着が好きだからって、普通は服くらい着ない?」
「ああ、これですか。これは男性用女性用下着の着心地チェックですよ」
「せめて服は着たら」
「服を着たデータはもう取りました。あとは服を着ていないときのデータが欲しかったんです。誰にも見つからない自信があったからこうして下着一丁で団長の部屋に忍んできたというわけですよ、これのほうがドキドキして神経が研ぎ澄まされますしね」
「変態め……。ところでどうやってこの施錠した部屋に入ってきてたわけ?」
「ピッキングですよ。僕は手先が器用なので」
「……やっぱりね」
メリアは頷いた。思った通りである。そりゃあこれだけ素晴らしい下着を自分で縫ってしまうような人物が手先が不器用なわけがない。
こいつのこと子飼いにして囲い込もう、とメリアはその瞬間に決意した。常識外れなほど手先が器用な部下というのは本当に使い勝手がいいものだから。
「……もう一つ聞いておきたいことがあるわ。なんでその変態みたいな格好で私の寝室に潜んでいたのよ。とっとと逃げれば良かったのにさ」
「罠が張ってあるのに気づいたからですよ。これは使える……と直感したんです。メリア団長に引っかからせて、助ける代わりに取り引きをして、それで僕の愛の下着を神のセットアップの頂へ導こうと……」
「……下着への熱意凄いな」
「まさか本当に引っかかるとは思いませんでしたがね……」
「リリアーヌに詳細聞くの忘れててね……」
「リリアーヌといえばあの、トラップの天才の。ああ……彼女もけっこういいスタイルですよね。彼女にもあとで僕の下着を届けておこうかな……」
こ、こいつ。下着は愛だの団長のデータを取りたいだの愛に包まれてだのとさんざん言っておきながら、まさかそれで作った下着をメリア以外の女にまで届ける気なのか?
「……ダメ。禁止します。あなたの下着は私だけでいいのよっ。ていうかあなたは私の専属下着職人になるんでしょうが!」
「おやおや、妬いて下さってるのですね」
「ち、違うってば! 下着で強くなるのは私だけでいいってこと!」
「ふふ、可愛い人だなぁ」
「~~ッ」
からかわれて顔が熱くなる。メリアは悔しくてそっぽを向いた。
彼に助けてもらった引き替えに、メリアは下着のデータ取りに協力することになってしまった。
その下着フェチ変態の彼にときめくという予想外な自分に戸惑いながら、それでも強くなりたいメリアは、そっと騎士服のボタンに手を掛け――
――しかし、そこで手が止まる。
(これは強くなるためよ。そのためにこの変態に私の身体のことを知ってもらうのは必要なことなの)
自分に言い聞かせるも、心臓はドキドキしっぱなし。
というか、自分でいっておいてなんだが『身体のことを知ってもらう』という言葉のきわどさに気づいてしまったのだ。
(え、どこまでするっていうの、これ?)
公爵令嬢にして騎士団長のメリア、当年とって26歳。けっこうなナイスバディを誇っているが、実は男性経験などない。そんな暇があれば剣技研鑽にあててきたからだ。
「団長、脱げましたか?」
と背後からグラーツの声がする。
グラーツには背を向けておいてもらっていた……脱ぐところを見られるのが恥ずかしいからだ。
「ねえ、これって本当に必要なことなのよね……?」
メリアは振り返らずに訊ねてみた。
「ええ、もちろんですとも」
「サイズを口頭で伝えるだけじゃだめなの?」
「それでは結局今までと同じです。僕の下着作りに協力してもらうためには、まずは僕の手に団長のデータを集めなければなければなりませんからね」
一応筋は通っている……のか?
「団長の柔らかさとか、体温とか、汗とか、匂いとか。そういうの全部がどんな状態で僕の愛に包まれているのか。それを確かめたいんです」
それってもう完全に告白になってない!? と叫びそうになったが、我慢して……。
「……分かったわ」
助けてもらった恩もある。
メリアは覚悟を決めて騎士服のボタンをはずしていった。
「あ、上下ちゃんと見せて下さいね。僕が作るのはセットアップですから」
「う……、分かったわよ」
メリアは羞恥に耐えて、騎士服を脱ぎ捨てていった。そして……。
(うぅ……)
メリアは真っ赤になりながら、下着姿で振り向く。
「いいわよ、こっち向いても」
「ありがとうございます!」
嬉々として振り向くグラーツ。
「おお……」
そのグラーツの口から感嘆のため息が漏れた。
「美しい……」
「……え?」
「ああ、団長! なんて素晴らしいおっぱいなんでしょう……さすがは騎士団長。まさに至高の巨乳です!! その胸を包み込んでいるのが僕の愛――すなわち僕の作ったブラジャーというのがまたたまらない!!」
「ちょ、言い過ぎだってば」
「そんなことはありません。僕にとってあなた以上の女性は存在しないのです……!」
どさくさに紛れてまた告白をされたような気がする……。
それでもメリアの胸は高鳴ってしまうのだ。
相手は自作のブラジャー・ショーツのセットアップを着用した変態イケメンなのに……。
「……ていうかさ、なんであんたそんな格好してんの? いくら女性用下着が好きだからって、普通は服くらい着ない?」
「ああ、これですか。これは男性用女性用下着の着心地チェックですよ」
「せめて服は着たら」
「服を着たデータはもう取りました。あとは服を着ていないときのデータが欲しかったんです。誰にも見つからない自信があったからこうして下着一丁で団長の部屋に忍んできたというわけですよ、これのほうがドキドキして神経が研ぎ澄まされますしね」
「変態め……。ところでどうやってこの施錠した部屋に入ってきてたわけ?」
「ピッキングですよ。僕は手先が器用なので」
「……やっぱりね」
メリアは頷いた。思った通りである。そりゃあこれだけ素晴らしい下着を自分で縫ってしまうような人物が手先が不器用なわけがない。
こいつのこと子飼いにして囲い込もう、とメリアはその瞬間に決意した。常識外れなほど手先が器用な部下というのは本当に使い勝手がいいものだから。
「……もう一つ聞いておきたいことがあるわ。なんでその変態みたいな格好で私の寝室に潜んでいたのよ。とっとと逃げれば良かったのにさ」
「罠が張ってあるのに気づいたからですよ。これは使える……と直感したんです。メリア団長に引っかからせて、助ける代わりに取り引きをして、それで僕の愛の下着を神のセットアップの頂へ導こうと……」
「……下着への熱意凄いな」
「まさか本当に引っかかるとは思いませんでしたがね……」
「リリアーヌに詳細聞くの忘れててね……」
「リリアーヌといえばあの、トラップの天才の。ああ……彼女もけっこういいスタイルですよね。彼女にもあとで僕の下着を届けておこうかな……」
こ、こいつ。下着は愛だの団長のデータを取りたいだの愛に包まれてだのとさんざん言っておきながら、まさかそれで作った下着をメリア以外の女にまで届ける気なのか?
「……ダメ。禁止します。あなたの下着は私だけでいいのよっ。ていうかあなたは私の専属下着職人になるんでしょうが!」
「おやおや、妬いて下さってるのですね」
「ち、違うってば! 下着で強くなるのは私だけでいいってこと!」
「ふふ、可愛い人だなぁ」
「~~ッ」
からかわれて顔が熱くなる。メリアは悔しくてそっぽを向いた。
0
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
貧乳の魔法が切れて元の巨乳に戻ったら、男性好きと噂の上司に美味しく食べられて好きな人がいるのに種付けされてしまった。
シェルビビ
恋愛
胸が大きければ大きいほど美人という定義の国に異世界転移した結。自分の胸が大きいことがコンプレックスで、貧乳になりたいと思っていたのでお金と引き換えに小さな胸を手に入れた。
小さな胸でも優しく接してくれる騎士ギルフォードに恋心を抱いていたが、片思いのまま3年が経とうとしていた。ギルフォードの前に好きだった人は彼の上司エーベルハルトだったが、ギルフォードが好きと噂を聞いて諦めてしまった。
このまま一生独身だと老後の事を考えていたところ、おっぱいが戻ってきてしまった。元の状態で戻ってくることが条件のおっぱいだが、訳が分からず蹲っていると助けてくれたのはエーベルハルトだった。
ずっと片思いしていたと告白をされ、告白を受け入れたユイ。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。
シェルビビ
恋愛
膨大な魔力の引き換えに、自慰をしてはいけない制約がある宮廷魔術師。他人の手で射精をして貰わないといけないが、彼らの精液を受け入れられる人間は限られていた。
平民であるユニスは、偶然の出来事で射精師として才能が目覚めてしまう。ある日、襲われそうになった同僚を助けるために、制限魔法を解除して右手を酷使した結果、気絶してしまい前世を思い出してしまう。ユニスが触れた性器は、尋常じゃない快楽とおびただしい量の射精をする事が出来る。
前世の記憶を思い出した事で、冷静さを取り戻し、射精させる事が出来なくなった。徐々に射精に対する情熱を失っていくユニス。
突然仕事を辞める事を責める魔術師団長のイースは、普通の恋愛をしたいと話すユニスを説得するために行動をする。
「ユニス、本気で射精師辞めるのか? 心の髄まで射精が好きだっただろう。俺を射精させるまで辞めさせない」
射精させる情熱を思い出し愛を知った時、ユニスが選ぶ運命は――。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった
ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。
あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。
細かいことは気にしないでください!
他サイトにも掲載しています。
注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。
【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました
春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。
大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。
――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!?
「その男のどこがいいんですか」
「どこって……おちんちん、かしら」
(だって貴方のモノだもの)
そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!?
拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。
※他サイト様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる