お世話したいαしか勝たん!

沙耶

文字の大きさ
上 下
8 / 9

最終話

しおりを挟む



ヒート4日目くらいから記憶がある。
だんだん、むらむらするときと、しないときとがはっきりしてきて、ご飯もしっかり食べられるようになってきた。


「やっぱり、少し痩せちゃったね、斗真。できる限り食べさせてはいたんだけど…」

僕は今、ベッドの上でご飯を食べさせてもらっている。

ヒート期間中は筋力が落ちたり、手先が上手く使えない関係で食器が使いにくいのと、普通に腰が立たない。


「ごめんね、結構激しく抱いちゃった…。」

謝っているのに嬉しそうな優翔さんが嬉々と僕の世話を焼く。
…優翔さんはΩに尽くしたいタイプのαだそうだ。それはもう幸せそうな顔で僕にあーんしてくれるし、お風呂にも入れてくれるので、一人でやりますとはとてもじゃないけど言えなかった。

あとはまあ…今僕もできないし?優翔さん優しくしてくれて、凄く嬉しいし?
素直に甘えてしまっているというのも現状だ。

「はいあーん。」 


優翔さんは、僕のヒートのために相当な量の料理を作り置き、レトルト食品もずいぶんと買い込んでくれたらしい。僕の目の前には彩り鮮やか、美味しそうなおかずがたくさん並ぶ。

そのためにこのヒート期間一度も買い物をすることなく、こうしてゆっくりと二人の時間を送れていた。




「ねえ、斗真…」

「なに…?」

少し堅い様子の優翔さんに、顔を向ける。
…何て言おうとしているのか、何となくわかる気がする。
これはあくまでも希望的予測で、僕の直感だけど、期待してみたい気がする。



「斗真……………好きです。俺の番になってもらえませんか?」

「斗真のこと、ずっと大好きでした。愛してます、斗真の項を、永遠に俺にください。」

ベットの上でガバっと土下座した優翔さんに驚きながらも、嬉しさが込み上げてくる。

優翔さんが、僕のことを好きだって!
番にしたいって言ってくれた!

……たぶん、夢ではないと思う。

このヒート中、優翔さんは、何度も僕に大好きだって、愛してるって伝えてくれた。
決してヒート中だけの思いではないこと。一緒に働いて、普段の僕の姿を見て、好きになってくれたこと。
…気づかざるを得ない。

このαの番になりたい。

それはΩとしての本能で、既に抑えきれなくなって溢れ出てしまうくらいの僕の強い思いだった。

「僕も、優翔さんが大好きです。」
「…!」

「僕を番にしてください。」

土下座からぱっと身を起こした優翔さん。
驚きすぎたのか、元々大きな目が、もっと大きくなる。
その目はキラキラと輝いて、嬉しさが全身から溢れ出して来そうな雰囲気を醸し出す。

「斗真っ!大好きーーーー!」


ギュッと抱きつかれて、すぐに保護テープを捲られる。

「え?優翔。さん?」

え、今?!

今?!



優翔さんの吐息がかかる。
一回、ぺろり。

ぞわぞわっとして体が動いてしまう僕を、しっかりと押えて、優翔さんが口に出す。

「噛むね?」

「うん…、大好きだから、噛んで」


がぶっ、

「ひゃっあーーー!!」

くたくたくた~と力が抜けた僕を支えながら、優翔さんがへへっと笑った。


「ずっと一緒にいようね!斗真!…愛してる。」

番にしてもらえた幸福感と興奮と、快感で頭がいっぱい。
噛んでもらった衝撃で気絶するまでの間、僕はやっぱり、優翔さんのことを大好きだなーと、幸せな気持ちでいっぱいだったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これがおれの運命なら

やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。 ※オメガバース。Ωに厳しめの世界。 ※性的表現あり。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

恋のキューピットは歪な愛に招かれる

春於
BL
〈あらすじ〉 ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。 それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。 そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。 〈キャラクター設定〉 美坂(松雪) 秀斗 ・ベータ ・30歳 ・会社員(総合商社勤務) ・物静かで穏やか ・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる ・自分に自信がなく、消極的 ・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子 ・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている 養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった ・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能 二見 蒼 ・アルファ ・30歳 ・御曹司(二見不動産) ・明るくて面倒見が良い ・一途 ・独占欲が強い ・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく ・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる ・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している ・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った 二見(筒井) 日向 ・オメガ ・28歳 ・フリーランスのSE(今は育児休業中) ・人懐っこくて甘え上手 ・猪突猛進なところがある ・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい ・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた ・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている ・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している ・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた ※他サイトにも掲載しています  ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です

君はぼくの婚約者

まめだだ
BL
中学生のとき引き合わされた相手と婚約した智史。 元々オメガと判る前は異性愛者だった智史は、婚約者である直孝が女の子といるところを見てショックを受ける。 ―――そして気付いた。 直孝だって突然男の婚約者をあてがわれたわけで。なのに自分は、当たり前のように相手からは愛されるものと思っていたのか。

どこかがふつうと違うベータだった僕の話

mie
BL
ふつうのベータと思ってのは自分だけで、そうではなかったらしい。ベータだけど、溺愛される話 作品自体は完結しています。 番外編を思い付いたら書くスタイルなので、不定期更新になります。 ここから先に妊娠表現が出てくるので、タグ付けを追加しました。苦手な方はご注意下さい。 初のBLでオメガバースを書きます。温かい目で読んで下さい

愛孫と婚約破棄して性奴隷にするだと?!

克全
BL
婚約者だった王女に愛孫がオメガ性奴隷とされると言われた公爵が、王国をぶっ壊して愛孫を救う物語

番に囲われ逃げられない

ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。 結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。

零れおちる滴

佐倉真稀
BL
俺はβの同性愛者。3つの性が存在するこの世界でも俺はマイノリティだ。そんな俺の前にαが現れた。βに惚れるαなんかいるわけがない。どうせすぐに別れるだろうと思って付き合い始めたが… ※※オメガバース設定プラス独自設定のため、男性の妊娠出産に関する表現が出てきます。また、一部女性との絡みもあります。苦手な方ご注意ください。R18が予告なく入ります。お気をつけ下さい。 ※他サイトにも掲載

処理中です...