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懺悔

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 王都にある王立学園の卒業記念パーティでのこと、本来は婚約者であるヴィンセント王太子殿下にエスコートされるはずのロザリーヌは、一人さみしく会場入りをするが。王太子ヴィンセント殿下はすでに来ていてロザリーヌの双子の妹リリアーヌを腕にぶら下げている。

 「公爵令嬢ロザリーヌ、貴様とは婚約を破棄し、貴様の妹リリアーヌと婚約するものとする。」

 「なぜでございますか?とは、お聞きしません。妹のリリアーヌのほうがよろしいのですね。それで、わたくしではなく妹と結婚したいと仰せなのですね。それでは、どうぞご勝手になされませ。そのかわり、妹は妃教育を受けておりませんから、ご結婚は、13年後となりますわよ。では、ごめんくださいませ。」

 「な、な、なんだとぉ!確かに妹のリリアーヌのほうが可愛いから、お前のように陰キャではないから……。しかし、13年後などとは聞いてはおらぬ。」

 「ご自由にされたらいかがですか?ご結婚自体は、13年後でもいろいろなさりましょう?ただし、妃教育は絶対です。陰キャは妃教育の賜物ですわよ。もう、わたくしは終了しておりますれば、どこへなりとも自由に参れます。それでは、本当に御機嫌よう。」

 美しいカーテシーをして去っていくロザリーヌを見送るリリアーヌ。さっきまでの勝ち誇った微笑みはどこへやら、13年間の妃教育と聞いて真っ青になっている。

 卒業パーティには、父王である国王陛下も臨席されている。

 「ち、父上!今の話は誠でございますか?13年後でなければリリアーヌを妻にはできないのでしょうか?」

 「愚か者メ!事実である。リリアーヌとやら、そのほうこんなパーティなどに出席している時間ではない。とっとと妃教育にかかれ!さもなければ、31歳になっても結婚できないぞ!」

 国王陛下の一言でリリアーヌは無理やり連れていかれる。

 「さて、ヴィンセントよ、そのほう何故、王家が決めた婚約を勝手に破棄した?それに妃教育が済んでいない娘を婚約者にするなど、公の席で公の立場というものをまったく理解しておらん。好き嫌いで政はできないものだ。よって、ヴィンセントは、廃嫡しリリアーヌが13年間の妃教育が全うできない場合は、国外追放するものとする。わかるか?リリアーヌが1日でも、1時間でも妃教育をサボるようなことがあれば、国外追放すると言っておるのだ。ロザリーヌには、第2王子のマクシミリアンと結婚させる。マクシミリアンを王太子の座に据えて、ロザリーヌと結婚させるが、もしリリアーヌが13年間の妃教育をまっとうし、ヴィンセントと結婚できるような時期に相成った場合は、再びヴィンセントを王太子にさせるものとする。ただし、ロザリーヌが拒否した場合、王太子にはなれないものとする。」

 国王陛下がヴィンセント殿下を廃嫡すると仰せになってすぐ、護衛の騎士がヴィンセント殿下の王太子の象徴を取り上げ、ただの王子となってしまう。

 その頃、ロザリーヌは、さっさと公爵邸に戻り家出の準備を始める。誰のせいで陰キャになったと思うの!あの血反吐を吐くような妃教育のせいである。王太子妃は、将来の王妃は決して人前で表情がわかるようになってはいけない、とムチで叩かれながら体に刻み込ませたものである。 

 リリアーヌが卒業パーティから戻ってくる前に家出をするつもりでいる。あまりにも惨めであるから、5歳の頃より、ロザリーヌはヴィンセントの婚約者として妃教育を強要させられ、おしゃれも遊びもロクにできなかった生活を余儀なくされるが、リリアーヌは、好き放題でき、欲しいものは何でも与えられる何をしても怒られない自由な生活をしてきたら、当然、周りから明るい性格だと言われるようになる。

 今になって、陰キャは嫌だと言われてもロザリーヌには今さらどうにもならないことで言われたとしか思えないのであるから、あのパーティ上であえて妃教育のことに言及した。そうすれば、否が応でも国家の体面上、リリアーヌが妃教育を受けさせられるであろう。とそれを狙ってのこと。

 リリアーヌ帰宅まで、あと2時間。時間はない。立派なドレスを脱ぎ、スーツケースに詰め簡素なワンピースに着替える。ワンピースではスカートだからズボン形式のほうがいいと、はしたないが乗馬用のズボンを引っ張り出し、見事なブロンドヘアを帽子の中に押し込め男装して家出することにした。最初、馬車でと思っていたが、愛馬で行くことにする。そのほうが道なき道を走れる。

 帰ってきてから2時間が経つ、まだリリアーヌは帰宅していないみたい。厩舎に行き、愛馬に跨り国境を目指すことにする。

 途中、暗い森を抜け走り続ける。リリアーヌは馬には乗れない。妃教育をしていないからである。戦争になった時、王子を連れ逃がすため妃教育では、乗馬の練習もある。障害物も難なく飛び越えられる。国体に出れば1位間違いなしという腕前である。

 朝陽があたりを照らすころ、隣国ブルータスへたどり着いた。今頃、公爵邸では大騒ぎになっているのであろうか?それともリリアーヌが王太子妃となるため、大急ぎで準備に取り掛かっていて、ロザリーヌのことなど、忘れ去られているのかもしれない。

 そうだとしたら、はなからロザリーヌなど、いてもいなくても良い娘だったのであろう。

 悲しすぎるから、家出を決行したのである。
 隣国ブルータスにつき、家出した親不孝を懺悔するため、教会に寄った。神様にだけは、嘘を吐きたくない。という本心からである。

 懺悔する前に何となく置かれてあった水晶玉に手をかざすと……聖女様として覚醒してしまいました。「え?」水晶玉がキラキラ光り出して、隣国ブルータスで朝陽よりも強烈な光が放たれた。隣国ブルータスで150年ぶりの聖女様が誕生された瞬間である。

 隣国ブルータスから、ロザリーヌ聖女の話を聞いて、ヴィンセントは、ガックリうなだれてしまい、今さら婚約破棄の破棄もできず、国外追放となってしまいました。そう、リリアーヌは3時間で、妃教育を放棄してしまい、逃げ出し公爵邸にも戻りません。朝になり、公爵邸では、2人の令嬢がいなくなっていて、大騒ぎしていたところに、ロザリーヌ聖女誕生のニュースが飛び込み、複雑な表情を浮かべることになったのです。
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