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孤児キャロライン

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 ある夜の王宮でのパーティでのこと。
 聖女キャロラインは、婚約者であるジークフリク王太子にエスコートされず、壁の花となっていた。

 キャロラインは、孤児だったのを教会の司祭に拾われ育てられた。15歳の時、聖女認定儀式の際、数多の聖女候補の中からキャロラインだけが、聖女に選ばれた。
 以来、王太子の婚約者となり、王宮に住み、王国の結界を維持し続けている。
 王国の結界を維持するには、聖女の膨大な魔力が必要で王太子と結婚し、国母とならなければならないからだ。

周りの貴族が次々頭を下げていたので、気が付いたらジークフリク王太子殿下が、目の前にいらっしゃった。

 「聖女キャロライン、結界を維持すると言いながらお前は、何もしていないではないか。お前との婚約を破棄させてもらおう。お前のような、どこの馬の骨とも知れぬ女を聖女とは、片腹痛いわ。即刻、この王宮から出ていけ!」

 「わかりました。」そう言って、キャロラインは、荷物をまとめて王宮を出た。

 「まったく、あの税金泥棒が!最近、教会の奴らが力を持ちすぎて、王国の政治に口出しするから、目障りだったのだ。キャロラインがいなくとも、結界は維持できる。新しい聖女を雇えばいい。」とほくそ笑んでいた。

 王宮を出たキャロラインは、行く当てがないにもかかわらず、心は晴れ晴れしていた。

 「だって、あの嫌いな王太子との結婚がなくなったんだもん♪大っ嫌い。偉そうに、いつも上から目線で。」

 「とりあえず、国境を目指すとしますか、あ!その前に、育ててくれた司祭様に、ご挨拶しなければ。」

 教会に向かって、歩き出した。

 教会の前では、司祭様が待っていてくださった。
 「王太子殿下とのことを聞いたよ。嘆かわしいことだが、私には、どうしてやることもできない、すまないキャロライン。」
 司祭様は、あるだけの金貨を袋に入れて渡してくれた。

 「これだけあれば、隣国まで、馬車で行けるだろう。気を付けて行っておいで。」

 「ありがとうございます。司祭様。結界のこと、宜しくお願いします。」

 「いや。この国は、もう終わりだ。キャロライン以外の誰が結界を維持できるというのだ。王太子殿下は、誰か他の聖女を雇う、と申されているが、雇われるような聖女に、この国の結界維持は、神がお許しにならないだろう。キャロラインは、神から選ばれし聖女だ。すべては、神の御心のままに。」

 「司祭様も、お元気で。さようなら。」

 こうして、キャロラインは、隣国行きの馬車に乗った。

 国境を越えました。ということで、無事(?)結界が消滅しました。
 馬車の中から、結界が消えていくのが、うっすら見える。

 「あのバカ男、私が何もしていない税金泥棒なんて、言っていたけどけっこうたいへんだったのよぉ。どうせ言っても信じてくれないだろうけど。」

 その頃、王宮では、国王陛下が、ご立腹されている
 「なに!ジークフリクが聖女様を追い出したとは、まことか?」
 「なんのために、教会に手を回し聖女様と婚約させたとおもっていたんだ。」

 国王陛下が、
 「結界維持は、神から選ばれたキャロライン様でないとできない。ジークフリクは流れ者の聖女を雇うと言っているが、そんな聖女では、結界維持ができない。聖女キャロライン様がいらっしゃらなければ、この国は亡ぶ。王太子を廃嫡せざるを得なくなるだろう。」

 聖女が国境を越えたことがわかり、隣国が警備隊を差し向けてきた。片っ端から乗合馬車を検分し、キャロラインを見つけた。

 キャロラインは、立派なお部屋へ連れてこられて珍しい料理やら飲み物でもてなされた。

 しばらく待つと、この国の皇帝陛下が来られ、

 「ぜひ、我が帝国への滞在と、我が息子との婚約をお願いしたい。」

 そこへ皇子殿下登場、年のころは17、8歳なかなかのイケメンだ。

 「聖女キャロライン様、ぜひ、私と婚約、いえ、すぐにでもあなたを妃に迎えたい。できれば考えていただけないでしょうか?」

 キャロラインは、あまりの展開に頬を染める。皇子殿下も真っ赤。

 二人はモジモジしていたら、その様子を見た陛下が

 「聖女キャロライン様、もしお嫌でなければ、明日仮の結婚式をしよう。」

 仮と言う名前の、本物の結婚式だった。
 その夜、ほとんど初対面のぎこちない初夜を迎えた。

 あの王国は、キャロライン出国後、即、滅亡した。
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