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公爵令嬢マーガレット

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 今日は、学園の卒業パーティでのこと。

 「公爵令嬢マーガレット、貴様との婚約は、本日をもって破棄し、
  ここにいる男爵令嬢アンと婚約するものとする。
貴様は、この愛するアンを虐めた罪で国外追放とする。」と高らかに宣言された。

 元婚約者で、この国の王位継承権者第1位のチャールズ王子が庇護欲をそそるピンク頭のご令嬢の肩を抱き寄せながら、勝ち誇った微笑みを浮かべている。

 「そうですか。わたくしは、ここのところ公務が忙しくて学園に来ておらず、虐めなどしておりません。それでも第1王子のチャールズ殿下が、そうおっしゃるなら甘んじて国外追放を受け入れます。」

 マーガレットは踵を返し、卒業パーティの会場を後にした。

 マーガレットは、この国に一人しかいない聖女であった。
 この国は、マーガレットが張った結界によって守られていたのだ。

 マーガレットは、すぐさま帰宅し、屋敷の者に学園の卒業パーティでバカ王子から、婚約破棄されて国外追放になったことを告げると。

 「なんと!バカ王子が!」と屋敷内の者は一様に怒った。

 「わたくしがこの国を出た瞬間、結界が消えてしまいます。早く、国を出る用意をしてくださいませ。」

 屋敷の者たちは、慌てて引っ越し準備を始めた。

 「もう、この国は終わりだ。」

 屋敷の者ともども、国を出ることになり、大急ぎで準備を始めた。

 領地にも、急いで知らせが行き、マーガレットが国から出るという噂が王都を駆け巡った。
 卒業パーティに出ていた王都にいる他の貴族にも動揺が走り、皆、一様に引っ越し準備を進めた。

 王都に住む平民も、貴族街が大慌てで引っ越し準備を始めると、自分たちもただならぬことが起こると思い、平民たちも引っ越し準備を始めた。

 その日の夜、第1陣が王都を出た。
 続いて、第2陣、第3陣と慌ただしく、王都から脱出する様は、何かに追い立てられるようであった。民族大移動の様だった。

 マーガレットも、ようやく準備が整い、第4陣で王都を脱出することができたが、国境まではまだしばらくある。途中、領民を拾い、国境を目指す。

 貴族街の異変は、王城にもたらされた。

 「学園パーティでチャールズが男爵令嬢ごときにそそのかされ、マーガレット聖女様に婚約破棄を突きつけ、国外追放をしただと?愚か者メ!チャールズをここへ。」

 チャールズ王子が慌てて王の間へ入った時、王にいきなり殴られた。

 「バカ者!この国は終わる。」
 「マーガレット嬢が聖女様だと知らずにいたのか?なんのために渋る公爵と嫌がるマーガレット嬢をチャールズの婚約者にしたのか、理解しておらぬのか?」

 「マーガレット聖女様がいらっしゃったから、この国は安泰でいられたのだ。それを男爵令嬢ごときのバカ女にそそのかされ、聖女様がそんな女を虐めるわけないだろ!」

 「しかし、我が愛するアン嬢がマーガレットにいじめられたと申しましたゆえに。」

 「バカ者!たわけ者! 男爵令嬢アンを牢に入れろ!追って沙汰をする。」

 「マーガレット聖女様を引き留めろ!なんとしてでも王都にお戻りいただくのだ。」

 その時、一人の衛兵が走って入ってきた。

 「申し上げます、陛下。王都の領民、貴族が続々と街を捨てて、国境に向かっております。」

 「チャールズ!お前がよりにもよって卒業パーティなんぞで、不用意な発言をするから領民がこの国を捨てるのだ。」

 「チャールズを廃嫡とする。男爵令嬢アンは処刑する。」

 「そんな……。アンの処刑だけは思いとどまってください。アンは本当に可愛い女なのです。」

 「わかった。そなたら二人を結界の人柱とする。さらばだ、チャールズ。」


 マーガレットと他の貴族、領民のすべてが国境を超えた。その瞬間、結界が音を立てて消えた。

 「急ぎましょう。新たな新天地で、また結界を張らねばなりませんから。」

 国境を越えてすぐの森に結界を張った。とりあえず、今日はここで野宿だ。
 朝になってすぐ、隣国の警備隊が森に来た。

 隣国の皇太子も共にきて、ロザリーに婚約を申し入れた。

 「聖女ロザリー様、どうか我が国の聖女になっていただけませんでしょうか?つきましては、私の妻になっていただきたいのです。」

 「はい。喜んでお受けいたします。」
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