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16.余命
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ジャクリーヌが眠っている間、リゾートで立ち寄った国、とろピカルランドをはじめとする語っとスプリング国などから、お見舞いの品が殺到していた。火山があった国バイオレンス国からも、お礼とお見舞いの品物が届けられ、周辺の住民やハゲタカをはじめとする野生動物からも、公爵家の庭によく飛来してくるようになった。
もう明日死ぬと言われても、悔いはない。いや、ひょっとすれば、今日にでも死の宣告を受けるかもしれないそれでも気分は孔子の心境で。クリニックに出向く。
朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり
待合室に入り、順番を待つ。名前を呼ばれ、診察室の中に入ると、医師は、
「顔色がよくなりましたね。マナを使い果たせてよかったです。おかげで、余命宣告をしなくて済みました。」
「は?え……と?」
「2か月前は、マナが内臓を圧迫していて、余命宣告をさせていただきましたが、今はマナの通りもよくなり、何の心配もいらなくなりました。」
「母と同じ病気だったのでは?」
「ええ。ですから感知されましたよ。もう、大丈夫です。」
「うそ……。」
今まで、余命2か月だと思っていたから、めちゃくちゃやってきたというのに、病気が治ったですって!? どうしてくれるのよ!
それよりこれから、どうやって生きていけばいいのかさえも分からなくなってくる。
余命2か月だと思えばこそ、海の魔物とも対峙した。火山の噴火も死に物狂いで止めた、魔道具もたくさん開発した。
明日から、どうやって生きていければいいって言うのよ?
ふらふらと重い足取りを引きずって、公爵邸に戻ると、国王陛下からお見舞いの品物が届いていた。
箱の中を開けるとウエディングドレス。え?まさか、あの年寄りと結婚?冗談じゃないわよ。いくら命拾いしたからと言って、父と同い年ぐらいの年配のオジサンとだなんて、いやだわ。
なんだか、疲れたので、お行儀が悪いけれど、そのままベッドへダイブして、しばらくお昼寝をしよう。
目が覚めたら、すべて夢の中で、まだ温泉場にいたりして?その期待もあり、目覚めたが、やっぱり見慣れた公爵邸の自室にいた。
リビングには、陛下から贈られてきたウエディングドレスが箱に入ったままの状態で置かれている。
ショック!やっぱり、夢ではなかった。
ガッカリしながら、立って、ふと窓を開ける。目の前の木に見覚えがあるハゲタカが一羽止まる。
ん?これは……?あの日、出会ったハゲタカさんかしら?
「どうした?聖女様、浮かない顔をして。」
「やーね。聖女様じゃないわよ。余命2か月だと言われて、買い物したり旅行したりして、帰ってきたら、あれはウソでしたって言われて、落ち込んでいるのよ。」
「オタっちの仲間内では、聖女様さ。余命宣告が消えて良かったじゃねーか?」
「だって……、これからどう生きたらいいのかわからなくなって。」
「そんなの朝起きて、顔洗って、飯食って、……やること決まってんだろ?」
「そうね。当たり前の生活を送ればいいわね。」
ため息を穿きながら、執務室の机に向かうと、もうこれでもか!というほどの贈り物とお手紙、それに外遊していた間のお仕事が山のように積まれている。
また、はぁーっとため息を吐きながら、仕事に向き合う。
やってもやっても終わらない仕事に、こういう時マッサージチェアがあれば、ちょっと一息つけるのになぁ。と思い至る。そういえば、あの温泉宿で魔道具を作り、大盛況だったことを思い出す。
楽しかったなぁ。余命いくばくかの不安があったからこそ、夢中になって魔道具を作ったんだっけ。でも、これから病気の心配がなくなって健康だと言われても、何を生きがいにすればいいのかわからなくなっている。
またマッサージチェアを作ろうかしら?公爵邸の使用人への福利厚生になるわよね。時間ができたら、あの魔道具屋さんのところへ持っていき、売ってもらってもいいのだから。
そういえば、結局、卓球台は作らなかったな。温泉場に卓球台は欠かせないのに。オルブライトに卓球台を作って、置いても意味がない。
そうだ!いくらオジサンからのプレゼントだからと言って、でも陛下からの贈り物を粗末にしてはいけないと思い直し、いただいたプレゼントのお礼状を書くことにする。
ウエディングドレスの贈り物はちょっと気持ち悪いけど、こういうことはハッキリと断っておかないと、後々面倒ごとになることは目に見えている。
「この度は、大変けっこなお品物を頂戴いたしまして、ありがとうございました。わたくし、まだ15歳の若い身空で、どなたとも結婚する意志がございません。甚だ勝手ではございますが、このドレスに袖を通すまで、今、しばらくのご猶予を頂戴いたしたく筆を執りました。」
要するにオジサンとは、結婚したくないという思いを込めて、返礼する。
それを受け取った陛下の反応は、というと「……。」
エドワードと婚前旅行に行き、ヤることヤったのであろうか?と心配なさっている。
エドワードの奴、聖女様を弄ぶだけ弄んでいたとしたら、……と、気が気ではないご様子にハラハラしている側近。
もう明日死ぬと言われても、悔いはない。いや、ひょっとすれば、今日にでも死の宣告を受けるかもしれないそれでも気分は孔子の心境で。クリニックに出向く。
朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり
待合室に入り、順番を待つ。名前を呼ばれ、診察室の中に入ると、医師は、
「顔色がよくなりましたね。マナを使い果たせてよかったです。おかげで、余命宣告をしなくて済みました。」
「は?え……と?」
「2か月前は、マナが内臓を圧迫していて、余命宣告をさせていただきましたが、今はマナの通りもよくなり、何の心配もいらなくなりました。」
「母と同じ病気だったのでは?」
「ええ。ですから感知されましたよ。もう、大丈夫です。」
「うそ……。」
今まで、余命2か月だと思っていたから、めちゃくちゃやってきたというのに、病気が治ったですって!? どうしてくれるのよ!
それよりこれから、どうやって生きていけばいいのかさえも分からなくなってくる。
余命2か月だと思えばこそ、海の魔物とも対峙した。火山の噴火も死に物狂いで止めた、魔道具もたくさん開発した。
明日から、どうやって生きていければいいって言うのよ?
ふらふらと重い足取りを引きずって、公爵邸に戻ると、国王陛下からお見舞いの品物が届いていた。
箱の中を開けるとウエディングドレス。え?まさか、あの年寄りと結婚?冗談じゃないわよ。いくら命拾いしたからと言って、父と同い年ぐらいの年配のオジサンとだなんて、いやだわ。
なんだか、疲れたので、お行儀が悪いけれど、そのままベッドへダイブして、しばらくお昼寝をしよう。
目が覚めたら、すべて夢の中で、まだ温泉場にいたりして?その期待もあり、目覚めたが、やっぱり見慣れた公爵邸の自室にいた。
リビングには、陛下から贈られてきたウエディングドレスが箱に入ったままの状態で置かれている。
ショック!やっぱり、夢ではなかった。
ガッカリしながら、立って、ふと窓を開ける。目の前の木に見覚えがあるハゲタカが一羽止まる。
ん?これは……?あの日、出会ったハゲタカさんかしら?
「どうした?聖女様、浮かない顔をして。」
「やーね。聖女様じゃないわよ。余命2か月だと言われて、買い物したり旅行したりして、帰ってきたら、あれはウソでしたって言われて、落ち込んでいるのよ。」
「オタっちの仲間内では、聖女様さ。余命宣告が消えて良かったじゃねーか?」
「だって……、これからどう生きたらいいのかわからなくなって。」
「そんなの朝起きて、顔洗って、飯食って、……やること決まってんだろ?」
「そうね。当たり前の生活を送ればいいわね。」
ため息を穿きながら、執務室の机に向かうと、もうこれでもか!というほどの贈り物とお手紙、それに外遊していた間のお仕事が山のように積まれている。
また、はぁーっとため息を吐きながら、仕事に向き合う。
やってもやっても終わらない仕事に、こういう時マッサージチェアがあれば、ちょっと一息つけるのになぁ。と思い至る。そういえば、あの温泉宿で魔道具を作り、大盛況だったことを思い出す。
楽しかったなぁ。余命いくばくかの不安があったからこそ、夢中になって魔道具を作ったんだっけ。でも、これから病気の心配がなくなって健康だと言われても、何を生きがいにすればいいのかわからなくなっている。
またマッサージチェアを作ろうかしら?公爵邸の使用人への福利厚生になるわよね。時間ができたら、あの魔道具屋さんのところへ持っていき、売ってもらってもいいのだから。
そういえば、結局、卓球台は作らなかったな。温泉場に卓球台は欠かせないのに。オルブライトに卓球台を作って、置いても意味がない。
そうだ!いくらオジサンからのプレゼントだからと言って、でも陛下からの贈り物を粗末にしてはいけないと思い直し、いただいたプレゼントのお礼状を書くことにする。
ウエディングドレスの贈り物はちょっと気持ち悪いけど、こういうことはハッキリと断っておかないと、後々面倒ごとになることは目に見えている。
「この度は、大変けっこなお品物を頂戴いたしまして、ありがとうございました。わたくし、まだ15歳の若い身空で、どなたとも結婚する意志がございません。甚だ勝手ではございますが、このドレスに袖を通すまで、今、しばらくのご猶予を頂戴いたしたく筆を執りました。」
要するにオジサンとは、結婚したくないという思いを込めて、返礼する。
それを受け取った陛下の反応は、というと「……。」
エドワードと婚前旅行に行き、ヤることヤったのであろうか?と心配なさっている。
エドワードの奴、聖女様を弄ぶだけ弄んでいたとしたら、……と、気が気ではないご様子にハラハラしている側近。
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