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11.盗賊

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 ジャクリーヌは好き放題しているうちに、やけに体調がいいことに気づく。これで本当に後2か月足らずで死ぬのかと思えるほどに。

 でも、ろうそくでも燃え尽きる最後は一層炎が強くなることがある。だから、それかもと思って、ますます頑張って消化試合をする。

 とにかく恋人はできた。ケーキも食べた。お酒もたくさん買った。魔道具もたくさん作って売れた。次は……と、旅行に行きたいな。温かい南国がいい。バカンスというのも経験したい。できればアバンチュールも、でもエドワード様がいるから、無理かな?

 南国でムームーを買って着たい。トロピカルカクテルジュースも飲みたい。

 フルーツもいっぱい食べたい。前世では、とても人前で水着姿を晒せるような体型ではなかったけど、今世は、どこから見てもナイスバディだから、水着を着て、泳いでみたい。

 ジャクリーヌが南国へ外遊したいという話を持ち掛けると案の定、エドワード様も同行の意思を明らかにされる。やっぱりね、この時点で、アバンチュールの夢は水の泡となってしまったけど、仕方がない。

 いよいよ明日、出発というとき、王城へ上がり、オルブライト陛下にしばしの暇乞いをする。なぜかお餞別をたくさんいただいた。

 お餞別をもらうとうっとうしいのよね。お土産を買って帰らなければならないから、お土産選びはエドモード様に任せることにしよう。だって、あんなお年寄り(失礼!)の趣味なんてわからないもの。

 馬車に必要最低限の荷物を積むもけっこうな量、貴族令嬢ではなく、筆頭公爵としての旅行だから、体面を保つため身分を保証するものを持ち歩かなければならない。

 もし、南国の領主から、夜会のお誘いを受けた時のため、豪華な衣装や宝石類も持ち歩かなくてはならないため、それと護衛の騎士に侍女も何人も引き連れての大所帯で行程になるため、どうしても大量の荷物が必要となってしまう。

 オルブライト国を移動中は、何の問題もなくスムーズに街道町で宿泊し、滞りなく行程は進んでいく。

 ところが隣国との国境線を超えたあたりから雲行きが怪しくなる。

 ジャクリーヌとエドワードの一行を見張るような輩がちらほらと現れ始める。

 おそらく盗賊団の一味だろうが、隣国の盗賊団はジャクリーヌの魔力量のことを知らない。

 命知らずなのか、情報不足からくるものかはわからないが、豪華な馬車列が並んで進行しているので、絶好の獲物が現れたと手ぐすねを引いて待ち構えている。

 街道沿いを進んでいると、前方が混雑し始める。なんでも行く手にがけ崩れが起こり、通行止めになったとかで、復旧するまでに3日を要するということらしい。前方は、復旧するまで野宿して待つらしいが、ジャクリーヌ達の馬車列は、別に急ぐ旅でもないので、先ほどの宿場町に戻り、ゆっくりするつもりでいた。

 回れ右をして、戻ろうとした途端、物陰から弓矢を射かけられる。盗賊団が襲来してきた。

 「男は皆殺しにしろ!女とお宝だけを狙え!」

 盗賊団の頭らしき人物が叫んでいるのが聞こえる。

 ジャクリーヌは護衛が制止しているにもかかわらず、馬車の外へ出て、馬車列の真上に結界を張る。

 これだけしとけば、誰も傷つくことはない。後は、盗賊団をどうするかが問題、ひっ捕らえて、この地の領主に引き渡すのが一番なのだろうが、めんどくさい。よその国に来てまで、面倒ごとに巻き込まれたくないが、すでに巻き込まれている状態。

 さっきの、盗賊団の頭の言葉を思い出し、皆殺しにしようかとさえ、思う。

 これって、正当防衛になるわよね。

 一応、ジャクリーヌは、盗賊団の頭を呼び出す。

 「ほぅ、これまた上玉じゃねえか。」

 「選択肢を2つ、差し上げます。おとなしく縛につくか、ここで野垂れ死にするか、どちらがいいですか?」

 「は?それは、こっちのセリフだぜ、お嬢さんよ。やっちまえ!」

 ジャクリーヌに一斉に飛びかかろうとするも、結界に阻まれて、弾き飛ばされてしまう盗賊たち。

 「それでは、後者を選択したとみなして、よろしいでしょうか?」

 ジャクリーヌは、盗賊一人一人の頭上に氷の柱を出現させ、頭からすっぽりかぶせていく。

 「なんだこりゃ!冷てえ!寒い!助けてくれ!」

 「ダメです。ここで野垂れ死にを選択なさったではございませんか?男に二言は許しませんわ。」

 馬車列の方を向き直り、

 「さて、先ほどの宿場町まで戻るといたしましょうか?」

 何事もなかったような顔をして、馬車に乗り込むジャクリーヌ。

 改めて、エドワードは、ジャクリーヌの魔法に恐れをなし、決して、浮気はしないと心に誓う。

 宿場町の役人に、盗賊団に出会ったことと成敗したとを伝える。翌日になり、慌てて役人が捕縛に向かったが、全員、凍死で息の根は止まっていた後のことだった。

 役人の取り調べに対し、エドワード王子が正当防衛を主張すると、すんなり認められたのだ。こういう時に王族の肩書は大きい。それどころか、積年の悩みの種であった盗賊を生きてでもなくとらえた功を褒めたたえられ、祝賀パーティをしてくださることになったのだ。

 街道のがけ崩れが復旧するまで、その宿場町に留まり、その後、再び街道を南下する。
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