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7.うそ発見器

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 うそ発見器タトゥーを魔道具として、この前の店主のところへ持ち込めば、揉み手にこにこ愛想良く、すぐに置いてもらえることになった。これは試作品なので、お金はいいと言っているのに、他のジューサーや冷蔵庫、掃除ロボットを作らせるために、前金で金貨100枚(日本円換算100万円相当)ももらってしまう。

 まぁ、邪魔になるわけでもないから、黙ってもらっておくことにした。その次の日からは、王都では大混乱が起こるほどの騒ぎになる。

 あの全身タトゥーが効果を発揮し始める。

 ある日、突然、恋人や家族のカラダに「浮気者」のタトゥーが浮かび上がる。洗っても、着替えても消せない。

 王城に勤務している者たちのカラダにも、「横領」「背任」「裏切り者」「嘘つき」「仮病」「野心家」などの文字が浮かび上がるので、もうその日から、同僚の白い目で見られることに耐えられなくなって、退職者が続出する。

 それでも出勤続けるものは強者で、確信犯である。

 こんな苛烈な魔道具誰が欲しがるものなのかと思ったけど、意外にもよく売れる。みんな他人の心の中を垣間見たいのか?

 社交界の余興として、この魔道具を買った人の中からは、悲鳴と怒声が飛び交う。

 「淫乱」「不能」「早漏」「種なし」「性病」「変態」「隠し子」「肉便器」……もう憶測、余興どころの騒ぎでなくなるが、魔道具を壊しても、その効力は消えないどころかどんどん拡散されていくありさまで、しまいには主催者側が出席者全員に黒いコートを渡したとか、渡さなかったとか。という噂まで飛び交う。

 父の遺体には、何もしかけていないのに、ナタリー夫人に、あの「殺人狂」「毒殺犯」という文字が背中にも浮かび上がってしまう。それを見て、やっぱりと内心思うのだが、当のナタリー夫人は、「知らぬ存ぜぬ」で押し通そうとしているが、さすがにそれは許されざること。

 ナタリー夫人が隠し持っていた毒と父に使われた毒のDNAが一致し、たちまち獄門台に送られる羽目になるが、そうなってからでもなお、リリアーヌは今日も元気にエドモンドの肉便器と化している。

 エドモンドにナタリー夫人の命乞いもせず、側妃?正妃?になれると信じているから、おめでたい。

 罪人の娘がどうあがいても転んでも、なれないということに気づいていない。

 そして、もう一つの魔道具、これも発売当日に100個完売したと聞くから、驚いた。大きなお屋敷なら、1個では足りないらしく。オレンジ、アップル、ミックスとジュースの種類ごとに使い分けているようで、1度に買える数量を制限しているようだ。

 うそ発見器は反響が大きすぎて、困惑したところもあるが、ジャーサーは特に問題は起こっていないようだから、安心して量産体制に入る。

 センサーライトとお掃除ロボットも作ってみた。こちらも予想を上回るスピードで爆売れしている。モニター付きインターフォンも作ってみようかしら。それと冷蔵庫とスカイプも、ファックスやテレビ電話の方がいいかもしれないけど、なかなか電話回線が難しい。

 冷蔵庫に冷めないバスタブのお風呂、シャワートイレは割とすんなりできた。あと白物家電でないものといえば、洗濯機なのだが、二層式なら簡単にできるような気もする。

 その間、魔道具屋の店主の甥っ子とも、お見合いを兼ねたデートを楽しみ、アラミス様とも出会った。ご老人がおっしゃっていた通り、レオナルド様をさらにシャープに磨き上げたような顔立ちのイケメンに、しばし呆然としたが、デキル男はどこまで行ってもデキル。

 レオナルド様の方が堅物で、アラミス様の方は、遊び人風というかチャラ系だった。別に夫にするわけではないから、チャラ系でもいいようなものだが、変な病気をうつされるのはご免だ。

 だから付き合うなら、ぱっやりレオナルド様の方かなぁ。とぼんやり考え込んでしまう。アラミス様は、妙に女慣れしているというか、女の扱いに長けている。その分、楽しいけど、不安な点もいくつもある。

 エドモンドは相変わらず、廃嫡にも廃籍にもなっていないみたいで、リリアーヌとイチャイチャしているらしい。

 王城へ会議に行くと、廊下ですれ違うことが、たまにある。

 いつも、いつも、リリアーヌがエドモンドにぶら下がっている状態であるから、あれはもう寝た切りボケ老人のようだと感じることがある。

 見せびらかしているという風でもなく、エドモンドも嬉しそうにしているようだから、ほっとくけどね。

 この前、会議に出た後、庭を久しぶりに歩いた、ここは昔、王太后様とよく散策した庭。王太后様は、植物がお好きで、よくいろんな草花のご説明をしてくださったが、崩御の後、すっかり寂れてしまっているようだ。

 一応、庭師が手入れをしているようだが、以前の華やかな雰囲気は鳴りを潜めているとしか思えない。

 「ジャクリーヌ殿!」

 振り向くと懐かしい顔が白い歯を見せて、笑いかけている第2王子のエドワード殿下だ。

 「お久しぶりでございます。」

 丁寧にカーテシーで礼をとる。
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