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2.空飛ぶ家
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ジャクリーヌが学園に入る年頃になった。王立学園もいいけど、嫌なナタリー母娘が家にベッタリといるので、家から通えるようなところへは行きたくない。
ちなみにマイケルもリリアーヌも学園には通っていない、魔力があまりにも乏しいために入学試験にすら受けられない。
そういうことで領地からほど近い学園に通うことにして、領地へ荷物を持っていく用意をしていると、リリアーヌがいきなり入ってきて
「その赤いバスケット、気に入っているのよ。置いて行ってくれない?」
「イヤよ。これはお母さまが買ってくださったものですもの。いわば形見同然の品物だから、似たようなものをナタリー夫人に買ってもらえばいいじゃない?」
「私は、それが欲しいのよ!渡しなさい!バシッ!」
いきなり殴りかかってこられ、これまでの堪忍袋の緒が切れた。リリアーヌの手から赤いバスケットをひったくると、リリアーヌに拘束魔法をかけ動かないようにしてから。拡声魔法で家人に今すぐ家の外へ出るように呼び掛ける。
使用人は、すぐ用事の手を止め、言われたとおり、家の外へ出るが、マイケルとナタリー夫人はハナからジャクリーヌのいうことなどに耳を貸さないとわかっている。リリアーヌは動けないから出るに出られない。
公爵家の庭に出たジャクリーヌは精神を集中させ、公爵邸を空高く持ち上げる。浮遊魔法の応用で、ビルの8階ぐらいの高さまで、持ち上げて、そこで風魔法の応用を使い公爵邸を左右上下に揺らすと、何やら悲鳴らしきものが聞こえるような?きっと気のせいよね?
しばらくそれを5~6回続けると、上から汚い物体が3個落ちてくることが目視で確認できる。使用人の頭上には結界を張り、当たってもけがをしないように工夫している。
「わたくしの大事にしているバスケットを盗もうとするからよ。いい気味だわ。」
その言葉に使用人一同が頷く。
執事のセバスチャンが、
「どうせなら、このタウンハウスを持って、領地まで行かれたら、どうですか?」
「でも、お父様が帰ってこられたら、困られるわ。」
「旦那様には、秘密の抜け道を作り、そこから出入りしていただくというのは、どうでしょうか?それに離れもありますし、亡くなられる奥様が生前愛してやまなかった音質もございますれば……。」
「うーん。そうね。で、みんなはどうするの?」
「もちろん、お嬢様と共に参ります。」
「それなら、アイツらを置いていくしかないわね?」
「無論でございます。」
「わかりましたわ。みんな、早く家の中に入って、戸締りをして、念のため命綱を掴んでちょうだい。」
最初は、馬車でゆらゆら行くつもりが、思いがけずに空から行くことになった。使用人からはワァーっと歓声が上がる。
まるでオズの魔法使いみたい。
ナタリー夫人とマイケル、リリアーヌは地面にめり込んだまま、身動き一つとれずにいる。自業自得よ、今までよくも甚振ってくれたものだと感心する。オルブライト国隋一のアナザーライト家の令嬢The アナザーライトそのものに向かって。
この世界では、貴族だけが選ばれたものとしての象徴の魔力がある。平民は魔力が皆無なのだ。魔力は、国防から政治経済、生活魔法まで、この世界のすべてを動かしていると言っても過言ではない。
その中でも魔力量が多い順に公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順に序列があり、公爵家の中でも特に魔力量が多いアナザーライト家は筆頭公爵の立場になっている。その正当な流れを汲んでいるのがジャクリーン・アナザーライトただ一人なのである。
馬車で逝けば3日はかかる距離でも、空から行けば遮るものがないため3時間ほどで行ける。
領地の公爵邸の横の空き地にドーンと置く。
カントリーハウスの中で作業をしていた人たちは、急に影が差したかと思えば、ドーンという大きな音に、ビックリして外へ出てみると、そこには王都にあるはずのタウンハウスが居を構えていたから、ビックリする。
タウンハウスの執事セバスチャンが外へ出てみると、カントリーハウスの執事とガッチリと握手している。
王都にいるときからだったけど、ここのところ体調が悪い。学園に入る前に、一度健康診断を兼ねて、医者に診てもらうことにする。
だからというわけではないが、最近、事あるごとにリリアーヌの存在が鼻につくようになった。エドモンドのことでも、あれ以来、王家からは婚約破棄の違約金もまだ支払われていないようだし、もっとも、平民出身のリリアーヌごときがエドモンドの后になど、天地がひっくり返ってもなれるとは思わないけど、そのことも含めて、一度お父様に相談しなければ、と思っている。
クリニックへ行き、受付を済ませ、しばらく待つと、名前を呼ばれたので、診察室に入る。
医師は、難しそうな顔をしている。
「残念ですが、お母さまと同じ病気のようです。マナが強すぎて、内臓を圧迫しています。もって後2か月の命化と存じます。ご家族の方に、お知らせください。」
えー!うそ?そのまま、ジャクリーヌは意識を手放してしまった。
ちなみにマイケルもリリアーヌも学園には通っていない、魔力があまりにも乏しいために入学試験にすら受けられない。
そういうことで領地からほど近い学園に通うことにして、領地へ荷物を持っていく用意をしていると、リリアーヌがいきなり入ってきて
「その赤いバスケット、気に入っているのよ。置いて行ってくれない?」
「イヤよ。これはお母さまが買ってくださったものですもの。いわば形見同然の品物だから、似たようなものをナタリー夫人に買ってもらえばいいじゃない?」
「私は、それが欲しいのよ!渡しなさい!バシッ!」
いきなり殴りかかってこられ、これまでの堪忍袋の緒が切れた。リリアーヌの手から赤いバスケットをひったくると、リリアーヌに拘束魔法をかけ動かないようにしてから。拡声魔法で家人に今すぐ家の外へ出るように呼び掛ける。
使用人は、すぐ用事の手を止め、言われたとおり、家の外へ出るが、マイケルとナタリー夫人はハナからジャクリーヌのいうことなどに耳を貸さないとわかっている。リリアーヌは動けないから出るに出られない。
公爵家の庭に出たジャクリーヌは精神を集中させ、公爵邸を空高く持ち上げる。浮遊魔法の応用で、ビルの8階ぐらいの高さまで、持ち上げて、そこで風魔法の応用を使い公爵邸を左右上下に揺らすと、何やら悲鳴らしきものが聞こえるような?きっと気のせいよね?
しばらくそれを5~6回続けると、上から汚い物体が3個落ちてくることが目視で確認できる。使用人の頭上には結界を張り、当たってもけがをしないように工夫している。
「わたくしの大事にしているバスケットを盗もうとするからよ。いい気味だわ。」
その言葉に使用人一同が頷く。
執事のセバスチャンが、
「どうせなら、このタウンハウスを持って、領地まで行かれたら、どうですか?」
「でも、お父様が帰ってこられたら、困られるわ。」
「旦那様には、秘密の抜け道を作り、そこから出入りしていただくというのは、どうでしょうか?それに離れもありますし、亡くなられる奥様が生前愛してやまなかった音質もございますれば……。」
「うーん。そうね。で、みんなはどうするの?」
「もちろん、お嬢様と共に参ります。」
「それなら、アイツらを置いていくしかないわね?」
「無論でございます。」
「わかりましたわ。みんな、早く家の中に入って、戸締りをして、念のため命綱を掴んでちょうだい。」
最初は、馬車でゆらゆら行くつもりが、思いがけずに空から行くことになった。使用人からはワァーっと歓声が上がる。
まるでオズの魔法使いみたい。
ナタリー夫人とマイケル、リリアーヌは地面にめり込んだまま、身動き一つとれずにいる。自業自得よ、今までよくも甚振ってくれたものだと感心する。オルブライト国隋一のアナザーライト家の令嬢The アナザーライトそのものに向かって。
この世界では、貴族だけが選ばれたものとしての象徴の魔力がある。平民は魔力が皆無なのだ。魔力は、国防から政治経済、生活魔法まで、この世界のすべてを動かしていると言っても過言ではない。
その中でも魔力量が多い順に公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順に序列があり、公爵家の中でも特に魔力量が多いアナザーライト家は筆頭公爵の立場になっている。その正当な流れを汲んでいるのがジャクリーン・アナザーライトただ一人なのである。
馬車で逝けば3日はかかる距離でも、空から行けば遮るものがないため3時間ほどで行ける。
領地の公爵邸の横の空き地にドーンと置く。
カントリーハウスの中で作業をしていた人たちは、急に影が差したかと思えば、ドーンという大きな音に、ビックリして外へ出てみると、そこには王都にあるはずのタウンハウスが居を構えていたから、ビックリする。
タウンハウスの執事セバスチャンが外へ出てみると、カントリーハウスの執事とガッチリと握手している。
王都にいるときからだったけど、ここのところ体調が悪い。学園に入る前に、一度健康診断を兼ねて、医者に診てもらうことにする。
だからというわけではないが、最近、事あるごとにリリアーヌの存在が鼻につくようになった。エドモンドのことでも、あれ以来、王家からは婚約破棄の違約金もまだ支払われていないようだし、もっとも、平民出身のリリアーヌごときがエドモンドの后になど、天地がひっくり返ってもなれるとは思わないけど、そのことも含めて、一度お父様に相談しなければ、と思っている。
クリニックへ行き、受付を済ませ、しばらく待つと、名前を呼ばれたので、診察室に入る。
医師は、難しそうな顔をしている。
「残念ですが、お母さまと同じ病気のようです。マナが強すぎて、内臓を圧迫しています。もって後2か月の命化と存じます。ご家族の方に、お知らせください。」
えー!うそ?そのまま、ジャクリーヌは意識を手放してしまった。
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