死者からのロミオメール

青の雀

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 ロアンヌのところに死んだ はずのロバートから手紙が来るようになり、ロアンヌから笑顔が消え失せてしまう。

 最愛の我が子を産んだ後、一日一回の王子との対面タイムも気分が晴れない。可愛い王子をこの腕に抱きしめても、どこか憂鬱そうな顔色で、本心から笑顔を見せられない。

 ロバートからの手紙の内容は、時にロマンティックなもので復縁を迫っていたかと思えば、次の手紙には、脅迫めいた文章が並んでいることもあり、犯人は、何をしたいのかさっぱりわからない。

 夫のリチャード殿下は、手紙の主が誰かわからないうちは、受信できないようにいろいろ対策を講じてくださっているが、その合間を縫うようにして、手紙は届けられる。

 ある時は、伝書鳩であり、その伝書鳩の後を追いかけたが、途中で見失った。次に届いた手紙は、魔法撮りによるものだった。魔法撮りだとわかった瞬間、魔法撮りに逆魔法をかけ、生け捕りを試みたが自爆され、逃してしまったのだ。

 でも、少しは収穫があった。なぜなら魔法鳥は高位の貴族でなければ使えない代物で、伝書鳩とはわけが違う。高価なのだ。魔法撮りを遣える貴族となると侯爵位以上の貴族の範囲は狭まってくる。

 侯爵位以上で、ロアンヌとロバートのことをよく知っていて、ロアンヌに嫌がらせをしたい人物となると数はア限られてくる。

 それに以前ならともかくロアンヌは結婚して1年が過ぎる。もう立派なロイヤルファミリーの一員なのだが、王族に嫌がらせをしたとあっては、国家反逆罪もしくは、最低でも不敬罪には問われる罪。そんな危ない橋を渡っても、自分だけは助かるつもりでいるということは、今、国外にいる者の可能性が高い。

 そうなるとクリスティーヌが最も犯人として近い存在の様に思われる。でも、クリスティーヌにもうそんな余裕があるとは思えない。

 それにクリスティーヌらしからぬやり方に思わず首をひねる。

 最初は、クリスティーヌの正妃の立場を狙った男爵令嬢のリリアーヌの線もアリかと思えたが、高位貴族の息子を片っ端から誑かし、婚約破棄に持ち込むのが関の山で、その高位貴族の息子とは、親が金で解決しているので、後釜にはなれないでいる。

 あと、考えられる者と言えば、ロバートの身内だが、ロバートの両親は、ロバートとは違う馬車に乗っていたものの、同じ時に崩落事故で亡くなってしまっている。ロバートの父の公爵位は、遠縁に当たるものが引き継いでいるものの、まだ8歳の少年。

 そんな子供が、ロアンヌを恨んでいるとは考えにくい。

 ロアンヌの幼馴染の令嬢やロバート側の幼馴染にもあたってみたが、皆、知らないという。当然のことながら、たとえ心当たりがあったとしても、大罪人を知っているとは言わないもの。

 捜査は難航を極める。

 ますますロアンヌは眠れない日々が続き、体調は思わしくなくなり、もう二人目を見込めるどころではない。

 しまいには、あの事故は嘘で、本当はロバート様は生きていらっしゃるのだわ!」とまで、言い出すようになる。

「そんなはずはないよ」

 いくらリチャードが言い聞かせても、信じられないとばかりにかぶりを振り、また頭をふらつかせてしまう。

 そんな時、またロアンヌ宛に手紙が来たのだが、今度は伝書鳩で、続けて魔法鳥は経済的にしんどかったということを思いうかがわせることになったのだ。

 案外、火の車の高位貴族かもしれない。割と、そういうところは多い。領地経営がうまくいかないところや、主人が女狂いをしていて、多額の賠償金を求められ、破産寸前の貴族がいる。

 ロアンヌは、婚約者に死なれても、修道院に行かず、玉の輿に乗れたので、それで逆恨みして、ロアンヌに意地悪しているのかもしれない。

 その線で、学園の同級生を中心にもう一度、洗い出しが行われることになった。むやみに対象者を広げてしまったら、雲をつかむことになりかねない。

 伝書鳩は返信をすることなく、お城で籠に入れ、飼うことになった。同じ籠の中にメスの白い鳩を入れ、二羽が恋仲になるように仕向ける。

 恋仲になった頃合いを見て、1羽の鳩に手紙を持たせ放ち、もう1羽の鳩にそれを追跡させるという名案を思い付いたからだ。

 メスの鳩もただものの鳩ではない。魔法鳥よりも優秀な訓練を受けた鳩なのだ。

 そして、庭が恋仲になるまでの間、リチャードはロアンヌを連れて、外遊に行くことにする。いってみれば、新婚旅行なのだが、結婚して以来、ずっと行けていなかったものを今更というわけではないが、行くことにして、ロアンヌの気分転換を図ろうと思ったのだ。

 新婚旅行には第1王子を連れて行くかどうか、散々迷った挙句、連れて行くことに決めた。そうなると、乳母も一緒の行幸となるが、致し方がない。

 まずは、王家ゆかりの領地に行き、その前後にクロイセンの領地に立ち寄ることにしたのだ。

 そこで、思わぬ収穫があったことは、後々の話とする。

 本当は国外への旅行がしたかったのだが、これから何度でも国外への旅行は行くことになるだろうから、新婚旅行ぐらい、国内でのんびり過ごすことも悪くはない。

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