7 / 27
7.
しおりを挟む
ロアンヌのところに死んだ はずのロバートから手紙が来るようになり、ロアンヌから笑顔が消え失せてしまう。
最愛の我が子を産んだ後、一日一回の王子との対面タイムも気分が晴れない。可愛い王子をこの腕に抱きしめても、どこか憂鬱そうな顔色で、本心から笑顔を見せられない。
ロバートからの手紙の内容は、時にロマンティックなもので復縁を迫っていたかと思えば、次の手紙には、脅迫めいた文章が並んでいることもあり、犯人は、何をしたいのかさっぱりわからない。
夫のリチャード殿下は、手紙の主が誰かわからないうちは、受信できないようにいろいろ対策を講じてくださっているが、その合間を縫うようにして、手紙は届けられる。
ある時は、伝書鳩であり、その伝書鳩の後を追いかけたが、途中で見失った。次に届いた手紙は、魔法撮りによるものだった。魔法撮りだとわかった瞬間、魔法撮りに逆魔法をかけ、生け捕りを試みたが自爆され、逃してしまったのだ。
でも、少しは収穫があった。なぜなら魔法鳥は高位の貴族でなければ使えない代物で、伝書鳩とはわけが違う。高価なのだ。魔法撮りを遣える貴族となると侯爵位以上の貴族の範囲は狭まってくる。
侯爵位以上で、ロアンヌとロバートのことをよく知っていて、ロアンヌに嫌がらせをしたい人物となると数はア限られてくる。
それに以前ならともかくロアンヌは結婚して1年が過ぎる。もう立派なロイヤルファミリーの一員なのだが、王族に嫌がらせをしたとあっては、国家反逆罪もしくは、最低でも不敬罪には問われる罪。そんな危ない橋を渡っても、自分だけは助かるつもりでいるということは、今、国外にいる者の可能性が高い。
そうなるとクリスティーヌが最も犯人として近い存在の様に思われる。でも、クリスティーヌにもうそんな余裕があるとは思えない。
それにクリスティーヌらしからぬやり方に思わず首をひねる。
最初は、クリスティーヌの正妃の立場を狙った男爵令嬢のリリアーヌの線もアリかと思えたが、高位貴族の息子を片っ端から誑かし、婚約破棄に持ち込むのが関の山で、その高位貴族の息子とは、親が金で解決しているので、後釜にはなれないでいる。
あと、考えられる者と言えば、ロバートの身内だが、ロバートの両親は、ロバートとは違う馬車に乗っていたものの、同じ時に崩落事故で亡くなってしまっている。ロバートの父の公爵位は、遠縁に当たるものが引き継いでいるものの、まだ8歳の少年。
そんな子供が、ロアンヌを恨んでいるとは考えにくい。
ロアンヌの幼馴染の令嬢やロバート側の幼馴染にもあたってみたが、皆、知らないという。当然のことながら、たとえ心当たりがあったとしても、大罪人を知っているとは言わないもの。
捜査は難航を極める。
ますますロアンヌは眠れない日々が続き、体調は思わしくなくなり、もう二人目を見込めるどころではない。
しまいには、あの事故は嘘で、本当はロバート様は生きていらっしゃるのだわ!」とまで、言い出すようになる。
「そんなはずはないよ」
いくらリチャードが言い聞かせても、信じられないとばかりにかぶりを振り、また頭をふらつかせてしまう。
そんな時、またロアンヌ宛に手紙が来たのだが、今度は伝書鳩で、続けて魔法鳥は経済的にしんどかったということを思いうかがわせることになったのだ。
案外、火の車の高位貴族かもしれない。割と、そういうところは多い。領地経営がうまくいかないところや、主人が女狂いをしていて、多額の賠償金を求められ、破産寸前の貴族がいる。
ロアンヌは、婚約者に死なれても、修道院に行かず、玉の輿に乗れたので、それで逆恨みして、ロアンヌに意地悪しているのかもしれない。
その線で、学園の同級生を中心にもう一度、洗い出しが行われることになった。むやみに対象者を広げてしまったら、雲をつかむことになりかねない。
伝書鳩は返信をすることなく、お城で籠に入れ、飼うことになった。同じ籠の中にメスの白い鳩を入れ、二羽が恋仲になるように仕向ける。
恋仲になった頃合いを見て、1羽の鳩に手紙を持たせ放ち、もう1羽の鳩にそれを追跡させるという名案を思い付いたからだ。
メスの鳩もただものの鳩ではない。魔法鳥よりも優秀な訓練を受けた鳩なのだ。
そして、庭が恋仲になるまでの間、リチャードはロアンヌを連れて、外遊に行くことにする。いってみれば、新婚旅行なのだが、結婚して以来、ずっと行けていなかったものを今更というわけではないが、行くことにして、ロアンヌの気分転換を図ろうと思ったのだ。
新婚旅行には第1王子を連れて行くかどうか、散々迷った挙句、連れて行くことに決めた。そうなると、乳母も一緒の行幸となるが、致し方がない。
まずは、王家ゆかりの領地に行き、その前後にクロイセンの領地に立ち寄ることにしたのだ。
そこで、思わぬ収穫があったことは、後々の話とする。
本当は国外への旅行がしたかったのだが、これから何度でも国外への旅行は行くことになるだろうから、新婚旅行ぐらい、国内でのんびり過ごすことも悪くはない。
最愛の我が子を産んだ後、一日一回の王子との対面タイムも気分が晴れない。可愛い王子をこの腕に抱きしめても、どこか憂鬱そうな顔色で、本心から笑顔を見せられない。
ロバートからの手紙の内容は、時にロマンティックなもので復縁を迫っていたかと思えば、次の手紙には、脅迫めいた文章が並んでいることもあり、犯人は、何をしたいのかさっぱりわからない。
夫のリチャード殿下は、手紙の主が誰かわからないうちは、受信できないようにいろいろ対策を講じてくださっているが、その合間を縫うようにして、手紙は届けられる。
ある時は、伝書鳩であり、その伝書鳩の後を追いかけたが、途中で見失った。次に届いた手紙は、魔法撮りによるものだった。魔法撮りだとわかった瞬間、魔法撮りに逆魔法をかけ、生け捕りを試みたが自爆され、逃してしまったのだ。
でも、少しは収穫があった。なぜなら魔法鳥は高位の貴族でなければ使えない代物で、伝書鳩とはわけが違う。高価なのだ。魔法撮りを遣える貴族となると侯爵位以上の貴族の範囲は狭まってくる。
侯爵位以上で、ロアンヌとロバートのことをよく知っていて、ロアンヌに嫌がらせをしたい人物となると数はア限られてくる。
それに以前ならともかくロアンヌは結婚して1年が過ぎる。もう立派なロイヤルファミリーの一員なのだが、王族に嫌がらせをしたとあっては、国家反逆罪もしくは、最低でも不敬罪には問われる罪。そんな危ない橋を渡っても、自分だけは助かるつもりでいるということは、今、国外にいる者の可能性が高い。
そうなるとクリスティーヌが最も犯人として近い存在の様に思われる。でも、クリスティーヌにもうそんな余裕があるとは思えない。
それにクリスティーヌらしからぬやり方に思わず首をひねる。
最初は、クリスティーヌの正妃の立場を狙った男爵令嬢のリリアーヌの線もアリかと思えたが、高位貴族の息子を片っ端から誑かし、婚約破棄に持ち込むのが関の山で、その高位貴族の息子とは、親が金で解決しているので、後釜にはなれないでいる。
あと、考えられる者と言えば、ロバートの身内だが、ロバートの両親は、ロバートとは違う馬車に乗っていたものの、同じ時に崩落事故で亡くなってしまっている。ロバートの父の公爵位は、遠縁に当たるものが引き継いでいるものの、まだ8歳の少年。
そんな子供が、ロアンヌを恨んでいるとは考えにくい。
ロアンヌの幼馴染の令嬢やロバート側の幼馴染にもあたってみたが、皆、知らないという。当然のことながら、たとえ心当たりがあったとしても、大罪人を知っているとは言わないもの。
捜査は難航を極める。
ますますロアンヌは眠れない日々が続き、体調は思わしくなくなり、もう二人目を見込めるどころではない。
しまいには、あの事故は嘘で、本当はロバート様は生きていらっしゃるのだわ!」とまで、言い出すようになる。
「そんなはずはないよ」
いくらリチャードが言い聞かせても、信じられないとばかりにかぶりを振り、また頭をふらつかせてしまう。
そんな時、またロアンヌ宛に手紙が来たのだが、今度は伝書鳩で、続けて魔法鳥は経済的にしんどかったということを思いうかがわせることになったのだ。
案外、火の車の高位貴族かもしれない。割と、そういうところは多い。領地経営がうまくいかないところや、主人が女狂いをしていて、多額の賠償金を求められ、破産寸前の貴族がいる。
ロアンヌは、婚約者に死なれても、修道院に行かず、玉の輿に乗れたので、それで逆恨みして、ロアンヌに意地悪しているのかもしれない。
その線で、学園の同級生を中心にもう一度、洗い出しが行われることになった。むやみに対象者を広げてしまったら、雲をつかむことになりかねない。
伝書鳩は返信をすることなく、お城で籠に入れ、飼うことになった。同じ籠の中にメスの白い鳩を入れ、二羽が恋仲になるように仕向ける。
恋仲になった頃合いを見て、1羽の鳩に手紙を持たせ放ち、もう1羽の鳩にそれを追跡させるという名案を思い付いたからだ。
メスの鳩もただものの鳩ではない。魔法鳥よりも優秀な訓練を受けた鳩なのだ。
そして、庭が恋仲になるまでの間、リチャードはロアンヌを連れて、外遊に行くことにする。いってみれば、新婚旅行なのだが、結婚して以来、ずっと行けていなかったものを今更というわけではないが、行くことにして、ロアンヌの気分転換を図ろうと思ったのだ。
新婚旅行には第1王子を連れて行くかどうか、散々迷った挙句、連れて行くことに決めた。そうなると、乳母も一緒の行幸となるが、致し方がない。
まずは、王家ゆかりの領地に行き、その前後にクロイセンの領地に立ち寄ることにしたのだ。
そこで、思わぬ収穫があったことは、後々の話とする。
本当は国外への旅行がしたかったのだが、これから何度でも国外への旅行は行くことになるだろうから、新婚旅行ぐらい、国内でのんびり過ごすことも悪くはない。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
余命2か月なので、好きに生きさせていただきます
青の雀
恋愛
公爵令嬢ジャクリーヌは、幼い時に母を亡くし、父の再婚相手とその連れ子の娘から、さんざんイジメられていた。婚約者だった第1王子様との仲も引き裂かれ、連れ子の娘が後釜に落ち着いたのだ。
ここの所、体調が悪く、学園の入学に際し、健康診断を受けに行くと、母と同じ病気だと言われ、しかも余命2か月!
驚いてショックのあまり、その場にぶっ倒れてしまったのだが、どういうわけか前世の記憶を取り戻してしまったのだ。
前世、社畜OLだった美咲は、会社の健康診断に引っかかり、そのまま緊急入院させられることになったのだが、その時に下された診断が余命2日というもの。
どうやって死んだのかわからないが、おそらく2日間も持たなかったのだろう。
あの時の無念を思い、今世こそは、好き放題、やりたい放題して2か月という命を全うしてやる!と心に決める。
前世は、余命2日と言われ、絶望してしまったが、何もやりたいこともできずに、その余裕すら与えられないまま死ぬ羽目になり、未練が残ったまま死んだから、また転生して、今度は2か月も余命があるのなら、今までできなかったことを思い切りしてから、この世を去れば、2度と弱いカラダとして生まれ変わることがないと思う。
アナザーライト公爵家は、元来、魔力量、マナ量ともに多い家柄で、開国以来、王家に仕え、公爵の地位まで上り詰めてきた家柄なのだ。でもジャクリーヌの母とは、一人娘しか生まれず、どうしても男の子が欲しかった父は、再婚してしまうが、再婚相手には、すでに男女の双子を持つ年上のナタリー夫人が選ばれた。
ジャクリーヌが12歳の時であった。ナタリー夫人の連れ子マイケルに魔法の手ほどきをするが、これがまったくの役立たずで、基礎魔法の素養もない。
こうなれば、ジャクリーヌに婿を取り、アナザーライト家を存続させなければ、ご先祖様に顔向けができない。
ジャクリーヌが学園に入った年、どういうわけか父アナザーライト公爵が急死してしまう。家督を継ぐには、直系の人間でなければ、継げない。兄のマイケルは、ジャクリーヌと結婚しようと画策するが、いままで、召使のごとくこき使われていたジャクリーヌがOKするはずもない。
余命2か月と知ってから、ジャクリーヌが家督を継ぎ、継母とその連れ子を追い出すことから始める。
好き勝手にふるまっているうちに、運命が変わっていく
Rは保険です
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
王女と結婚したいからと婚約破棄された聖女は王女殿下だった件について
青の雀
恋愛
王位継承権第1位であった王女が庶民の暮らしを知らないと憂い、伯爵家に表向き養女になる。
その後、ひょんなことから、聖女として覚醒したところ、侯爵のバカ息子と無理やり婚約させられてしまいます。
卒業式の日、王女殿下からお呼びがかかったと言って、婚約者から婚約破棄されてしまいます。
聖女様と王女様が同一人物であることを知らない侯爵家の人々は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる