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現代フィクション

3島村かえで

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 島村かえで。

 島村部長の一人娘、パパに頼んで憧れの商社勤務を実現。

 さすが、一流大手商社だけのことはあるわね。若い男性社員は、みんなカッコイイ人たちばかり、その中でかえでが目をつけたのが、藤崎大吾。背が高くて人当たりがよく、ジャニーズ系の甘いマスクをしている。

 パパに頼んで、藤崎さんをパパのプロジェクトチームに入れてもらったんだ。パパは私には、甘々でなんでも「いいよ。」と利いてくれるから好き。

 でも、藤崎さんは、彼女さんがいるみたいで、なかなか落ちない。もう半年ほどしたら結婚式を控えているらしい。絶対、別れさせて、私のモノにしてやるわ。

 聞けば、藤崎さんの彼女さんは、社内一の巨乳美女の人事部の加藤夏美だとわかったのだ。

 そうか。……藤崎さんは、おっぱいの大きな女が好きなのね、対してかえでは貧乳を通り越し、ほとんどツルペタ、一応寄せて上げてはいるが、ブラジャーはゴソゴソでパットを入れている。

 女はおっぱいの大きさで決まるものではない!パパはママを口説くときにそう言ったらしく、私もパパみたいな男性を探していたけど、好きになった相手は、おっぱい大好き男ばかり。

 いまさら、豊胸手術をするわけにもいかない。寝ている間に豊胸になるというブラジャーを買ったけど、効果なし。トイレのスッポン状のものを胸にあてて、引っ張ったけど、それも効果なし。

 豊胸のためのドリンクを買っても全くダメ、何をやってもツルペタは改善されない。

 でもある時、豊胸グッズを物色するため、インターネットを探しているうちに、媚薬を手に入れることに成功したのよ。いくら、藤崎さんといえども、媚薬の前にすれば、ただのオスになるわよね?

 ということで、見事その罠は成功したかのように見えたが、藤崎はかえででは、かえって満足できず、帰りは必ず夏美のところへ寄って、性を満足させるのだ。これでは、なんのために媚薬を使ったか意味がない。

 夏美を満足させるために買ったものではないか!だんだん腹が立ってきて、ターゲットを夏美に代えて、嫌がらせをしてやろうと思うようになったのだ。

 でも、夏美は正社員で社内では、人気者なのである。おいそれと派遣社員が近づけるような相手ではない。

 そこで同じ派遣会社で登録して働く山下を金で雇う。

 「ちょっといやがらせをしたい女がいるから、協力してくれない?大したことではないわよ。私の彼氏に付きまとって別れてくれないのよ。だから、ちょっと怖がらせるだけでいいから。」

 「何をすればいい?」

 「そうね、まずは夏美が住んでいるマンションをつきとめて頂戴。それから行動範囲と交友関係。」

 「ふーん。そんなことだけでいいのか?」

 「そうよ、簡単でしょ。楽なお仕事に1日1万円よ。」

 加藤夏美、それにしてもイイ女だ。かえでなんかとは比べ物にならない。いずれ仕事として終わったら、襲ってちょうだいしたい代物だぜ。山下はほくそ笑んで、この仕事を引き受けたことは正解だったと喜ぶ。

 その日から、会社帰りの夏美の後を尾け、ストーカーまがいのことをしても、夏美は全然怖がらない。夏美のマンションはオートロックだったけど、誰かが開けた時に、素知らぬ顔をして入れば、簡単に中へ侵入することができた。

 それにオートロックの数字ボタンは、押されるところが黒く汚れているから、すぐに手の動きから暗証番号はわかってしまう。

 試しに前の奴が入って行った後に、あの手の動きを再現してみたら、俺もすんなり自動ドアが開いたのである。

 加藤夏美は、マンション以外の近所に住む人間にも愛想よく挨拶をする感じのいい娘だった。だから、あからさまに夏美の後を尾けると近所の人間から通報される恐れがある、なるべくマンション前ではなく、会社から出てきたところを狙うようにしたのだ。

 でも夏美は男からの視線に慣れていて、いくら不躾にジロジロ見ても、何も感じないどころかかえって、自信?を持ってしまうタイプ。

 それで尾行することを一時、断念したのだが、かえでの彼氏が夏美のマンションに入っていく姿を見てから、また尾行を再開したのだ。

 小一時間ほどで、奴は出てきた。何やら怒っている様子、別れ話で揉めたか?次の日の夜、奴はまた、夏美と会って何やら話し込んでいるが、女のほうが今度は怒っていて、奴のほうが未練たらたらといった感じ。

 かえでの奴がしっかり男を繋ぎ留めないから、こういうことになるのだ。見ていると、別れて、振り返らずに双方、別々の方向へ帰って行く。どっちを尾けようかと思ったが、やっぱり柔らかそうなおっぱいがいい。

 それにしてもあのおっぱい、柔らかそうで触りたくなる。

 かえでの彼氏がまだ煮え切らないことを、かえでに報告すると、かえでは眼を釣り上げ鬼の形相になる。

 「あの女を犯して!うまくレイプできたら10万円あげるわ。」

 そんな犯罪行為は……、でもかねてからヤりたいと思っていた女を襲うだけで10万円はオイシイ。

 次の金曜日の夜、かえでは、ついに大吾から別れ話を切り出される。激昂するかえで

 「どうしても、元婚約者のことが忘れられない。彼女を愛しているのだ。わかってくれ。」

 「彼女さんは、あなたのことなどなんとも思っていないかもしれませんわよ。それでもいいの?自分が捨てた女が誰かほかの男の餌食になっているかもしれないのに?」

 「どういう意味だそれは?まさか、夏美に手出しを……?夏美は関係ない!彼女に手出しをするのは止めてくれ!」

 そこへどういうわけか、パパが来て

 「藤崎、携帯を出してくれ。まさかと思うが、娘と別れたいということは、俺を裏切るつもりではないだろうな?」

 藤崎大吾は言われた通り、島村部長に携帯を渡す。一通り、触って、その携帯を川に投げ入れた。

 「あ!何を!」

 「もう必要ないだろう。連れていけ。」

 藤崎大吾を車に乗せて、どこかへ走り去った。

 「パパ……。」

 「もうあの男のことは忘れろ、かえでにはもっといい男がいるさ。」

 そこへ山下から、連絡が入り、夏美を襲う機会を狙っていたら、会社の他の男性社員とラブホへしけこんだという。

 なんですって!なんで、あの女はそんなに次から次へとモテるのよ。それならマンションで帰ってきたところを襲うなんて、どうよ?

 山下とともに、夏美のマンションの部屋に入った。あらかじめ合いかぎを用意していたから、すんなり入れた。

 夏美の部屋は女性らしい飾り付けと整理整頓がしてあり、なかなかいいムード。ここに藤崎大吾が通っていたかと思うと、妙に腹が立つ。自分が捨てられた男のことなどもう忘れようと思っていたのに、藤崎と夏美の幸せそうな写真を見ていたら、妙にムカつく。

 まず、その写真立ての写真を粉々にしてやろうと思う。次に目をつけたところは、下着、ブラジャーあの女Fカップだなんて許せない。それも切り刻んでやろうとしたら、山下が何とも言えない憐れみの目で見てくるからやめる。

 さんざん夏美の部屋を荒らしてから、帰ることにしたのだ。まさか、パパが藤崎さんを殺したなんて想像もしなかったから。

 夏美の部屋を荒らしただけで、少しはすっとしたのだ。そして山下にレイプしてくれと頼んだことさえ、忘れてしまったのである。

 山下はイラついた先に自分が食べようとしていた女を横からかすめ取られたのだから。いくら、夏美の部屋を荒らしたとしても、あの女を抱けない。むしろ警戒されるだけだということが、かえでにはわからないのか!モテないブス女は、これだから困る。ついでにかえでで辛抱しようか?いやいや、まずはあの女を抱いて10万円を手にしてからだ。かえでなど抱いても金にならない。

 夏美が帰ったのは、次の日の朝、警察が来て騒然としている。夏美の部屋はブルーシートがかけられ、おいそれと近寄れない。

 山下もかえでも、そして夏美自身も知らなかったことだが、その時すでに藤崎大吾は他殺体で発見されていたのだ。

 同時期に元婚約者の部屋が荒らされたということで、事件の関連性があると判断されてしまったのだ。

 そんなことになっているとは知らない山下は、あれ以来帰ってこない夏美の行方を捜している。もうこうなれば、会社帰りを狙うしかない。

 やはりかえでが部屋を荒らしたことで、警戒されてしまったのだろう。バカなブス女ほど始末に悪いものはない。

 でも最近、あの夜のラブホの相手か?夏美には、べったり男が寄り添っている。うらやましい男だ。もう、夏美の味見をして夏美の男気取りなのだ。

 たまたまいい会社に勤めただけで、山下には手の届かないような幸せを手にしていることが許せない。

 こうなれば、夏美を拉致して、たっぷりと可愛がってやろう。場合によれば、どこかへ売り飛ばしてやったっていい。そして、あの男が嘆き悲しむ姿をとくと拝見させてもらおう。

 そして山下は、ある夜、家の近くの駐車場で鍵がさしっぱなしになっていた車を盗むことに成功したのだ。

 この車に夏美を乗せて、どこか遠い山の中でも行き、たっぷりと楽しませてもらおう。目撃者がいても、盗難車ならどこの誰かはわからないだろう。

 そして帰りに夏美の自宅マンション付近を通りがかると、なんと夏美が一人で歩いているところを見かけたのだ。これはもう千載一隅のチャンス!

 ヘッドライトを消し、気づかれないように夏美に近づく。夏美は荷物が重たいのか、右腕の荷物と左腕の荷物を交互に持ち替えながら、よたよたと歩いている。

 これなら簡単に埒ぐらいできるだろうと、その時は思ったのだ。しかし、交差点に差し掛かった時、たまたま誰もいなかったことから、車で夏美に近寄りすぎて、夏美と接触してしまったのだ。

ボン!

 音と衝撃の後、夏美のカラダがフロントガラスにぶつかってしまう。大きな胸がクッション代わりとなる。すぐに弾き飛び、地面に落ちる。

 夏美が持っていたであろう果物や野菜が当たりに飛び散っているのが見える。

 山下は、当初の夏美を拉致するという目的を忘れるほど、恐怖心でいっぱいになる。そして、夏美をその場に置き去りにしたまま、走り去ってしまうのである。

 その夜から毎晩、山下は、夏美がフロントガラスに張り付いて、自分のほうを見ながらニヤリと笑う夢を見続ける。

 メロンぐらいはあろうかと思われる二つの胸をフロントガラスに張り付けたまま、ニヤリと笑うのである。

 「ぎゃぁっー!」自分の悲鳴で何度も目が覚め、眠れない。こんなもの10万円では安すぎる!かえでに文句を言ってやろう。二度寝をして起きたら、夏美がひき逃げされ死亡したことがニュースで流れていたのだ。

 え?まさか、あんなことぐらいで死ぬのか?俺が殺してしまったのか?嘘だろ?これはかえでに文句を言う所の話ではなくなる、却って今までのギャラが出ない可能性がある。それどころか、「人殺しなんて、頼んでいない。」と言われるのがオチだろう。

 山下は悩みに悩んだ挙句、警察署へ出頭し、今までのいきさつを洗いざらい自供したのだ。島村かえでは、自分はそんなことを頼んでいないと言い張るが、山下は音声データを撮っていて、それが動かぬ証拠となる。

 他人の男を寝取ろうとしたツケは、やがて父の勤務先会社及び与党代議士への疑獄事件へと発展していく。
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