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8.マーガレット・ウエインスタイン
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朝練が終わって、部屋に戻ろうとしているとき、豪華な紋章付きの馬車が馬車止めに止まっていることに気づく。
フィップのほうをチラリと見ると嫌そうな顔をしながら、
「早速、厄介なオンナが来たぞ。俺がフォローするがしっかりやってくれ。」
フィリップファンの女性かしらね。
ファンは大切にしなきゃね。とも言っていられない。犯人かもしれないから。
フィリップが嫌そうに顔をしかめた理由がすぐにわかる。
私室に戻ろうとしているフィリップをその女性が呼び止めたのだ。
「フィードリッヒ王太子殿下、お久しゅうございます。」
「ん……ああ。」
フィリップは一瞥しただけで、そそくさと部屋へ入ろうとしているが、その女性はひろみの方に向き直り、
「まぁ、殿下ともあろう方がずいぶんみすぼらしい方をお連れになっていらっしゃること。」
「朝の鍛錬をしていたからな。この女性は俺の大事な女性だから、よろしく頼む。仲良くしてやってくれ。」
なおもその女性は、ひろみの頭のてっぺんからつま先までぶしつけな視線で追う。
「女性同士、お話でもしましょうよ。殿下いいでしょ?」
「ダメだ。何度も言わせるな、この女性は俺の恋人だ。これから湯あみを一緒にする。今日は何の用事できた?まさか侯爵令嬢ともあろう女性が俺の恋人を見に来たわけでもあるまい。」
「あら、今日は王妃様のお茶会に呼ばれて伺ったのですわ。それで巷の噂では、殿下に新しい方ができたとお聞きしまして、どんな女性かと思いまして拝見しに来ましたのよ。」
「こんな朝早くからご苦労なことだな。とにかく俺のハニーを汚すことは許さん。早々に帰ってくれ。」
「まぁ、学園の同級生だったものに、ずいぶん冷たくあしらわれるのですね殿下。」
「うるさいっ!マーガレット嬢など同級生だと思っておらぬわ!とっとと帰れ!衛兵、このマーガレット嬢をつまみ出せ!」
「まぁ!冷たいお言葉、わたくしとの婚約を断っておいて、どこの馬の骨ともわからぬような女を引き込むなど……恥を知りなさいっ。」
「マーガレット・ウエインスタイン、貴様と婚約した覚えはない。だいたい学園でも、出しゃばり女とあだ名を付けられていた女だということを忘れたのか?二度と俺の前に姿を見せるな!いいな!」
フィリップは、ひろみをエスコートした手を緩めずに部屋の中に入り、荒々しくひろみを抱きしめる。
殿下の汗のにおいがかすめる。
「悪かったな。大きな声を出してしまって。あのマーガレットと言う女も気を付けろよ。学園で夏休みに入った頃、俺の婚約者だった令嬢が領地へ帰る途中盗賊に襲われたんだが、その婚約者は俺にすまないと言い残し自害してしまったのだ。その婚約者とマーガレットは親友だったにもかかわらず、その婚約者の後釜をすぐ狙いに来た図々しい女なのだ。」
ひろみは殿下の悲しみや悔しさを少し感じながら、殿下の背中に手を回し優しく慰める。
「その御婚約者様のことを愛していらしたのですね。」
「いや、そんなんじゃない。小さい時から知っている幼馴染だった。その婚約者もその前の婚約者もその前も、最初の婚約者もすべて幼馴染で、政略で婚約しただけの関係だったんだ。王家に生まれたからには、早々に婚約して後継ぎを作らなければならない運命がある。好きな女性と恋愛して、結婚など無理なんだ。最初から……、ありがとう。とんだ茶番に付き合わせてしまったな。舞踏会が済めば、キャシーを元の世界に戻れるように精の山へ送っていくよ。」
「フィリップ泣かないで。ありがとう。」
「そうだ。ドレスを作らせよう。俺の恋人に見えるように、仕立て屋を呼ぼう。最後にそれぐらいのお礼はさせてくれよ。」
フィップのほうをチラリと見ると嫌そうな顔をしながら、
「早速、厄介なオンナが来たぞ。俺がフォローするがしっかりやってくれ。」
フィリップファンの女性かしらね。
ファンは大切にしなきゃね。とも言っていられない。犯人かもしれないから。
フィリップが嫌そうに顔をしかめた理由がすぐにわかる。
私室に戻ろうとしているフィリップをその女性が呼び止めたのだ。
「フィードリッヒ王太子殿下、お久しゅうございます。」
「ん……ああ。」
フィリップは一瞥しただけで、そそくさと部屋へ入ろうとしているが、その女性はひろみの方に向き直り、
「まぁ、殿下ともあろう方がずいぶんみすぼらしい方をお連れになっていらっしゃること。」
「朝の鍛錬をしていたからな。この女性は俺の大事な女性だから、よろしく頼む。仲良くしてやってくれ。」
なおもその女性は、ひろみの頭のてっぺんからつま先までぶしつけな視線で追う。
「女性同士、お話でもしましょうよ。殿下いいでしょ?」
「ダメだ。何度も言わせるな、この女性は俺の恋人だ。これから湯あみを一緒にする。今日は何の用事できた?まさか侯爵令嬢ともあろう女性が俺の恋人を見に来たわけでもあるまい。」
「あら、今日は王妃様のお茶会に呼ばれて伺ったのですわ。それで巷の噂では、殿下に新しい方ができたとお聞きしまして、どんな女性かと思いまして拝見しに来ましたのよ。」
「こんな朝早くからご苦労なことだな。とにかく俺のハニーを汚すことは許さん。早々に帰ってくれ。」
「まぁ、学園の同級生だったものに、ずいぶん冷たくあしらわれるのですね殿下。」
「うるさいっ!マーガレット嬢など同級生だと思っておらぬわ!とっとと帰れ!衛兵、このマーガレット嬢をつまみ出せ!」
「まぁ!冷たいお言葉、わたくしとの婚約を断っておいて、どこの馬の骨ともわからぬような女を引き込むなど……恥を知りなさいっ。」
「マーガレット・ウエインスタイン、貴様と婚約した覚えはない。だいたい学園でも、出しゃばり女とあだ名を付けられていた女だということを忘れたのか?二度と俺の前に姿を見せるな!いいな!」
フィリップは、ひろみをエスコートした手を緩めずに部屋の中に入り、荒々しくひろみを抱きしめる。
殿下の汗のにおいがかすめる。
「悪かったな。大きな声を出してしまって。あのマーガレットと言う女も気を付けろよ。学園で夏休みに入った頃、俺の婚約者だった令嬢が領地へ帰る途中盗賊に襲われたんだが、その婚約者は俺にすまないと言い残し自害してしまったのだ。その婚約者とマーガレットは親友だったにもかかわらず、その婚約者の後釜をすぐ狙いに来た図々しい女なのだ。」
ひろみは殿下の悲しみや悔しさを少し感じながら、殿下の背中に手を回し優しく慰める。
「その御婚約者様のことを愛していらしたのですね。」
「いや、そんなんじゃない。小さい時から知っている幼馴染だった。その婚約者もその前の婚約者もその前も、最初の婚約者もすべて幼馴染で、政略で婚約しただけの関係だったんだ。王家に生まれたからには、早々に婚約して後継ぎを作らなければならない運命がある。好きな女性と恋愛して、結婚など無理なんだ。最初から……、ありがとう。とんだ茶番に付き合わせてしまったな。舞踏会が済めば、キャシーを元の世界に戻れるように精の山へ送っていくよ。」
「フィリップ泣かないで。ありがとう。」
「そうだ。ドレスを作らせよう。俺の恋人に見えるように、仕立て屋を呼ぼう。最後にそれぐらいのお礼はさせてくれよ。」
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