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番外編
2.既視感
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それから数度となく、学園内の逢瀬を愉しんだ後、マクシミリアンは、思い切って、ミッシェルを自宅に連れ帰ることにした。
「ウチにある蔵書は、こんなものではないよ。もっと、たくさんあるんだ。良かったら、今度、ウチへ来ない?」
「わぁ、いいの?ありがとう。」
「いいよ。友達だろ?」
ミッシェルをシャルパンティア家の馬車に乗せ、自宅へ帰ると珍しく使用人全員が、玄関付近くに並んでいるのが見える。
「ん?……父が、帰ってきたところと重なったみたいだ。」
「お父様は何をしていらっしゃる方なのですか?」
「宰相だよ。」
「あら、偶然ですわね。わたくしの父も宰相をしていますの。」
玄関に到着したとき、マクシミリアンの父と鉢合わせする格好になってしまって、少し戸惑いながらも挨拶をする。
マクシミリアン父は、息子が初めて連れてきたガールフレンドに目を細め、歓迎するが、どうも既視感があるらしい。
「マクシミリアンの父です。お嬢様とは以前、どこかでお会いしたような気がするのですが?気のせいでしょうか?」
その言葉にマクシミリアン様は、ククク。とお笑いになる。
「親父、廊下の肖像画のせいだよ。」
「?」
初代リングのご夫妻、マクシミリアンとミッシェル夫婦の肖像画が廊下に掲げられている。シャルパンティア家始まって以来の子だくさん夫婦で、その数なんと25人!
絶倫マクシミリアンの異名を持つ、ご先祖様の夫人とそっくりなのだ。
「ああ。本当だ。本当に、そっくり瓜二つとは、まさにこのことを言う。という典型だな。」
「うわっ。世の中には自分とそっくりな人が3人はいると、聞いておりますが……、でも、ご先祖様であれば、カウントされないかもしれませんわね。でも、この肖像画、我が家にも似たようなものがございましてよ?」
「へっ!?よりにもよって、そんな偶然……、もしや、これは必然かもしれないね。」
「出会うべきして、出会ったとか?うふふ。まさかね。」
応接間で、一緒にお茶を飲み、その後、図書館へ行く。
今度は、ミッシェルが図書館に入った途端、既視感を感じる。
「ここ、前に来たことがあるような気がする。」
「えっ!?本当か?」
「確か、この辺に……背表紙が綺麗な本があって、……っ……あったわ。見つけた。」
「何?これ?ちょっと、親父を呼んでくるね。」
マクシミリアンは、執事を通して、宰相を呼びに行く。
バタバタと廊下の走る音が聞こえ、ミッシェルがその本をシャルパンティア家の当主に見せるように持つ。
「前にここに来た既視感があり、本を見つけました。肖像画よりもさらに、ご先祖の遺言本だったような記憶があります。」
「へー!遺言本か……?そういえば、伝承本にそんな記述を観たことがある。昔、もう200年以上にもなるが、シャルパンティア家は、魔法師団長をしていた家でもあるのだよ。その時の当主が亡くなる前に埋蔵金か宝の山をこの屋敷内に隠したという話が載っていたのだが、誰も、その遺言、本?を見つけることができなかったと聞いておる。それをミッシェル嬢が見つけてくれるとは、これもご先祖様のお導きかもしれないな。」
実は、ミッシェルは前世の記憶持ちで、その記憶は乙女ゲーム云々とは、何ら関係がなく、前世の名前は忘れてしまったが、宰相の長男と結婚してから、聖女に覚醒したというものであった。
「では、これより地下室の扉を開けます。心の準備は、よろしいでしょうか?」
「……。」
ゴクリと生唾を飲み込む音だけが聞こえる。
ミッシェルは、背表紙が綺麗な本の1ページを開き、そこに書かれてある古代語をスラスラと詠み始める。
突如、ギギギーという音とともに、図書室の一角に地下室へと通じる階段が現れ始めたのである。
「ウチにある蔵書は、こんなものではないよ。もっと、たくさんあるんだ。良かったら、今度、ウチへ来ない?」
「わぁ、いいの?ありがとう。」
「いいよ。友達だろ?」
ミッシェルをシャルパンティア家の馬車に乗せ、自宅へ帰ると珍しく使用人全員が、玄関付近くに並んでいるのが見える。
「ん?……父が、帰ってきたところと重なったみたいだ。」
「お父様は何をしていらっしゃる方なのですか?」
「宰相だよ。」
「あら、偶然ですわね。わたくしの父も宰相をしていますの。」
玄関に到着したとき、マクシミリアンの父と鉢合わせする格好になってしまって、少し戸惑いながらも挨拶をする。
マクシミリアン父は、息子が初めて連れてきたガールフレンドに目を細め、歓迎するが、どうも既視感があるらしい。
「マクシミリアンの父です。お嬢様とは以前、どこかでお会いしたような気がするのですが?気のせいでしょうか?」
その言葉にマクシミリアン様は、ククク。とお笑いになる。
「親父、廊下の肖像画のせいだよ。」
「?」
初代リングのご夫妻、マクシミリアンとミッシェル夫婦の肖像画が廊下に掲げられている。シャルパンティア家始まって以来の子だくさん夫婦で、その数なんと25人!
絶倫マクシミリアンの異名を持つ、ご先祖様の夫人とそっくりなのだ。
「ああ。本当だ。本当に、そっくり瓜二つとは、まさにこのことを言う。という典型だな。」
「うわっ。世の中には自分とそっくりな人が3人はいると、聞いておりますが……、でも、ご先祖様であれば、カウントされないかもしれませんわね。でも、この肖像画、我が家にも似たようなものがございましてよ?」
「へっ!?よりにもよって、そんな偶然……、もしや、これは必然かもしれないね。」
「出会うべきして、出会ったとか?うふふ。まさかね。」
応接間で、一緒にお茶を飲み、その後、図書館へ行く。
今度は、ミッシェルが図書館に入った途端、既視感を感じる。
「ここ、前に来たことがあるような気がする。」
「えっ!?本当か?」
「確か、この辺に……背表紙が綺麗な本があって、……っ……あったわ。見つけた。」
「何?これ?ちょっと、親父を呼んでくるね。」
マクシミリアンは、執事を通して、宰相を呼びに行く。
バタバタと廊下の走る音が聞こえ、ミッシェルがその本をシャルパンティア家の当主に見せるように持つ。
「前にここに来た既視感があり、本を見つけました。肖像画よりもさらに、ご先祖の遺言本だったような記憶があります。」
「へー!遺言本か……?そういえば、伝承本にそんな記述を観たことがある。昔、もう200年以上にもなるが、シャルパンティア家は、魔法師団長をしていた家でもあるのだよ。その時の当主が亡くなる前に埋蔵金か宝の山をこの屋敷内に隠したという話が載っていたのだが、誰も、その遺言、本?を見つけることができなかったと聞いておる。それをミッシェル嬢が見つけてくれるとは、これもご先祖様のお導きかもしれないな。」
実は、ミッシェルは前世の記憶持ちで、その記憶は乙女ゲーム云々とは、何ら関係がなく、前世の名前は忘れてしまったが、宰相の長男と結婚してから、聖女に覚醒したというものであった。
「では、これより地下室の扉を開けます。心の準備は、よろしいでしょうか?」
「……。」
ゴクリと生唾を飲み込む音だけが聞こえる。
ミッシェルは、背表紙が綺麗な本の1ページを開き、そこに書かれてある古代語をスラスラと詠み始める。
突如、ギギギーという音とともに、図書室の一角に地下室へと通じる階段が現れ始めたのである。
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