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26.マリアンヌ視点1

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 その頃マリアンヌ・カイロ男爵令嬢は、前世、遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したものの、その世界と全く異なる世界であることに驚きを隠せない。

 ヒロインの名前はリリアーヌ・ドイルで男爵の庶子として生まれるが、男爵のお手付きとなったリリアーヌの母が亡くなったため、男爵家に迎え入れられる。

 そこで王立魔法学園に入学が認められ、転入生として、3年生から学園に通い、王太子殿下並びに攻略対象者を次々攻略に成功して、最後はクリストファー王太子殿下と結ばれ、王太子の婚約者アイリスは、断罪される、という筋書きがあるにも関わらず、ヒロインの名前からして違う。

 どうなってるの?と思ったわ。

 でも、その理由はすぐに分かった。先に転生したヒロインが途中で脱落してしまったので、同じ時間線に、2人のヒロインが難しく、違う名前で設定を少しばかり変えて、挑めるようになっていることを理解した。

 したがって、今回の攻略対象者の1位は、マリアンヌ的にマクシミリアン様が一番かっこいいので、マクシミリアン様を攻略することにしたのだ。

 だって、クリストファー殿下は、先のヒロインがドジったせいで、廃嫡になってしまったらしいから、今度は、マクシミリアンを攻略してやる!と意気込んでいたのに、前世、マクシミリアンには、婚約者がいない設定だったはずが、どういうわけか、これもたぶん先のヒロインがドジったせいなのかもしれないけど、今回は、デブの婚約者がいる。

 実際に会ったら、さすがモブだけのことはある。おっぱいが大きい以外は何の取り柄もない、ただのブスだったわ。

 でも、どういうわけか、クリストファー以外の攻略対象者は、みんなデブに夢中になっているのよね。

 あんなデブブスのどこがいいのか、わからない。

 とりあえず、マリアンヌにとっては、強敵アイリスがいない分、デブブスがいるだけなので、今回は簡単にクリアできると思ったのよ。

 ところが意外にも、デブブスはしぶとい。学園長まで、味方につけて、マリアンヌを攻撃してくるから、陰険だ。

 まあ、前世から考えてもデブブスは、掃いて捨てるほどいたから、競争が激しいのはわかる。

 それでも、今から本格的に巻き返しを図るつもりでいる。残り3人を攻略してもいいけど、銀髪銀眼のマクシミリアンほどの、イケメンはいない。

 やっぱり男はイケメンでなくっちゃ。ブサメンなら、生まれ絵来る子供がかわいそうってものよ。

 もう、勉強を教えてくれと言う手は、通用しないみたいだから、別の手を考えるわ。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 放課後、誰もいない教室。

 マリアンヌが机の中から教科書を出し、ビリビリに破りながら、廊下のゴミ捨て場に捨てに行く。

 「何をなさっているのです!やめてください!やめて。ミッシェル様ぁ!ひどいですわっ。」

 泣き真似をする。

 野次馬がゾロゾロ集まってくるのを見計らい、また大げさに泣くふりをする。

 「ミッシェル様って、誰よ?」

 「さあ?聞いたこともない名前ね。」

 「3年のマクシミリアン様の婚約者らしいわよ?」

 「え?結婚間近で今は、休学していらっしゃるのに、どうして?わざわざマリアンヌの教科書を破りに?」

 「それも変な話ね。とりあえず学園長に知らせておきましょう。」

 

 中庭の噴水前で

 誰も近くにいないことを見計らって

 「きゃぁっー!」鼻をつまんでドボンと飛び込む。

 誰も、助けに来てくれないから、もう一度やる。

 「きゃぁっー!」

 また、誰も助けに来てくれないので、再度やる。

 「きゃぁっー!」

 「……!……どうしましたか?」

 「ゲホッゲホッ。ミッシェル様に突き落とされました。」

 「はぁ?」

 「ミッシェル様って、3年のミッシェル様のことか?彼女がそんなことするはずがないだろ?デタラメを言うな!」

 助けてくれた男子生徒は、ミッシェルのクラスメイトで、ここしばらくミッシェルが休学していることを知っている。

 「このことは、一応、学園長に報告しとくから。」
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