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1.婚約破棄
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そこはスクリーン王立魔法学園のカフェでのこと。お昼休みに入り、大勢の生徒が利用しているさなか、
「侯爵令嬢ミッシェル・アインシュタイン、貴様との婚約は今をもって破棄させてもらうこととする。」
高らかに宣言されるのは、ミッシェルの婚約者でダニエル・ブラウン侯爵令息なのだが、親同士が友人で幼い時にいわば政略で婚約者となった。二人の間は、ずっと良好で、つい昨日まで愛を囁いてくださっていたのに、一日で心変わりなんて、早すぎる。
一応、理由を聞いてみたら、今日、転校してきたばかりの男爵令嬢リリアーヌ様に一目ぼれしてしまったというから、驚く。何も婚約破棄までしなくても、リリアーヌ様が手に入ってからでも良いと思うのだけど?と思ったことを口に出してみたら、
「そのような不誠実なことは考えられない!私は、リリアーヌ嬢に一途にこの思いを伝えたいだけなのだ。」
はぁ。どうぞ、ご勝手に。とは言わない。悲しくて、辛くて、知らず知らずのうちに涙が溢れる。
「泣くな。すまない。」
謝るぐらいなら、婚約破棄を撤回してほしい。そう思いながら、ミッシェルは意識を手放した。
夢の中で、前世遊んでいた乙女ゲームの世界であることを思い出す。
ヒロインの名前がリリアーヌ・ドイル男爵令嬢、
悪役令嬢がアイリス・ユーラシア公爵令嬢で、
攻略対象者はクリストファー王太子殿下を筆頭に、
宰相閣下の令息のマクシミリアン・パルシャンティア、
筆頭公爵家令息アラミス・ハプルブルグ、
騎士団長令息のカール・ブルゴーニョ、
魔法師団長の令息アルブレヒト・カルデラの5人で形成される。
つまりそれ以外の登場人物はモブで、セリフすらないものばかり。
はい。ミッシェルは見事にモブとして、転生してしまいました。
ダニエル・ブラウンも、当然モブです。モブがいくら頑張ったところで、ヒロインに思いなど届くはずもなく、鼻もひっかけられないという現実がある。
ミッシェルは、夢の中であるにもかかわらず、完全に諦めの境地に至る。
でも、どうせ転生したということが分かったのだから、せめて、女性としての幸せを咲かせたい。と思い、夢の中で一心不乱に女神さまに祈りを捧げる。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「ん……。」
学園内のカフェで倒れたはずなのに、いつの間にかアインシュタイン侯爵邸の自分の部屋で寝かされている。
「あ!お嬢様、気づかれましたか?」
「旦那様―。お嬢様がお目覚めになりましたわ。」
バタバタと廊下を走る音がうるさい。なんだかカラダが気怠い。気のせいだろうか?
「ミッシェル!大丈夫か?」
お父様は、ミッシェルの額に自分の額と合わせられる。
「熱は下がったようだな。」
「あの……?」
「ダニエルは、ブラウン家から追い出されたよ。こんなに素晴らしい婚約者をよそに男爵令嬢などに告白しおって、ブラウン侯爵はカンカンに激怒され、廃嫡され母方の実家に身を寄せているそうだ。だから何も案ずることはない。」
ああ、やっぱりね。モブがどう頑張ったって、ヒロインがYesというはずがないもの。これからヒロインと悪役令嬢のバトルが始まることを黙って、指をくわえて見ていなければならない。
なんと、高熱を出し、3日間も学園を休んでしまっていたらしい。
あのカフェから、王太子殿下がお姫様抱っこをして、馬車に乗せ、その後、ベッドまで運んでくださったらしい。
いくら側近の取り巻き連中が、王太子の代わりにミッシェルを運ぼうとしても、王太子は赤い顔をしながら、決して、ミッシェルを抱くことを放棄しなかったことが、後々語り草になる。
王太子殿下が、たまたまあのカフェにいらっしゃったことは、ミッシェルもうっすら記憶の中にあるが、生徒会長でもある王太子殿下が責任感を発揮して、運んでくださったのに過ぎないと思っていたのだ。
その高熱を出しているミッシェルをほったらかしにして、元婚約者のダニエルは、さっさと男爵令嬢のリリアーヌのところへ行き、愛の告白をしたらしいが、あえなく失恋。
当然ですとも、元婚約者の介抱もせず、よその令嬢のところへ行くような無神経モブが、ヒロインが可憐で健気であったとしても、受け入れるはずがない。
「侯爵令嬢ミッシェル・アインシュタイン、貴様との婚約は今をもって破棄させてもらうこととする。」
高らかに宣言されるのは、ミッシェルの婚約者でダニエル・ブラウン侯爵令息なのだが、親同士が友人で幼い時にいわば政略で婚約者となった。二人の間は、ずっと良好で、つい昨日まで愛を囁いてくださっていたのに、一日で心変わりなんて、早すぎる。
一応、理由を聞いてみたら、今日、転校してきたばかりの男爵令嬢リリアーヌ様に一目ぼれしてしまったというから、驚く。何も婚約破棄までしなくても、リリアーヌ様が手に入ってからでも良いと思うのだけど?と思ったことを口に出してみたら、
「そのような不誠実なことは考えられない!私は、リリアーヌ嬢に一途にこの思いを伝えたいだけなのだ。」
はぁ。どうぞ、ご勝手に。とは言わない。悲しくて、辛くて、知らず知らずのうちに涙が溢れる。
「泣くな。すまない。」
謝るぐらいなら、婚約破棄を撤回してほしい。そう思いながら、ミッシェルは意識を手放した。
夢の中で、前世遊んでいた乙女ゲームの世界であることを思い出す。
ヒロインの名前がリリアーヌ・ドイル男爵令嬢、
悪役令嬢がアイリス・ユーラシア公爵令嬢で、
攻略対象者はクリストファー王太子殿下を筆頭に、
宰相閣下の令息のマクシミリアン・パルシャンティア、
筆頭公爵家令息アラミス・ハプルブルグ、
騎士団長令息のカール・ブルゴーニョ、
魔法師団長の令息アルブレヒト・カルデラの5人で形成される。
つまりそれ以外の登場人物はモブで、セリフすらないものばかり。
はい。ミッシェルは見事にモブとして、転生してしまいました。
ダニエル・ブラウンも、当然モブです。モブがいくら頑張ったところで、ヒロインに思いなど届くはずもなく、鼻もひっかけられないという現実がある。
ミッシェルは、夢の中であるにもかかわらず、完全に諦めの境地に至る。
でも、どうせ転生したということが分かったのだから、せめて、女性としての幸せを咲かせたい。と思い、夢の中で一心不乱に女神さまに祈りを捧げる。
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「ん……。」
学園内のカフェで倒れたはずなのに、いつの間にかアインシュタイン侯爵邸の自分の部屋で寝かされている。
「あ!お嬢様、気づかれましたか?」
「旦那様―。お嬢様がお目覚めになりましたわ。」
バタバタと廊下を走る音がうるさい。なんだかカラダが気怠い。気のせいだろうか?
「ミッシェル!大丈夫か?」
お父様は、ミッシェルの額に自分の額と合わせられる。
「熱は下がったようだな。」
「あの……?」
「ダニエルは、ブラウン家から追い出されたよ。こんなに素晴らしい婚約者をよそに男爵令嬢などに告白しおって、ブラウン侯爵はカンカンに激怒され、廃嫡され母方の実家に身を寄せているそうだ。だから何も案ずることはない。」
ああ、やっぱりね。モブがどう頑張ったって、ヒロインがYesというはずがないもの。これからヒロインと悪役令嬢のバトルが始まることを黙って、指をくわえて見ていなければならない。
なんと、高熱を出し、3日間も学園を休んでしまっていたらしい。
あのカフェから、王太子殿下がお姫様抱っこをして、馬車に乗せ、その後、ベッドまで運んでくださったらしい。
いくら側近の取り巻き連中が、王太子の代わりにミッシェルを運ぼうとしても、王太子は赤い顔をしながら、決して、ミッシェルを抱くことを放棄しなかったことが、後々語り草になる。
王太子殿下が、たまたまあのカフェにいらっしゃったことは、ミッシェルもうっすら記憶の中にあるが、生徒会長でもある王太子殿下が責任感を発揮して、運んでくださったのに過ぎないと思っていたのだ。
その高熱を出しているミッシェルをほったらかしにして、元婚約者のダニエルは、さっさと男爵令嬢のリリアーヌのところへ行き、愛の告白をしたらしいが、あえなく失恋。
当然ですとも、元婚約者の介抱もせず、よその令嬢のところへ行くような無神経モブが、ヒロインが可憐で健気であったとしても、受け入れるはずがない。
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