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国王陛下生誕祝賀パーティが王宮大広間にて盛大に開かれた夜、出席の貴族たちは思い思いに着飾り、華やかないでたちで歓談を楽しんでいる。真っ赤な絨毯、豪華なシャンデリアダンスを楽しむ貴族の姿もある。
そこでひときわ大声を出すバカ王太子アルフレッド・ワグナー、自分の婚約者の名前がわからないのだ。男爵令嬢リリアーヌ・ドイルをあちこち連れまわし、かろうじて覚えている(?)幼い時の顔を手掛かりに探しまくっているバカ。
どうやら、婚約破棄をしたいのだろうが、お目当ての令嬢になかなか出くわさない。名前がわからないから、手掛かりすらない状態である。
「そうだ。髪の色は、確かブロンドだったような気がする。瞳の色は、すみれ色だったように?記憶しているから、この令嬢は違うな。」
ぶつぶつボヤキながら、歩き回り疲れ、飲み物を取ろうとしたとき、偶然、金髪すみれ色の瞳の令嬢を発見!
「おい!お前!名前はなんという?」
「わたくしですか?アルフレッド王太子様ともあろう方が、貴族の名前も覚えていらっしゃらないのですか?」
「その発言は、不敬である!本来なら、ひっ捕らえるところだが、今回ばかりは大目に見てやる!名前を名乗れ!」
「ナタリー・ガーソンでございます。」
「そうか、ナタリー・ガーソン嬢の爵位は?」
「侯爵家にございます。」
「侯爵令嬢ナタリー・ガーソン!貴様との婚約は、今宵破棄するものとする!」
「は?わたくし、爵位が侯爵と申しましたが、令嬢ではございませんわよ。令嬢と仰ってくださって光栄でございます。もう結婚しておりますし、孫もおりますのに。おほほ。お世辞でもうれしゅうございますわ。おほほ。」
令嬢とは、程遠いオバサンを婚約者と間違えてしまったバカ。うろたえながら、
「では、聞くがガーソン令夫人、そちらに年頃の娘がおるか?」
「未婚の?という意味でございますか?いません。つい先日、片付いたばかりです。孫が生まれましてね。可愛くて、やんちゃで……。」
オバサンの話は長い、そうそうに立ち去るアルフレッド。
次に見つけた金髪すみれ色の瞳、年齢もそこそこ若い。
「そのほう、名前は何と申す?爵位は?」
「アラン・ヘップバーン、子爵でございます。」
「うむ。子爵では、婚約者殿ではないな。下がってよい。」
アランは男性なのに、声を掛けられ驚いている。周囲の貴族から、ほとんどあきれられて失笑されている状態なのだが、アルフレッドは全く気付かずにいる。
次に金髪、すみれ色の瞳は女性だった。それも若い女性で、今度こそと意気込み
「そのほう、名前と爵位は?」
「あら、お兄ちゃん!どうしたの?」
妹のジュディだった。さっきから、あちこちで声をかけまくっていることから気まずい、父上や母上に告げ口されたら困る。
「ひょっとして?お兄ちゃん、お嫁さんの名前もわからなくて、そこのお姉ちゃんをつれて歩いているの?」
「ばか、なんてこと言うんだ。そんなわけないだろう?」
「そうかなぁ。そうしか見えないんだけどなぁ。あっ!お嫁さんいたよ。」
「え?どこどこ?」
「ほら、あそこ!」
指をさされても、名前も容姿も見当がつかないから、不審者のように挙動不審である。
そこへ国王陛下、王妃様登場され、一部始終が報告された。王妃様は、扇で口元を隠されているが、明らかに怒っていらっしゃるご様子。
「お兄ちゃん、お嫁さんになる人の名前も爵位も知らないんだよ。わたくしとお嫁さんを間違えて聞いてんのよ。」
「うるさい!黙れ、ばか。」
「さっきなんてね。ガーソン夫人に婚約破棄する!と言って、その後、年頃の娘さんはいますか?と聞いて、ヘップバーン子爵に名前と爵位聞いて、子爵では婚約者になれない、とか男の人にまで、聞いてんのよ。あ!痛い。お兄ちゃんにたたかれた。わーん!」
あまりの羞恥でつい、ポカリとしてしまう。
その後、アルフレッドは、別室に連れていかれ、リリアーヌはお引き取りをといわれ、渋々帰る。
「で、婚約者の名前もわからず、恥をまき散らしてどうするつもりだったのですか?」
「さっき、連れていたリリアーヌと結婚したいと思ってね。」
「ダメです。あんな尻軽女とは、絶対ダメです。」
「どうして、リリアーヌが尻軽とわかるんだよ?」
「お尻のカタチでわかるのです。あれは、男慣れしているお尻です。淑女のヒップラインとは、明らかに違う。」
どこがどう違うのか、アルフレッドには、まったくわからないが、これ以上口を開くと怒られるから口を噤んだ。
しばらくすると、リリアーヌがやってきて、子供を孕んだと訴えられ、身に覚えがあるアルフレッドは狼狽え、王妃に相談すると、リリアーヌの身辺調査が行われ、アルフレッドの子ではない可能性が高いことがわかった。避妊薬を使用しているのに、子供ができるわけがないのだ。あの後、リリアーヌとは、一切の連絡を絶ち、約半年後、リリアーヌは子を産んだが、やはり、アルフレッドの子ではなかった。明らかに肌の色も髪の色も違い過ぎた。この騒動が起こってから、アルフレッドに居場所はなくなり、廃嫡。
「もう、女など信用しない!俺は決めた。冒険者になる!」
勢いで、城を飛び出したアルフレッドは、そのまま冒険者ギルドに向かうのであった。
そこでひときわ大声を出すバカ王太子アルフレッド・ワグナー、自分の婚約者の名前がわからないのだ。男爵令嬢リリアーヌ・ドイルをあちこち連れまわし、かろうじて覚えている(?)幼い時の顔を手掛かりに探しまくっているバカ。
どうやら、婚約破棄をしたいのだろうが、お目当ての令嬢になかなか出くわさない。名前がわからないから、手掛かりすらない状態である。
「そうだ。髪の色は、確かブロンドだったような気がする。瞳の色は、すみれ色だったように?記憶しているから、この令嬢は違うな。」
ぶつぶつボヤキながら、歩き回り疲れ、飲み物を取ろうとしたとき、偶然、金髪すみれ色の瞳の令嬢を発見!
「おい!お前!名前はなんという?」
「わたくしですか?アルフレッド王太子様ともあろう方が、貴族の名前も覚えていらっしゃらないのですか?」
「その発言は、不敬である!本来なら、ひっ捕らえるところだが、今回ばかりは大目に見てやる!名前を名乗れ!」
「ナタリー・ガーソンでございます。」
「そうか、ナタリー・ガーソン嬢の爵位は?」
「侯爵家にございます。」
「侯爵令嬢ナタリー・ガーソン!貴様との婚約は、今宵破棄するものとする!」
「は?わたくし、爵位が侯爵と申しましたが、令嬢ではございませんわよ。令嬢と仰ってくださって光栄でございます。もう結婚しておりますし、孫もおりますのに。おほほ。お世辞でもうれしゅうございますわ。おほほ。」
令嬢とは、程遠いオバサンを婚約者と間違えてしまったバカ。うろたえながら、
「では、聞くがガーソン令夫人、そちらに年頃の娘がおるか?」
「未婚の?という意味でございますか?いません。つい先日、片付いたばかりです。孫が生まれましてね。可愛くて、やんちゃで……。」
オバサンの話は長い、そうそうに立ち去るアルフレッド。
次に見つけた金髪すみれ色の瞳、年齢もそこそこ若い。
「そのほう、名前は何と申す?爵位は?」
「アラン・ヘップバーン、子爵でございます。」
「うむ。子爵では、婚約者殿ではないな。下がってよい。」
アランは男性なのに、声を掛けられ驚いている。周囲の貴族から、ほとんどあきれられて失笑されている状態なのだが、アルフレッドは全く気付かずにいる。
次に金髪、すみれ色の瞳は女性だった。それも若い女性で、今度こそと意気込み
「そのほう、名前と爵位は?」
「あら、お兄ちゃん!どうしたの?」
妹のジュディだった。さっきから、あちこちで声をかけまくっていることから気まずい、父上や母上に告げ口されたら困る。
「ひょっとして?お兄ちゃん、お嫁さんの名前もわからなくて、そこのお姉ちゃんをつれて歩いているの?」
「ばか、なんてこと言うんだ。そんなわけないだろう?」
「そうかなぁ。そうしか見えないんだけどなぁ。あっ!お嫁さんいたよ。」
「え?どこどこ?」
「ほら、あそこ!」
指をさされても、名前も容姿も見当がつかないから、不審者のように挙動不審である。
そこへ国王陛下、王妃様登場され、一部始終が報告された。王妃様は、扇で口元を隠されているが、明らかに怒っていらっしゃるご様子。
「お兄ちゃん、お嫁さんになる人の名前も爵位も知らないんだよ。わたくしとお嫁さんを間違えて聞いてんのよ。」
「うるさい!黙れ、ばか。」
「さっきなんてね。ガーソン夫人に婚約破棄する!と言って、その後、年頃の娘さんはいますか?と聞いて、ヘップバーン子爵に名前と爵位聞いて、子爵では婚約者になれない、とか男の人にまで、聞いてんのよ。あ!痛い。お兄ちゃんにたたかれた。わーん!」
あまりの羞恥でつい、ポカリとしてしまう。
その後、アルフレッドは、別室に連れていかれ、リリアーヌはお引き取りをといわれ、渋々帰る。
「で、婚約者の名前もわからず、恥をまき散らしてどうするつもりだったのですか?」
「さっき、連れていたリリアーヌと結婚したいと思ってね。」
「ダメです。あんな尻軽女とは、絶対ダメです。」
「どうして、リリアーヌが尻軽とわかるんだよ?」
「お尻のカタチでわかるのです。あれは、男慣れしているお尻です。淑女のヒップラインとは、明らかに違う。」
どこがどう違うのか、アルフレッドには、まったくわからないが、これ以上口を開くと怒られるから口を噤んだ。
しばらくすると、リリアーヌがやってきて、子供を孕んだと訴えられ、身に覚えがあるアルフレッドは狼狽え、王妃に相談すると、リリアーヌの身辺調査が行われ、アルフレッドの子ではない可能性が高いことがわかった。避妊薬を使用しているのに、子供ができるわけがないのだ。あの後、リリアーヌとは、一切の連絡を絶ち、約半年後、リリアーヌは子を産んだが、やはり、アルフレッドの子ではなかった。明らかに肌の色も髪の色も違い過ぎた。この騒動が起こってから、アルフレッドに居場所はなくなり、廃嫡。
「もう、女など信用しない!俺は決めた。冒険者になる!」
勢いで、城を飛び出したアルフレッドは、そのまま冒険者ギルドに向かうのであった。
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