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2 から揚げ定食、とんかつ定食

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 今朝のnews paper の記事、王都に放火魔が出現!いやぁねぇ。

 仕込みをしているときに、明らかに昨夜の焼死被害者と思われる人が来たので、たぶん喉が渇いているだろうと、水とかき氷を出したら、喜んで消えていく。

 よかった。いつまでも居座られては困るからね。さて、今日はから揚げを作ることにしよう。ご飯と味噌汁でから揚げ定食と洒落こもう。ついでに青いものが欲しいから、ほうれん草のおひたしを作る。もう、ほうれん草はトウがたってしまって、堅いものしかないので冷凍ものを使う。

 小麦粉を使いますか?小麦粉を使うものがから揚げ、片栗粉を使うものは、白扇揚げとなぜか称します。なぜでしょう?

 鶏の胸肉を一口大に切ります。今日は、小麦粉が出ているので、ムニエルも併せて作ることにしましょう。白身魚で作りますが、何がいいでしょうか?鱈、いわし、さば?むつ?鰆?鱈は柔らかくて美味しい。最近、むつのお魚を見かけないけど、どうなったのかしら?

 から揚げのお供と言えば、キャベツとレモンとビールだ。

 その家族は、仲がよくいつも一緒にいたことが不幸であったのだ。ある晩、いつものように食卓を囲んで一家だんらんの最中に悲劇が起こったのだ。

 夫婦は、幼馴染で同い年、同じ学園を卒業後すぐに結婚した。学園にいる頃から、ラブラブで有名であった二人、他の貴族令息、令嬢がどんなに粉をかけてきても見向きもしない二人であったのだ。

 結婚後すぐに子供が生まれ、今は3歳と5歳の子供がいる夫婦に見えないぐらい若々しい二人であったのだ。仕事も順調で、二人の周りには、幸せそのもので、まさに順風満帆であったのである。

 祖父母同士も家が近所に会ったことから、子供の関係から、昔からよくホームパーティをやっていたぐらい仲が良く、夫婦がまだ少年少女の頃に恋仲になることを心より喜び、二人の仲を応援していたのである。

 子供たちは、早めに食べ終わり、自室でのんびりと転寝をしている。

 今はやりの王都での放火事件、最初の被害者家族であった。誰かが「火事だ!」と叫んだときは、意外と火の回りが早く、あっという間に煙と炎に包まれる。

 幼い子供2人と若い両親、それに両方の祖父母の計8人が犠牲となる大惨事となったのである。逃げ遅れた子供を助けるため、次々と火の中へ飛び込む。

 結局、全員が焼け死んだのである。

 それが今、一番隅っこのテーブルに8人が並んで座っている。一家で食べるものなら、何でもいいと思うのだが、何を供したらいいかわからない。

 「ご注文は?」

 仕方なくキャロラインは、水とともに今朝がた来た客と同じように、かき氷を出すが、食べたいものはそんなものではなかったのだ。

 子供たち二人は、カレーライス、若夫婦はから揚げ定食、一組の祖父母はとんかつ定食にもう一組の祖父母は、ワインとチーズのセットだったのである。

 家族って仲が良くても、食べ物の好みはいろいろなのね。

 ワインとチーズは、すぐに出せると、お二人で乾杯しながら飲んで、消えていかれました。
 カレーライスも、ご飯があるから寝かせていたカレーをかけて、出すと子供たちががっついて、満腹になったのか、二人ともそろって消えていく。

 から揚げ定食は、今日の献立だったので、すぐお出ししまして、こちらも完食した後、消えられましたわ。

 残るは、とんかつ定食のご夫婦のみで、パン粉を用意しなければならなかったので、時間がかかりました。豚肉は中に菌を持っているので、十分に火を通さなければなりませんが、幽霊でも食中毒になるのでしょうか?奥様のほうは、あまりとんかつにこだわりがないように見受けられますが、旦那様のほうが、熱心に「ここのトンカツはうまいぞ。」と言っておられるので、前に来られたことがあったのかしらね。

 今日の献立以外のものを注文されると、少々お時間がかかります。と言ってもいいのだろうか?

 四十九日を待たずしても成仏したほうがいいに決まっているけれど。

 はい、ようやく揚げたてのトンカツができました。キャベツの千切りとともに、ヒレカツの出来上がりです。

 美味しそうに召し上がられて、そのまま消えていかれました。南無阿弥陀仏

 でも、奥様は、まだ残っていらっしゃる。やっぱり最後の晩餐にとんかつ定食はご不満だったのかしら。

 ビールを欲しそうに見ていらっしゃったので、そちらを突き出しとともに、お出ししたら、あっという間に消えられましたわ。

 ご主人はゲコなのに、奥様がいけるクチだったのですね。

 あぁ。やっと店じまいができる。明日のメニューは、とんかつ定食で決まりです。

 パン粉がすぐなかったので、食パンを切り刻んだ残りがたくさんあるので。
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