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鞍馬の蔵、呪の血文字
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密室殺人のトリックを解明した姉小路御幸は、京都府警から一目置かれる存在になる。なかなかいいことで、商売がやりやすくなる。拝み屋さんは、たいてい年寄りが多いから、御幸のような若い娘は珍しいのである。そのためヤクザに脅されることもしばしばある。そんな時、京都府警と近いと、何かとありがたいのである。
そういえば、前にこんなご依頼があった。あれは東山区の南座の横、川端通で偶然、知り合いの呉服屋さんが、そこで当たり屋に遭遇。当たり屋は、組の中でも一番下っ端なので、自分のしのぎは自分で稼がなければならない。そこで、車にわざとぶつかり、撥ねられたと大騒ぎして小遣い稼ぎをする。
呉服屋さんは、当たり屋だと承知の上で、警察に通報。事故扱いにして救急車を呼び、嫌がるチンピラを無理やり病院へ運び、治療を受けさせた結果、当たり屋の常習犯だということがわかる。なぜなら、薄皮だけ張った状態で次から次へと車に自らぶつかり、少しぶつかっただけで、普通では出血しないぐらいの傷で出血する。皮膚下の組織が破壊されている状態で何度も当たっている証拠が体に残されていたからである。
呉服屋さんの取引先がちょうどこのチンピラの親分さんの姐さんで、奥様のことです。
その奥様から旦那様である親分さんの耳に入り、当たり屋は廃業せざるを得なくなったのですが、今さら破門になったところで、正業に就けるわけもなく、再び悪の道へ。
今度はどこの組にも所属できず、一人でしのぎを稼いでいて、とうとう本当に撥ねられ、しかもひき逃げに遭ってしまいます。
当然、成仏できないので毎夜、呉服屋さんのところへ出るようになり、姉小路御幸のところにご依頼が来ました。お祓いして、成仏させましたよ。それがお仕事ですもの。
四宮議員兄弟殺害事件は、帳場は立ったものの御宮入り寸前みたいになり、また姉小路御幸のところに依頼が来る。捜査が行き詰まっているのである。
「お祓いしか、できひんで。(できないよの意味)」
「いやいや、得意の霊視でちょこちょこっと。」
「なんという非科学的なことを!」
「密室のトリックかて、わかったやんか。」
「また、勝手なことを!怒られるで。まーないわけでもないけど、保険金とかは?なんか多額の保険に入っていそう。」
「簡易保険が1000万円と、生保が2億円だけ。」
「に、におく?ちょっと多くない?」
「あれだけの資産家やで、少ないぐらいちゃうか?」
「そんなもん?ほな、奥さんのアリバイは?」
「海の上やで。完ぺきなアリバイがある、言うたんは御幸ちゃんやで。」
「完ぺきなアリバイというのが怪しい。と思わない?」
「いっぺん、上に言うてみるわ。おおきに。ほな。」
「ホンマに大丈夫やろか?」
何もあてずっぽうに言ったわけではなく、霊視できちんと見えたから言っているのだけど、霊視では、裁判になった時、証拠にならない。自白と物証が大事だから。
2つの事件とも、凶器が見つかっていない。凶器の特定をしてもらわないと、四宮和夫さんの事件は突発的に起きたことはわかる。問題は敬一郎さんの事件である。動機がわからない。
ひょっとしたら、敬一郎さんの犯人と和夫さんの犯人は別かもしれない?まだ仮説の段階だし、誰にも言えない。
本業は拝み屋だから、霊視で視えたことは、口が裂けても言えない。プライバシーにかかわることだから。
どうもスッキリしない手駒が少なすぎるのである。最初から警察も全部開示せず、小出しでポロポロ出してくるから脈絡がわからない。
こういう時は、お仕事しましょう。
今日のご依頼は、寺町通の新築のマンションでのこと、ここの地下駐車場でまた、霊が出るらしい。寺町通は出るわ。もう決まり、だって太閤さんがお土居を作った時の東端だもの。それに丸太町から北は西に京都御所がある。
立てるときに宮大工の棟梁代々の秘伝の術を使ってよ。といいたくなるわよ。ったく。
よく聞けば、御所の鬼門に当たるところだった。もうこれはビンゴとしか言いようがない。出るべくして出た。という感じです。
宮大工のアレする?んー?どうしようかなぁ。入居者が誰もいないのならやってもいいけど、もうベランダにお布団干しているよね。
時間かかるかもしれないけど、説得を試みることにした。成仏できないのは、自分が死んだことに気づかないからで、「もう、あなたは死んでしまったのだから、ここにいてはダメです。」という説得を気長に。それと「お線香のにおいが美味しいと感じるのは、あなた様が死んだ証でございます。」というと、だいたいの幽霊は納得してくれるのだけど、中には頑固な霊もいる。
それでも霊の説得のため、線香を焚いていると臭いとマンションの住民から苦情が来る。よくこんなマンションに住んでいて、どこもおかしくならないのは、アナタ自身が招いているからです。と言ってやりたいのをグッと我慢する。でも、ご依頼が終わったら、苦情を出してきた人に、こっそり貧乏神をくっつけてやるのよ。あー楽しみ♪
セレブ面して、貧乏神に気に入られるのが目に見えているから、楽しみだわ。
今日も、ご依頼を頑張る。
そういえば、前にこんなご依頼があった。あれは東山区の南座の横、川端通で偶然、知り合いの呉服屋さんが、そこで当たり屋に遭遇。当たり屋は、組の中でも一番下っ端なので、自分のしのぎは自分で稼がなければならない。そこで、車にわざとぶつかり、撥ねられたと大騒ぎして小遣い稼ぎをする。
呉服屋さんは、当たり屋だと承知の上で、警察に通報。事故扱いにして救急車を呼び、嫌がるチンピラを無理やり病院へ運び、治療を受けさせた結果、当たり屋の常習犯だということがわかる。なぜなら、薄皮だけ張った状態で次から次へと車に自らぶつかり、少しぶつかっただけで、普通では出血しないぐらいの傷で出血する。皮膚下の組織が破壊されている状態で何度も当たっている証拠が体に残されていたからである。
呉服屋さんの取引先がちょうどこのチンピラの親分さんの姐さんで、奥様のことです。
その奥様から旦那様である親分さんの耳に入り、当たり屋は廃業せざるを得なくなったのですが、今さら破門になったところで、正業に就けるわけもなく、再び悪の道へ。
今度はどこの組にも所属できず、一人でしのぎを稼いでいて、とうとう本当に撥ねられ、しかもひき逃げに遭ってしまいます。
当然、成仏できないので毎夜、呉服屋さんのところへ出るようになり、姉小路御幸のところにご依頼が来ました。お祓いして、成仏させましたよ。それがお仕事ですもの。
四宮議員兄弟殺害事件は、帳場は立ったものの御宮入り寸前みたいになり、また姉小路御幸のところに依頼が来る。捜査が行き詰まっているのである。
「お祓いしか、できひんで。(できないよの意味)」
「いやいや、得意の霊視でちょこちょこっと。」
「なんという非科学的なことを!」
「密室のトリックかて、わかったやんか。」
「また、勝手なことを!怒られるで。まーないわけでもないけど、保険金とかは?なんか多額の保険に入っていそう。」
「簡易保険が1000万円と、生保が2億円だけ。」
「に、におく?ちょっと多くない?」
「あれだけの資産家やで、少ないぐらいちゃうか?」
「そんなもん?ほな、奥さんのアリバイは?」
「海の上やで。完ぺきなアリバイがある、言うたんは御幸ちゃんやで。」
「完ぺきなアリバイというのが怪しい。と思わない?」
「いっぺん、上に言うてみるわ。おおきに。ほな。」
「ホンマに大丈夫やろか?」
何もあてずっぽうに言ったわけではなく、霊視できちんと見えたから言っているのだけど、霊視では、裁判になった時、証拠にならない。自白と物証が大事だから。
2つの事件とも、凶器が見つかっていない。凶器の特定をしてもらわないと、四宮和夫さんの事件は突発的に起きたことはわかる。問題は敬一郎さんの事件である。動機がわからない。
ひょっとしたら、敬一郎さんの犯人と和夫さんの犯人は別かもしれない?まだ仮説の段階だし、誰にも言えない。
本業は拝み屋だから、霊視で視えたことは、口が裂けても言えない。プライバシーにかかわることだから。
どうもスッキリしない手駒が少なすぎるのである。最初から警察も全部開示せず、小出しでポロポロ出してくるから脈絡がわからない。
こういう時は、お仕事しましょう。
今日のご依頼は、寺町通の新築のマンションでのこと、ここの地下駐車場でまた、霊が出るらしい。寺町通は出るわ。もう決まり、だって太閤さんがお土居を作った時の東端だもの。それに丸太町から北は西に京都御所がある。
立てるときに宮大工の棟梁代々の秘伝の術を使ってよ。といいたくなるわよ。ったく。
よく聞けば、御所の鬼門に当たるところだった。もうこれはビンゴとしか言いようがない。出るべくして出た。という感じです。
宮大工のアレする?んー?どうしようかなぁ。入居者が誰もいないのならやってもいいけど、もうベランダにお布団干しているよね。
時間かかるかもしれないけど、説得を試みることにした。成仏できないのは、自分が死んだことに気づかないからで、「もう、あなたは死んでしまったのだから、ここにいてはダメです。」という説得を気長に。それと「お線香のにおいが美味しいと感じるのは、あなた様が死んだ証でございます。」というと、だいたいの幽霊は納得してくれるのだけど、中には頑固な霊もいる。
それでも霊の説得のため、線香を焚いていると臭いとマンションの住民から苦情が来る。よくこんなマンションに住んでいて、どこもおかしくならないのは、アナタ自身が招いているからです。と言ってやりたいのをグッと我慢する。でも、ご依頼が終わったら、苦情を出してきた人に、こっそり貧乏神をくっつけてやるのよ。あー楽しみ♪
セレブ面して、貧乏神に気に入られるのが目に見えているから、楽しみだわ。
今日も、ご依頼を頑張る。
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