2 / 7
2傷心旅行
しおりを挟む
リリアーヌを王都の噴水に捨てた公爵家の使用人の面々は、その後すぐに、アグネスの魔法で領地へ飛んだのだ。
もちろんアグネスと共に、アグネスはいったん、領地へ引っ込んでから、旅に出るつもりでいる。王都の公爵邸は、アグネスの異空間の中に仕舞いこみ、今夜からは、領地で寝泊まりをするのである。
これで、やっとあのリリアーヌとおさらばできて、スッとしている。
別にアグネスは、ロバート様のことなど、どうでもよかったのだ。ただ、王家から押し付けられた縁談だったので、カドを立つのを防ぐため承諾した縁談に過ぎなかったから。
その面では、リリアーヌの働きに感謝したいところだが、ロバート様に飽き足らず、絶対、次の婚約者も寝取られる。だから、リリアーヌを捨てたのである。
王家には、ロバート様と婚約破棄された痛手のための傷心旅行に出たと言っておけば、大丈夫。一生戻らないつもりでいるが、そんなことどうでもいいのだ。
とにかく若い娘が婚約破棄されたというだけで、傷心旅行に出ることは許されるのであるから、その手を使わせてもらおう。
傷心旅行ではなく、修道院でもよかったのだけどね。
王家も自殺されるよりは、マシだからすぐ許可が下りる。
王家もロバートの後釜候補をすぐ立ててきたが、
「今はとてもそんな気になりませんわ。」で、断った。当然でしょ、リリアーヌという諸悪の根源を絶たず、つぎ、また婚約なんてできない。
ところがだ。やっとリリアーヌから離れることができたのだ。嬉しい。宝石もドレスもアグネスの持ち物はすべてリリアーヌが欲しがって、いつの間にかリリアーヌのクローゼットの中に隠されている。
それをブランケットとネグリジェだけで、追い出せたのだから、これ以上重畳なことはない。
それにしても家令がよくこんなこと考え付くものだと感心する。
「いつお嬢様が言い出されるかと、待っていました。」
聞いたときは、ビックリしたわ。生まれながらの公爵令嬢でもないのに、公爵令嬢面して、使用人にもきつく当たっていたらしい。
使用人全員から嫌われていたら、仕方がないよね。
公爵家の使用人は、決して身分が低いものではない。一番低くて伯爵家出身ぐらいだから、平民上がりのリリアーヌが偉そうにすることは耐え難い侮辱だったのであろう。
ともかくもう二度とリリアーヌには会いたくない。だから傷心旅行に出るのである。
どこへ行こうかな?ガイドブックや地図を眺めながら、ふむふむと思案していると、アグネス付きの侍女が
「お嬢様お一人では、身の回りのお世話が必要です。わたくしがぜひ、お供させていただきたいですわ。」
申し出てくれた。それもそうだと納得して、二人できゃっきゃウフフと相談していたら、なんと執事も何かあるといけませんから、男手が必要となりましょう。
執事のセバスチャンも同行してくださることになったのだ。
すると、お嬢様の健康管理のためにも、私も参らせてください。と料理長が申し出てくれた。ありがたいことですわ。
一日も経たないうちに使用人全員が一緒に行ってくれることになったのだ。こんな大所帯で行動したら、とても傷心旅行とは見られないかもしれない。でも表向き傷心旅行なんだから、仕方ない。
いっそのこと、王家には傷心旅行ではなく、婚活旅行にしようか?それとも使用人の慰安旅行にするか?福利厚生は使用人のモチベーションのためにも必要であるとかなんとか言って。
そのあたりの許可は、執事がうまく取っておいてくれたのである。年頃の聖女様を一人で行かせられない。とかなんとか?
さすが!セバスチャンぬかりはない。
ということで、領地の屋敷も異空間に仕舞う。
個々人の用意ができた人から順番に国境まで一気に飛ばす。国境ラインが集合場所である。
領地の使用人の中には、家族を連れて行きたいと申し出るものまでいたが、傷心旅行といえども当分帰る予定がないから、希望者は全員、一緒に行くことにしたのだ。
「不自由をかけるかもしれませんが、それでもよろしいでしょうか?」
希望者といえども、転移魔法をかけるとき、一人一人に確認している。承諾した人から、まとめて国境ラインまで送る。
アグネスは、懐かしい領地の風景を目に焼き付けてから、最後に国境ラインまで飛んだ。
その頃、リリアーヌは、喜んでいたのだ。牢の中では、水も食べ物も支給されるから。
ここにさえいれば、雨露はしのげるし、足が痛いのを我慢せずとも、歩く必要がない。それにここにいれば、リリアーヌがいないことに気づいたお姉さまがきっと探しに来てくれるだろうと信じているから。ひょっとしたら、ロバート様も来てくださるかもしれない。
わりと楽天家なのだ。自分の存在でどれだけ、まわりの人を傷つけているか考えられない人間ほどそうである。自分中心でないと物が考えられない脳の欠陥である。
だが、そんな期待をよそに誰もリリアーヌの元を訪ねてくる人間がいなかったのである。
嫌疑不十分で、牢から出される日、
「嫌です。ここにいないとお姉さまが探しに来られた時、困られるわ。ここに射させてください。」
そんな懇願する受刑者は今まで誰もいなかったことから、牢番は顔を見合わせる。
「アンタの姉さんって、誰のことだい?」
「アグネス・トンプソン、血は繋がっていないけど、姉さんなんです。優しい姉さんなんです。」
「こりゃ、たまげた。聖女様か?……聖女様は、もうこの国にはおらんよ。」
「うそ!お姉さまが私を置いてどこかへ行かれるはずがないわ!」
「聞いた話では、ロバート殿下との婚約破棄がショックで傷心旅行に行かれたとか、という話だったかな。」
「うそ……そんな、ちょっとロバートを引っ掛けただけで……。」
リリアーヌはその時初めて、自分が仕出かしたことの重大性に気づく。
「ではロバート様は、あれからどうなさったの?」
「ああ、廃嫡されて、平民落ちさ。今は土方をして、聖女様への婚約違約金を支払ってるそうだよ。ったくバカとしか言いようがないよな。どこかの尻軽女に引っかかったらしいぜ。」
それからリリアーヌは牢にいたいと言わず、腑抜けのようになって、牢から出ていつの間にか姿を消したのだ。
もちろんアグネスと共に、アグネスはいったん、領地へ引っ込んでから、旅に出るつもりでいる。王都の公爵邸は、アグネスの異空間の中に仕舞いこみ、今夜からは、領地で寝泊まりをするのである。
これで、やっとあのリリアーヌとおさらばできて、スッとしている。
別にアグネスは、ロバート様のことなど、どうでもよかったのだ。ただ、王家から押し付けられた縁談だったので、カドを立つのを防ぐため承諾した縁談に過ぎなかったから。
その面では、リリアーヌの働きに感謝したいところだが、ロバート様に飽き足らず、絶対、次の婚約者も寝取られる。だから、リリアーヌを捨てたのである。
王家には、ロバート様と婚約破棄された痛手のための傷心旅行に出たと言っておけば、大丈夫。一生戻らないつもりでいるが、そんなことどうでもいいのだ。
とにかく若い娘が婚約破棄されたというだけで、傷心旅行に出ることは許されるのであるから、その手を使わせてもらおう。
傷心旅行ではなく、修道院でもよかったのだけどね。
王家も自殺されるよりは、マシだからすぐ許可が下りる。
王家もロバートの後釜候補をすぐ立ててきたが、
「今はとてもそんな気になりませんわ。」で、断った。当然でしょ、リリアーヌという諸悪の根源を絶たず、つぎ、また婚約なんてできない。
ところがだ。やっとリリアーヌから離れることができたのだ。嬉しい。宝石もドレスもアグネスの持ち物はすべてリリアーヌが欲しがって、いつの間にかリリアーヌのクローゼットの中に隠されている。
それをブランケットとネグリジェだけで、追い出せたのだから、これ以上重畳なことはない。
それにしても家令がよくこんなこと考え付くものだと感心する。
「いつお嬢様が言い出されるかと、待っていました。」
聞いたときは、ビックリしたわ。生まれながらの公爵令嬢でもないのに、公爵令嬢面して、使用人にもきつく当たっていたらしい。
使用人全員から嫌われていたら、仕方がないよね。
公爵家の使用人は、決して身分が低いものではない。一番低くて伯爵家出身ぐらいだから、平民上がりのリリアーヌが偉そうにすることは耐え難い侮辱だったのであろう。
ともかくもう二度とリリアーヌには会いたくない。だから傷心旅行に出るのである。
どこへ行こうかな?ガイドブックや地図を眺めながら、ふむふむと思案していると、アグネス付きの侍女が
「お嬢様お一人では、身の回りのお世話が必要です。わたくしがぜひ、お供させていただきたいですわ。」
申し出てくれた。それもそうだと納得して、二人できゃっきゃウフフと相談していたら、なんと執事も何かあるといけませんから、男手が必要となりましょう。
執事のセバスチャンも同行してくださることになったのだ。
すると、お嬢様の健康管理のためにも、私も参らせてください。と料理長が申し出てくれた。ありがたいことですわ。
一日も経たないうちに使用人全員が一緒に行ってくれることになったのだ。こんな大所帯で行動したら、とても傷心旅行とは見られないかもしれない。でも表向き傷心旅行なんだから、仕方ない。
いっそのこと、王家には傷心旅行ではなく、婚活旅行にしようか?それとも使用人の慰安旅行にするか?福利厚生は使用人のモチベーションのためにも必要であるとかなんとか言って。
そのあたりの許可は、執事がうまく取っておいてくれたのである。年頃の聖女様を一人で行かせられない。とかなんとか?
さすが!セバスチャンぬかりはない。
ということで、領地の屋敷も異空間に仕舞う。
個々人の用意ができた人から順番に国境まで一気に飛ばす。国境ラインが集合場所である。
領地の使用人の中には、家族を連れて行きたいと申し出るものまでいたが、傷心旅行といえども当分帰る予定がないから、希望者は全員、一緒に行くことにしたのだ。
「不自由をかけるかもしれませんが、それでもよろしいでしょうか?」
希望者といえども、転移魔法をかけるとき、一人一人に確認している。承諾した人から、まとめて国境ラインまで送る。
アグネスは、懐かしい領地の風景を目に焼き付けてから、最後に国境ラインまで飛んだ。
その頃、リリアーヌは、喜んでいたのだ。牢の中では、水も食べ物も支給されるから。
ここにさえいれば、雨露はしのげるし、足が痛いのを我慢せずとも、歩く必要がない。それにここにいれば、リリアーヌがいないことに気づいたお姉さまがきっと探しに来てくれるだろうと信じているから。ひょっとしたら、ロバート様も来てくださるかもしれない。
わりと楽天家なのだ。自分の存在でどれだけ、まわりの人を傷つけているか考えられない人間ほどそうである。自分中心でないと物が考えられない脳の欠陥である。
だが、そんな期待をよそに誰もリリアーヌの元を訪ねてくる人間がいなかったのである。
嫌疑不十分で、牢から出される日、
「嫌です。ここにいないとお姉さまが探しに来られた時、困られるわ。ここに射させてください。」
そんな懇願する受刑者は今まで誰もいなかったことから、牢番は顔を見合わせる。
「アンタの姉さんって、誰のことだい?」
「アグネス・トンプソン、血は繋がっていないけど、姉さんなんです。優しい姉さんなんです。」
「こりゃ、たまげた。聖女様か?……聖女様は、もうこの国にはおらんよ。」
「うそ!お姉さまが私を置いてどこかへ行かれるはずがないわ!」
「聞いた話では、ロバート殿下との婚約破棄がショックで傷心旅行に行かれたとか、という話だったかな。」
「うそ……そんな、ちょっとロバートを引っ掛けただけで……。」
リリアーヌはその時初めて、自分が仕出かしたことの重大性に気づく。
「ではロバート様は、あれからどうなさったの?」
「ああ、廃嫡されて、平民落ちさ。今は土方をして、聖女様への婚約違約金を支払ってるそうだよ。ったくバカとしか言いようがないよな。どこかの尻軽女に引っかかったらしいぜ。」
それからリリアーヌは牢にいたいと言わず、腑抜けのようになって、牢から出ていつの間にか姿を消したのだ。
0
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説
殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?
星ふくろう
恋愛
聖女認定の儀式をするから王宮に来いと招聘された、クルード女公爵ハーミア。
数人の聖女候補がいる中、次期皇帝のエミリオ皇太子と婚約している彼女。
周囲から最有力候補とみられていたらしい。
未亡人の自分でも役に立てるならば、とその命令を受けたのだった。
そして、聖女認定の日、登城した彼女を待っていたのは借金取りのザイール大公。
女癖の悪い、極悪なヤクザ貴族だ。
その一週間前、ポーカーで負けた殿下は婚約者を賭けの対象にしていて負けていた。
ハーミアは借金のカタにザイール大公に取り押さえられたのだ。
そして、放蕩息子のエミリオ皇太子はハーミアに宣言する。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
平然と婚約破棄をするエミリオ皇太子とその横でほくそ笑むカーラ。
聖女認定どころではなく、ハーミアは怒り大公とその場を後にする。
そして、聖女は選ばれなかった.
ハーミアはヤクザ大公から債権を回収し、魔王へとそれを売り飛ばす。
魔王とハーミアは共謀して帝国から債権回収をするのだった。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!
近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに!
どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…?
幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り
後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが
他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています
※完結しました!ありがとうございます!
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?
水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。
理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。
本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。
無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。
そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。
セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。
幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。
こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。
そして、ある日突然セレナからこう言われた。
「あー、あんた、もうクビにするから」
「え?」
「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」
「いえ、全くわかりませんけど……」
「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」
「いえ、してないんですけど……」
「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」
「……わかりました」
オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。
その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。
「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」
セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。
しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。
(馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる