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ジークフリートは、アリエールに捨てられた。
今まで小さい時から、共に婚約者として一心同体であった誓約魔法の片割れを完全に失ってしまったのだ。
いつどこで何をしていても、常にアリエールの存在を感じていたのに、あの日からぷつりと切れてしまった。世界は色を失くし、生きる気力も何もない。
アリエールが自害してから、その日に行われるはずの結婚式はすべて、中止になってしまう。すべてはアリエールの死を悼んで、哀悼の気持ちから中止になってしまったのだ。
あの時の衝撃的な痛みは、アリエールが落下したときの痛みを肩代わりしたものだということを後で知った。アリエールは、あの高さから落ちても、なお眠っているかのような安らかな顔をしていた。
それが誓約魔法のなせる業だということを知り、痛みを身代わりで引き受けられたことを良かったと思っている。それがせめてもの償いだとも。
アリエールの遺体は、ルクセンブルク家に運ばれ、アリエールの生前使っていた部屋に安置されている。弔問に行きたくても、ルクセンブルク公爵から、やんわりと断られている。
アリエールを失って初めて、自分の気持ちに気づいたジークフリートは今までの所業を深く反省するが、かけがえのないただ一人の愛する女性を永遠に失ってしまった事実からは眼をそむけられない。
アリエールの存在がいかに大切で、ジークフリートにとって必要だったかを改めて思い知らされる。
リリアーヌはここぞとばかりに、ジークフリートに前よりも増して、粉をかけるが相手にされない。
リリアーヌは、アリエールに比べて何もかもが劣っている。家格もさることながら、容姿も頭脳も性格も。よく考えれば、ここまで下位の女性の言うことを真に受けていた自分がおかしいぐらい。
それに学園内の監視カメラの映像をいくら見ても、やはりアリエールがいじめていたという画像を発見できなかった。
そもそもアリエールは、ハイクラスでリリアーヌは一番下のロウクラスなのだから、接点は何処にも見当たらない。
リリアーヌを処罰したところで、アリエールが戻ってこないことは承知の上だが、アリエールを侮辱したリリアーヌをどうしても許せない。
アリエールの自害のきっかけになったことは事実だろう。リリアーヌを地下牢に投獄し、貴族籍をはく奪してから国外追放処分にする。
まぁ、リリアーヌのことだから、国外追放処分になっても、ケロリとしてどこでも生きて行けるだろう。
生まれながらの深窓の令嬢とは、訳が違う。雑草のごとく逞しく自分の人生を自分で切り開いていく姿を想像できる。
だから罰でも何でもない。アリエールを自害するまでに追い詰めたのは、すべてジークフリートによるものなのだから。
婚約者を失ったジークフリートに縁談は来るものの、アリエール以上の女性は何処にもいない。
ジークフリートは王位継承権第1位で、第2位は父国王陛下の従兄弟に当たるルクセンブルク公爵、第3位は、その息子のエドワードでアリエールの兄である。
もし、この先、誰とも結婚せずに子を生せなかった場合、エドワードが次期国王に一番近い存在となるのだ。
それはそれでアリエールの供養にもなるような気がする。
ジークフリートの曾祖母は、アリエールの曾祖母と同じ人で、聖女様。聖女様は曽祖父の国王陛下と結婚され、王女と王子をお産みになられ、王女殿下はルクセンブルク家に降嫁され、それがアリエールの祖母というわけ。
以降、聖女様の立ち合いで婚約時に誓約魔法が結ばれ、王家ではただ一人の妻しか持てなくなって久しい。
側女を持てないから、配偶者となった妻を抱きつぶし、結果早死にさせてしまう悲劇が繰り返されている。
そして聖女様の最後の誓約魔法をかけられたのが、ジークフリートとアリエールと言うことだけ。
もし、二人が結婚すれば、また悲劇が繰り返されることになったのだが、それだけは避けられて良かったことかもしれない。
今まで小さい時から、共に婚約者として一心同体であった誓約魔法の片割れを完全に失ってしまったのだ。
いつどこで何をしていても、常にアリエールの存在を感じていたのに、あの日からぷつりと切れてしまった。世界は色を失くし、生きる気力も何もない。
アリエールが自害してから、その日に行われるはずの結婚式はすべて、中止になってしまう。すべてはアリエールの死を悼んで、哀悼の気持ちから中止になってしまったのだ。
あの時の衝撃的な痛みは、アリエールが落下したときの痛みを肩代わりしたものだということを後で知った。アリエールは、あの高さから落ちても、なお眠っているかのような安らかな顔をしていた。
それが誓約魔法のなせる業だということを知り、痛みを身代わりで引き受けられたことを良かったと思っている。それがせめてもの償いだとも。
アリエールの遺体は、ルクセンブルク家に運ばれ、アリエールの生前使っていた部屋に安置されている。弔問に行きたくても、ルクセンブルク公爵から、やんわりと断られている。
アリエールを失って初めて、自分の気持ちに気づいたジークフリートは今までの所業を深く反省するが、かけがえのないただ一人の愛する女性を永遠に失ってしまった事実からは眼をそむけられない。
アリエールの存在がいかに大切で、ジークフリートにとって必要だったかを改めて思い知らされる。
リリアーヌはここぞとばかりに、ジークフリートに前よりも増して、粉をかけるが相手にされない。
リリアーヌは、アリエールに比べて何もかもが劣っている。家格もさることながら、容姿も頭脳も性格も。よく考えれば、ここまで下位の女性の言うことを真に受けていた自分がおかしいぐらい。
それに学園内の監視カメラの映像をいくら見ても、やはりアリエールがいじめていたという画像を発見できなかった。
そもそもアリエールは、ハイクラスでリリアーヌは一番下のロウクラスなのだから、接点は何処にも見当たらない。
リリアーヌを処罰したところで、アリエールが戻ってこないことは承知の上だが、アリエールを侮辱したリリアーヌをどうしても許せない。
アリエールの自害のきっかけになったことは事実だろう。リリアーヌを地下牢に投獄し、貴族籍をはく奪してから国外追放処分にする。
まぁ、リリアーヌのことだから、国外追放処分になっても、ケロリとしてどこでも生きて行けるだろう。
生まれながらの深窓の令嬢とは、訳が違う。雑草のごとく逞しく自分の人生を自分で切り開いていく姿を想像できる。
だから罰でも何でもない。アリエールを自害するまでに追い詰めたのは、すべてジークフリートによるものなのだから。
婚約者を失ったジークフリートに縁談は来るものの、アリエール以上の女性は何処にもいない。
ジークフリートは王位継承権第1位で、第2位は父国王陛下の従兄弟に当たるルクセンブルク公爵、第3位は、その息子のエドワードでアリエールの兄である。
もし、この先、誰とも結婚せずに子を生せなかった場合、エドワードが次期国王に一番近い存在となるのだ。
それはそれでアリエールの供養にもなるような気がする。
ジークフリートの曾祖母は、アリエールの曾祖母と同じ人で、聖女様。聖女様は曽祖父の国王陛下と結婚され、王女と王子をお産みになられ、王女殿下はルクセンブルク家に降嫁され、それがアリエールの祖母というわけ。
以降、聖女様の立ち合いで婚約時に誓約魔法が結ばれ、王家ではただ一人の妻しか持てなくなって久しい。
側女を持てないから、配偶者となった妻を抱きつぶし、結果早死にさせてしまう悲劇が繰り返されている。
そして聖女様の最後の誓約魔法をかけられたのが、ジークフリートとアリエールと言うことだけ。
もし、二人が結婚すれば、また悲劇が繰り返されることになったのだが、それだけは避けられて良かったことかもしれない。
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