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江戸時代編

ゴムの木

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 凛太朗は、大名家、京都所司代、京都御所を中心に電化を進めた。
 一番手軽で、大事なものを忘れていた。外の照明は、センサーライトをつけたものの、家の中の照明を忘れていた。

 裏口診療所には、当たり前のように蛍光灯を点けているものだから。
 かのエジソンは、嵯峨の竹林で竹ひごを作り、電球の中の電気を通したと言われるが、なんといっても裏口診療所は、立派な異世界現代に通じているのだから、家電量販店から、蛍光灯を買ってきて、照明器具共に、設置したが、ここでも宮大工たちに頼んだ。

 蛍光灯も電球も少ないワット数で、まあまあの明るさが見込めるLEDにした。でんきゅうとしての保ちが良い。永年にわたり使えるので、もし、裏口が閉まってしまっても当分、使えるだろう。

 江戸にも同じように先に、照明器具を配置した。
 葵の御紋は、インターネットでシールになっているものがいくらでも買えるので、見える箇所に葵の御紋シールを貼って、関所を通過した。
 門弟たちのヘルメットにつけて、肩口辺りにシールを貼った。

 江戸出身の門弟たちを中心に、彼らも故郷に錦を飾りたいだろうから、行ってもらうことにした。また、ハイエースで大井川まで運び、その後は電動アシストマウンテンバイクで
箱根を突っ走ってもらい、その後、江戸城へ向かうという、いつものルートだ。

 宮大工の棟梁たちにも自転車の乗り方を練習させた。補助輪は当然なしだ。
 最初は、おっかなびっくりだった彼らもコツを掴めば、一日で乗りこなせるようになった。
 聞けば、馬に乗るより、扱いは楽だそうな、生き物を相手に機嫌を取りながらのほうがしんどいらしい。

 江戸時代の京の町にでも、普通に自転車を乗れるようになった。
 自転車は、タイヤチューブが復元不可能で、亜熱帯地方でゴムの木を生産してもらうしかないのだろうが、京都近辺で、ゴムを育てられそうなところがない。植物園でも作り、温室を作れば、可能かもしれない。
 そうか、和歌山県の紀伊半島のあたりまで行けば、黒潮が通っているから、ゴムの木を育てられるかもしれないが、今は、江戸時代である。

 現代の京都は、鴨川の東側、北大路と北山通の間に、植物園がある。下鴨神社の北西あたりに、位置する。
 凛太朗は、なるべく位置を変えずに、その辺りで植物園ができないか考案してみることにした。

 京都所司代と天子様に、相談したら、いくらでも土地を提供すると言ってきた。

 温室だけの問題なら、洛中に建てたほうが便利だ。
 以仁親王殿下の屋敷跡のあたりが良いのでは?と思い、そのあたりに場所を決めた。いまでもその地は、知る人ぞ知る呪いの地で、バブル時タレントショップが軒を連ねたが、今は一軒も跡形すらない「死に函」と呼ばれる場所であった。

 ここでは、あえて場所は書かないことにしよう。

 ゴムの木を温室で栽培できたら、将来は電気自動車も夢ではないかもしれない。
 その前に、蒸気機関車を走らせたほうが、現実的かもしれない。
 凛太朗の異世界江戸物語は、果てしない夢は続くことになるのだ。

 とりあえず、今は江戸時代の家と町、隅々まで明るくした凛太朗であった。
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