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江戸時代編

9.遊郭

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 いつの間にか、裏口からガレージに行けるようになっていた。
 裏口から江戸時代の人が出入りできなくなった。
 いつもの日常が取り戻せたが、少々さみしいと思うところもあった。

 酔っ払って帰ってきたときも裏口から入れるようになって、妻に怒られずに済むが、その時、ガレージのほうを見たら、車上荒らしを見つけてしまった。
 すぐに、110番して警察に来てもらった。
 そういえば、江戸時代の泥棒がウチの裏口を狙ったこともあったな、ということを思い出した。センサーライトは、やっぱり必要だな。少々、しんみりとした。

 支部の医師会で飲み会があり、深夜に帰ってきた。
 裏口から帰らないと怒られる。
 コソコソと裏口のドアに鍵を差し込み、回した。
 ドアを開けて、入ろうとした時、何やら後ろ側がすーすーするので、振り向いたら裏口長屋が並んでいた。

 「!」
 裏口の外は、江戸時代になっていた。

 俺は、大声で妻を呼んだ。当然、深夜に大声で呼んだものたから、妻にこっぴどく叱られたけど、今はそんな事言っている場合じゃない。

 「こらっ!今、何時だと思っているの!」ハイ、わかっています。

 「見てよ。裏口のガレージが消えて、長屋になっているでしょ。」と言ったら

 妻は目をパチクリさせて、「本当だ!また、裏口、繋がったんだね。」とそこじゃない。

 「俺が裏口の外にいる。」

 「へ?私も出られるの?」と言って、出た。

 「だろ?今まで、あれだけ出られなかったのに、出られるようになった。」

 「わっ!これで、京見物に行けるね♪」
 ついに、また裏口が開いた。今度は、出入り自由になって開いた。

 俺は、内心、遊郭に遊びに行けるとワクワクしていた。 

 早速、土曜日の夜、長屋連中に金を渡して、連れて行ってもらうことにした。

 島原もいいけど、祇園も捨てがたい、軍資金は、うんとある。脚気治療で大名が入院目当てに置いていった千両箱にたんまりある。

 妻には、江戸時代の宿で泊ってくる、といえば、それじゃ私も、と付いてきたがったが女はダメだ。と言ったら、何やら察したらしくおとなしくなった。

 とにかく俺は、久しぶりにコンドームを買って、風呂に入ってから行った。
 長屋の男連中にも、指南料と称して、風呂に入れてコンドームを渡したら、こんなものいらないと口々に言うので、性病の危険性をトクトクと説明した。鼻がなくなるかもしれないと聞いた男連中は青くなって、コンドームを受け取っていた。

 遊郭では、時代劇で想像していた光景だった。真っ白けに塗りたくって、この頃の白粉は、水銀が含まれていて、後に病気になることがあった。なるべくおしろいを使わないほうがいいとは言えないから、一見の客だから、上がることにしたものの、どの女を買っていいか見当がつかない。

 困っていると、以前、インフルエンザの治療をした白生地問屋の主人がいた。治療代金としていただいた白生地を5億円で売れた。
 白生地問屋の主人は、気前よく「今夜は、おごりで」と言って、女を見繕ってくれたので、お礼にコンドームを差し上げた。使い方を説明したら、笑って持って行かれた。

 座敷に上がると、最初に酒が出た。このあたりは、現代と同じだ。「とらとら」のお座敷遊びでもするのかと思っていたら、いきなり真っ赤な布団が敷いてあった。

 久しぶりに女が抱ける♡ワクワク感でいっぱいだったが、女の味はイマイチだった。
 結局、俺は泊らず、家へ帰って酒飲んで寝た。
 長屋の連中は、皆泊ったようだった。

 次の日の朝、妻からお小言を言われるかと思ったら、意外にも無言で、かわりに遊郭の様子を聞きたがった。
 おしろいは、水銀が入っているから毒だと言っていたら、現代からファンデーションをたくさん仕入れて、江戸時代で売ればいいのでは?と言われ、商売にすることにした。

 まずは、あの御方に献上しよう。許可が出たらお墨付きをもらったようなものだから、大々的に売ろうと考えた。

 お墨付きはすぐ出た。仕上がりは、ほとんど透明なのに見事に肌艶がよくなった。

 遊郭の女たちは、こぞって買い求めた。置屋も自分のところの女郎のために買った。
 また、儲かってしまった。
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