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江戸時代編
6.入院
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裏口診療所は、相変わらず盛況だ。白生地問屋の主人を命拾いさせたのだから、その噂が京の街へ広がり、診療所を5階建てから10階建てにしたいぐらいだが、医師法の関係上、無理だ。開業時は、診療所と届けたが、現代の世では、クリニックとしてやっている。
医者が3人確保できたら、と考えても無理からぬこと。この上、嫁さんに医科大学へ行け、なんて言えば、どれほど怒られるかを思うと、恐ろしい。
仕方ないな。息子が医者の嫁さんをもらうことのほうが現実的だな。早く、イイ女拾って来いよ、と願う。
どこかの藩の京屋敷から、お呼びがかかった。
しかし、往診に行けない。裏口から出られないからだ。
「無礼者!」さんざん罵られたが、仕方がない。
立派な蒔絵が施した駕籠が裏口診療所の前に、横付けされた。
診察すると、脚気だった。ビタミンB1製剤を静脈注射したら、あっという間に顔色が良くなった。どこかの藩の若様?は、入院したがったようだが、帰した。
供の者に、小麦胚芽粉末を渡し、食事の後に飲むように指示した。2~3日で完治されたそうな。当然です。
その噂が噂を呼び、毎日、脚気患者が列をなした。
脚気ごときで入院させたら、入院患者で溢れかえってしまう。
大大名は、金に糸目をつけず、どうしても入院させてくれと言ってくる。
話のタネに、異世界入院を体験したいのだろう。
千両箱を持ってこられたから、「一晩だけですよ」と念を押し、入院させることもあった。
最初に来た脚気患者の若様?が駄々をこねられ、治ったにもかかわらず入院された。
診療所ではなく、宿屋に商売替えするように進言されたこともあった。
いやいや、現代の事情で19床までしか置けないから。
入院目的で、裏口診療所は儲かった。いやいや賑わった。
と、ある夜、やけに裏口が騒がしい。
ふと見たら、真ん前の家から煙と炎がちらちら見えた。
「わっ!」驚いて、長屋の連中に消化器の使い方を教えてやって、消火活動を手伝った。
裏口から一歩も出られなかったが、消火剤で真っ白になり、すぐ消せた。
消火剤を洗わなければ、すぐに住めない。その家の住人を入院させた。
それからというものの、なんだかんだと理由をつけて長屋の連中が押し掛ける。
湯屋に行かなくても、いつでも入れる風呂、清潔な室内、臭くない便所、火を起こさなくても一瞬で灯る明かり、火鉢を置かなくても温かい部屋。
診療所のベッドは、かなりせんべい布団だと思うが、江戸時代の布団に比べるとふかふかで殿様以上の気分になる寝心地だそうな。
そして、何より楽しみなのが、愛妻の変わった?料理だそうだ。
何を食べても、おいしい。使われている食材は、わかるものもあるがよくわからない、食べると不思議に元気になる。
長屋より、快適な暮らしをしたいのだろうが、本当に必要な医療を提供するには、必要な患者しか対象にならない。
気持ちはわかるが、いつ、江戸時代との出口がふさがれるかわからない状態で必要以上の人数は、受け入れられない。
先生のところへ、住めるなら、長屋に火を点けようか、と冗談で話している奴までいる。
裏口診療所の入院施設について、ついに天子様から、お呼びがかかった。
しかし、例によって例のごとく、往診に行けないからとお断りしたら、あちらから行幸がありました。
天子様から頂いた宝箱のかわりに、チョコレートを差し上げました。
妻は、パンケーキをふるまっていました。
また、遊びにきていいか?と聞かれたので、「いつでも、どうぞ」と社交辞令ですよ。
「もう、来るな。」とは、言えないから。
医者が3人確保できたら、と考えても無理からぬこと。この上、嫁さんに医科大学へ行け、なんて言えば、どれほど怒られるかを思うと、恐ろしい。
仕方ないな。息子が医者の嫁さんをもらうことのほうが現実的だな。早く、イイ女拾って来いよ、と願う。
どこかの藩の京屋敷から、お呼びがかかった。
しかし、往診に行けない。裏口から出られないからだ。
「無礼者!」さんざん罵られたが、仕方がない。
立派な蒔絵が施した駕籠が裏口診療所の前に、横付けされた。
診察すると、脚気だった。ビタミンB1製剤を静脈注射したら、あっという間に顔色が良くなった。どこかの藩の若様?は、入院したがったようだが、帰した。
供の者に、小麦胚芽粉末を渡し、食事の後に飲むように指示した。2~3日で完治されたそうな。当然です。
その噂が噂を呼び、毎日、脚気患者が列をなした。
脚気ごときで入院させたら、入院患者で溢れかえってしまう。
大大名は、金に糸目をつけず、どうしても入院させてくれと言ってくる。
話のタネに、異世界入院を体験したいのだろう。
千両箱を持ってこられたから、「一晩だけですよ」と念を押し、入院させることもあった。
最初に来た脚気患者の若様?が駄々をこねられ、治ったにもかかわらず入院された。
診療所ではなく、宿屋に商売替えするように進言されたこともあった。
いやいや、現代の事情で19床までしか置けないから。
入院目的で、裏口診療所は儲かった。いやいや賑わった。
と、ある夜、やけに裏口が騒がしい。
ふと見たら、真ん前の家から煙と炎がちらちら見えた。
「わっ!」驚いて、長屋の連中に消化器の使い方を教えてやって、消火活動を手伝った。
裏口から一歩も出られなかったが、消火剤で真っ白になり、すぐ消せた。
消火剤を洗わなければ、すぐに住めない。その家の住人を入院させた。
それからというものの、なんだかんだと理由をつけて長屋の連中が押し掛ける。
湯屋に行かなくても、いつでも入れる風呂、清潔な室内、臭くない便所、火を起こさなくても一瞬で灯る明かり、火鉢を置かなくても温かい部屋。
診療所のベッドは、かなりせんべい布団だと思うが、江戸時代の布団に比べるとふかふかで殿様以上の気分になる寝心地だそうな。
そして、何より楽しみなのが、愛妻の変わった?料理だそうだ。
何を食べても、おいしい。使われている食材は、わかるものもあるがよくわからない、食べると不思議に元気になる。
長屋より、快適な暮らしをしたいのだろうが、本当に必要な医療を提供するには、必要な患者しか対象にならない。
気持ちはわかるが、いつ、江戸時代との出口がふさがれるかわからない状態で必要以上の人数は、受け入れられない。
先生のところへ、住めるなら、長屋に火を点けようか、と冗談で話している奴までいる。
裏口診療所の入院施設について、ついに天子様から、お呼びがかかった。
しかし、例によって例のごとく、往診に行けないからとお断りしたら、あちらから行幸がありました。
天子様から頂いた宝箱のかわりに、チョコレートを差し上げました。
妻は、パンケーキをふるまっていました。
また、遊びにきていいか?と聞かれたので、「いつでも、どうぞ」と社交辞令ですよ。
「もう、来るな。」とは、言えないから。
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