2 / 24
江戸時代編
2.井戸クリニック
しおりを挟む
インフルエンザ予防注射の季節到来である。
今週から、京都市では、60歳以上の予防接種が解禁になり、朝から大賑わいだ。
1本4000円のワクチンが飛ぶように売れる?してくれと言われる。
中には、2回注射してくれと言われることがある。そういう時は、3週間後に予約を入れて、再び受診してもらう。
だいたい10日から2週間ぐらいで抗体ができる。
複数回打つとインフルエンザにかかりにくくなり、もし、かかってもすぐ治る。
医療関係者は、3か月に1回注射を打つ念の入れようだ。
65歳以上の高齢者で一定所得以下の者は、1本2000円で受けられ、さらに高齢者になると無料になる。
午前の診療は終わった。
一息入れて、コーヒーを飲んでいると、妻から食事の支度ができたと声がかかった。
「お父さん、長屋の人たちにもワクチン打っといたほうが、どうかしら?」
「うーん。裏口がインフルエンザ禍したら、困るな。」
「今年は、多目にワクチンを仕入れたから、いっちょサービスしとくか」
午後から、長屋のみんなに集まってもらうように、裏口で叫んだ。
全員が集まったのは、結局、夕方だった。
昼間は、仕事でみんな出払っている。
普通の注射でなくインフルエンザのワクチンは、医者でないと注射ができない。原則は。開業医の中には、看護師にさせているところも一部ある。医師が高齢で手が震えるなどの理由からだ。俺はまだ自分で打てる。
今日は、夜の診療がない時なので、長屋の連中を一人ずつ診察室へ招き入れた。
長屋の連中は、昼間以上の明るさの白い部屋に驚いた。丸いスツールに座らせ、二の腕をチューブ管で縛り肩口のところをアルコール綿で消毒するのは、妻だ。
用意ができたら俺がワクチンを注射していく。
「はい、チクっとしますよ。はい、大丈夫です。お疲れさまでした。」
小さい子供は、驚いて泣き出したので、キャラメルをやったら、すぐ泣き止んだ。
大の男が針を見ただけで、暴れるので押さえつけるのに苦労した。チョコレートを食べさせてやったらおとなしくなった。
長屋の全員に注射し終わってから、「今夜は風呂へ入ってはいけません。酒も今夜は飲んではいけません。」と注意事項を説明した。
「今年は、流行り病にかかる心配が減りました。」と告げて、全員を帰した。
それからは、ちょくちょく裏口診療所に人が来た。
珍しい菓子が食えると噂になったらしい。
俺ん家は菓子屋じゃねぇぞ、と怒ったが長屋の連中が健康になってくれるのだから、いいと思った。
その菓子を用意してくれるのは愛妻、だから文句が言えないのは、仕方がない。
今週から、京都市では、60歳以上の予防接種が解禁になり、朝から大賑わいだ。
1本4000円のワクチンが飛ぶように売れる?してくれと言われる。
中には、2回注射してくれと言われることがある。そういう時は、3週間後に予約を入れて、再び受診してもらう。
だいたい10日から2週間ぐらいで抗体ができる。
複数回打つとインフルエンザにかかりにくくなり、もし、かかってもすぐ治る。
医療関係者は、3か月に1回注射を打つ念の入れようだ。
65歳以上の高齢者で一定所得以下の者は、1本2000円で受けられ、さらに高齢者になると無料になる。
午前の診療は終わった。
一息入れて、コーヒーを飲んでいると、妻から食事の支度ができたと声がかかった。
「お父さん、長屋の人たちにもワクチン打っといたほうが、どうかしら?」
「うーん。裏口がインフルエンザ禍したら、困るな。」
「今年は、多目にワクチンを仕入れたから、いっちょサービスしとくか」
午後から、長屋のみんなに集まってもらうように、裏口で叫んだ。
全員が集まったのは、結局、夕方だった。
昼間は、仕事でみんな出払っている。
普通の注射でなくインフルエンザのワクチンは、医者でないと注射ができない。原則は。開業医の中には、看護師にさせているところも一部ある。医師が高齢で手が震えるなどの理由からだ。俺はまだ自分で打てる。
今日は、夜の診療がない時なので、長屋の連中を一人ずつ診察室へ招き入れた。
長屋の連中は、昼間以上の明るさの白い部屋に驚いた。丸いスツールに座らせ、二の腕をチューブ管で縛り肩口のところをアルコール綿で消毒するのは、妻だ。
用意ができたら俺がワクチンを注射していく。
「はい、チクっとしますよ。はい、大丈夫です。お疲れさまでした。」
小さい子供は、驚いて泣き出したので、キャラメルをやったら、すぐ泣き止んだ。
大の男が針を見ただけで、暴れるので押さえつけるのに苦労した。チョコレートを食べさせてやったらおとなしくなった。
長屋の全員に注射し終わってから、「今夜は風呂へ入ってはいけません。酒も今夜は飲んではいけません。」と注意事項を説明した。
「今年は、流行り病にかかる心配が減りました。」と告げて、全員を帰した。
それからは、ちょくちょく裏口診療所に人が来た。
珍しい菓子が食えると噂になったらしい。
俺ん家は菓子屋じゃねぇぞ、と怒ったが長屋の連中が健康になってくれるのだから、いいと思った。
その菓子を用意してくれるのは愛妻、だから文句が言えないのは、仕方がない。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
倫理的恋愛未満
雨水林檎
BL
少し変わった留年生と病弱摂食障害(拒食)の男子高校生の創作一次日常ブロマンス(BL寄り)小説。
体調不良描写を含みます、ご注意ください。
基本各話完結なので単体でお楽しみいただけます。全年齢向け。
【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。
それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。
訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語
37代目の魔女にされたので、
弥湖 夕來
恋愛
バスタブで足を滑らせたはずのわたしが溺れていたのは、不思議な湖だった。
助け上げてくれたのは好みの容姿の男性。
連れてこられた古風な住居で男は国の世継ぎであり、わたしは国付き魔女として契約させられる。
魔女と国王は結ばれてはならないという国の掟を超えて惹かれてゆくわたしの物語……
愛を駆け巡る
藍
恋愛
彼等にとって、あたしは恋のショートコントの一コマに過ぎなかった。21歳の冬から始まった、透明な時間。恋愛と依存を取り違えて、思い通りにならなかった一年間。絶対幸せになってやると決めた2024年はピンク色に染まるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる