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7移動診療所
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オリヴィアは、それからも移動サーカス団の団員の怪我を治し、感謝される。
たまたま通りかかったら、移動サーカス団が来ていると言うので、のぞいてみるとサーカスの花形団員が空中ブランコから落下した直後だったので、前世医者の知識を用いて、治療に当たった。
その後、サーカス団長から、お抱え専属医師として、働いてくれないか?との誘いを受け、承諾する。
報酬は1か月金貨100枚(日本円換算で100万円相当)だから、悪くはない。
それにサーカスのライオンちゃんとも仲良くなったので、しばらく領地へ帰るまでの間、ここでアルバイトをすることになったのだ。
それに医師としてだから、もしバーモンド殿下に見つかっても「偽聖女様」と言われる心配がない。
とにかく安全に領地へ帰るには、サーカス団に紛れることがいい。若い娘が一人旅をしているとロクなことがない。
ライオンちゃんは、火の枠繰りをしているとき、しょっちゅう自慢の鬣が焦げたり、やけどをするらしい。
団長と言葉が通じないから、オリヴィアが通訳して、ライオンちゃんの治療をしてあげたら、喜んでくれて、それで仲良くなったのだ。
「オリヴィア先生は、どこで医術を磨かれたのですか?差支えない程度でお話しできませんかね?」
団長に聞かれるも、本当のことを言っていい?
「実は……、ここだけの話にしてくださいますか?」
「もちろんだよ。差支えない範囲でいいんだよ。」
「学園を追い出されてから、夢を見て、それで前世の記憶を思い出してしまったのです。前世、もっと医術が発展しているところで、医者をしておりましたの。だから、何も道具がなくても、人間のカラダの構造がわかっているので、ある程度のことはできます。」
「ええ!オリヴィアは前世の記憶持ちってことか?」
「くれぐれもご内聞に。それに前世では、団長と同じ年頃の男性でしたの。」
「こりゃ、また……。」
団長ほど、ハゲてはいないという言葉を飲み込んだ。
それからというもの、団長はサーカス以外にオリヴィアの医術を売り物にしたのだ。ただし、サーカスの入場客に限る。とすると、列をなして、客が入ってくるようになったのだ。
この世界に近代医術の考え方はない。病気やけがをした場合、薬草を摘んできて、すりつぶし患部に貼り付ける方法しかない。
だから体の不調や発熱、大けがをしてしまったら、後はもう死ぬことを待つしか手立てはない。
だから団長からすれば、たまたま拾った小娘が前世男性の医者であったことは、まさに好都合なこと。
隙間産業と言うべきか?
最初は聖女様を疑ったが、話を聞くと、聖女様と言うより、男性医師だったという話がしっくりくる。
それにオリヴィアが来てからはと言うもの、団員の怪我がめっきり少なくなった。なくなったと言っても過言ではないぐらいにだ。
今迄サーカスの興行権を確保するのに、けっこう四苦八苦していたのだが、オリヴィアが加わってからというもの、御領主様のほうからお声がけしてくださるようになったことは大きい。
まるで移動診療所のようになっている。
診察室はテントの一画、まるで野戦病院のような感じ。
「ああこれは、風邪ですね。十分水分を取り、できればオレンジなどの柑橘系の果物を一緒に食べさせてください。暖かくして寝ていると治りますよ。熱があるときはお風呂を控えてください。下がれば、お風呂に入っていいですよ。」
「先生、ありがとうございました。これはわずかですが、お礼に。」
オリヴィアは受け取ろうとしないのに、団長がもらってしまう。
「お心遣いありがとうございます。」
たまたま通りかかったら、移動サーカス団が来ていると言うので、のぞいてみるとサーカスの花形団員が空中ブランコから落下した直後だったので、前世医者の知識を用いて、治療に当たった。
その後、サーカス団長から、お抱え専属医師として、働いてくれないか?との誘いを受け、承諾する。
報酬は1か月金貨100枚(日本円換算で100万円相当)だから、悪くはない。
それにサーカスのライオンちゃんとも仲良くなったので、しばらく領地へ帰るまでの間、ここでアルバイトをすることになったのだ。
それに医師としてだから、もしバーモンド殿下に見つかっても「偽聖女様」と言われる心配がない。
とにかく安全に領地へ帰るには、サーカス団に紛れることがいい。若い娘が一人旅をしているとロクなことがない。
ライオンちゃんは、火の枠繰りをしているとき、しょっちゅう自慢の鬣が焦げたり、やけどをするらしい。
団長と言葉が通じないから、オリヴィアが通訳して、ライオンちゃんの治療をしてあげたら、喜んでくれて、それで仲良くなったのだ。
「オリヴィア先生は、どこで医術を磨かれたのですか?差支えない程度でお話しできませんかね?」
団長に聞かれるも、本当のことを言っていい?
「実は……、ここだけの話にしてくださいますか?」
「もちろんだよ。差支えない範囲でいいんだよ。」
「学園を追い出されてから、夢を見て、それで前世の記憶を思い出してしまったのです。前世、もっと医術が発展しているところで、医者をしておりましたの。だから、何も道具がなくても、人間のカラダの構造がわかっているので、ある程度のことはできます。」
「ええ!オリヴィアは前世の記憶持ちってことか?」
「くれぐれもご内聞に。それに前世では、団長と同じ年頃の男性でしたの。」
「こりゃ、また……。」
団長ほど、ハゲてはいないという言葉を飲み込んだ。
それからというもの、団長はサーカス以外にオリヴィアの医術を売り物にしたのだ。ただし、サーカスの入場客に限る。とすると、列をなして、客が入ってくるようになったのだ。
この世界に近代医術の考え方はない。病気やけがをした場合、薬草を摘んできて、すりつぶし患部に貼り付ける方法しかない。
だから体の不調や発熱、大けがをしてしまったら、後はもう死ぬことを待つしか手立てはない。
だから団長からすれば、たまたま拾った小娘が前世男性の医者であったことは、まさに好都合なこと。
隙間産業と言うべきか?
最初は聖女様を疑ったが、話を聞くと、聖女様と言うより、男性医師だったという話がしっくりくる。
それにオリヴィアが来てからはと言うもの、団員の怪我がめっきり少なくなった。なくなったと言っても過言ではないぐらいにだ。
今迄サーカスの興行権を確保するのに、けっこう四苦八苦していたのだが、オリヴィアが加わってからというもの、御領主様のほうからお声がけしてくださるようになったことは大きい。
まるで移動診療所のようになっている。
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「ああこれは、風邪ですね。十分水分を取り、できればオレンジなどの柑橘系の果物を一緒に食べさせてください。暖かくして寝ていると治りますよ。熱があるときはお風呂を控えてください。下がれば、お風呂に入っていいですよ。」
「先生、ありがとうございました。これはわずかですが、お礼に。」
オリヴィアは受け取ろうとしないのに、団長がもらってしまう。
「お心遣いありがとうございます。」
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