9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
上 下
78 / 82

78

しおりを挟む
 僕たちは、彼女たちがどういう状況で何をしてきたのか知らなかった。今は多少なりとも知っている。
「でもわかるよ、こわかったって……私たちだって怖い……でもあなたたちより私たちはもっと怖かった」
 ヒロミが僕たちを見ずに言う。
「僕たち、いや、僕は君たちから逃げるように――」
「そうだね、一度だって立ち止まらなかった」
 どこか僕は彼女が弱弱しく見えた。同時に自分も弱くて向き合えていないと感じた。鏡を見ているような、そんな気がした。
 僕たちと比べて、ヒロミとアイは二人だけだった。寄り添い合って今まで乗り越えてきたんだろう、さっきだって二人でこのアーネルトとアンネイたちからの脅威に立ち向かった。
 
「僕は、僕たちはヒロミとアイの事を知らない。何があってどうやってここまで来たのか、だから教えてくれ。僕は今までの事を話したい。これだって、このことだって僕たちがお互いに気づいたことを話して、それでやっと生き延びてこれた。だから、せめて、その、一緒にいるのは難しいかもしれないけれど……友だちになってくれませんか!」
 僕はアーミーナイフを出し、互いに知らなかった事を共有して生き延びる事が出来たというこれからに繋がる話をした。多分、もしかしたら一緒にはいたくないと断られるかもしれないけれど、互いに情報を交換し、何かあったら助け合えるそんな仲になれればと思った。
 
「い、嫌だ。そ、そんな事いって、ど、ど、どうせ私たちを都合よく利用するだけでしょ」
「そ、そんなつもりは――」
「私たちが気持ち悪いモンスターたちを倒してきた、これからだって倒して、倒しつくす。あ、あなたたちが私たちを利用しようとするなら、こ、殺す!」
 ヒロミが僕たちに対して殺す、と言った瞬間、近くで誰かが銃を構える音がした。
 
 誰か、誰かなんて僕たちの中の誰かだ。
 
「ほらね、利用できないから排除しようとするんだ!」
 ヒロミが言った相手は二丁の銃を構えていた。
 
「やめろ!」
 僕はヒロミとアイの前にたち、銃を構えて泣きそうな顔をしているハルミンに立ちはだかった。
「どいてよ! こいつら殺すって言った。殺されるくらいなら殺すわ! もう嫌なの! こんな世界のどこで生きていけって言うの! 元のさぁ、元の世界にさ、帰りたいのに、もしかしたら、こいつらが知っていたかもしれないのに、私、私たちだけでどうやって元の世界に帰るっていうの! もういやぁぁぁ!!!!」
 
 ハルミンは泣き叫んだ。銃口は下に向けられ、銃が地面に落ち、ハルミンは座り込んで泣いた。
 
「難しいし、つらいけど、探すしかない。これから色々しって生きなきゃいけないんだ。たまたま運が良く自分たちが生き延びてきた。そして、騙されて殺されるところを運よく助かった。ヒロミとアイのおかげもあって、助かった、それでいいだろう……」
 僕はハルミンに手を貸して、立ち上がらせ、背中をさすった。
「ヒロミ、アイ、僕の仲間が銃口を向けてごめんな。僕たちはここから去るよ。その施設にある円状のケースに入ってる僕たちの仲間だった人がいるんだ。可能なら埋葬してくれると嬉しい。あとさ……も、もしこれからどこかで会ったら一緒に協力し合わないか? 協力できなくても会話でもいい、何かあれば僕は君たちを助ける」
 
「べ、別に構わない。い、嫌じゃねぇし」
「私も、別に」
 ヒロミとアイは今は無理でも次はと約束してくれた。僕たちには時間が必要だと思った。
 
 僕はマナチ、ハルミン、ツバサ、ジュリをそれぞれ見て、伝える。
「出よう、この街から、とりあえずはあの光りを目指して、確かめてみよう」
 みんなそれぞれ頷き、病院だと思っていた施設から出る事にした。
 
 僕はそういえば、瓦礫の山で拾ったデジカメを思い出し、ポケットからでした。二人の方を向き、そのデジカメをアイに渡した。
「あ、私の……」
「お前は……律儀な奴だな」
「これって、その……」
 中身を見た事やどう言ったらいいのか整理が付かず言い淀んだ。
「ありがとう、ふへへ」
 アイはおどおどとしながらも、デジカメを受け取りぎこちなく笑っていた。そういえば、ツバサとジュリも最初はこんな感じだったことを思い出した。
 僕は持ち主に返す事ができ、僕はこれ以上話す事もないのでマナチたちの方へ向かった。
 
 病院だと思っていた施設から出て、空を見上げるとこの世界に来た時と変わらないどんよりとした曇り空と遠くの方で光りが見えた。爆発の音もせず、マンホールから炎が湧き出てる音があたりを支配していた。僕たちは互いに見つめ合った。
 
「これからどうしようか、ってあの光りを目指すんだよね」
「ああ、この街から出る事になるけれど、いいか? その……ムッツーとタッツーの事」
 僕はムッツーとタッツーのことをあの二人に任せてしまった。ハルミンには何か悪い事をしてしまったような気がした。
「ううん、いいの……二人が、二人が私たちに残してくれたものがあるから」
 ハルミンは両手に持った銃を見て、泣いていた。マナチは彼女の背中をさすっていた。
「も、持ち歩くよりもこのドローンで一緒に追従させるのはどうかな、そのなんていうか――」
「そうね! ってさっきは勝手に銃を構えた時に召喚したけれど、ドローンってどうなったの?」
「あ、銃だけ消えました。なのでこの通り」
 ハルミンの横にドローンが近寄り、なんか銃を返してもらいたそうにしているようだった。
 
「ヨーちゃん、その……私、気になっていたのですがヒロミはどうやって瓦礫の山でシュシャを敵だとわかったんでしょうか?」 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...