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しおりを挟む「この地下水路は、通路に案内図があるので地上に戻るルートがいくつかあるのがわかります。ここが多分最短なんじゃないかなと思います」
通路の途中にあった案内図の前で僕たちはどっちに向かうか相談し合っていた。
「でもこの最短だとあのミミックの死骸を通る事になるよ?」
マナチがあれにはもう会いたくないという思いがにじみ出ていた。僕も可能なら会いたくない。
「今度あったら絶対倒す」
ハルミンが鼻息を荒くしていた。両手にはムッツーとタッツーの銃を装備しており、総合火力ではハルミンが持ってる銃と比べてどちらが上なんだろうと疑問に思った。狭い通路だと大きな銃よりも二人の銃の方が取り回しがいいのだろうと僕は思う事にした。
「最短なら、その場所を通ろう。死体も念のため、確かめたい。ベェスチティのように核のようなものがあってそれを壊さないと倒せない生物かどうか知っておかないといけない気がする」
「あ、たしかに」
「ですねぇ」
マナチとジュリが肯定してくれた。
「よし、最短ルートで地上を目指していこう」
+
僕たちは警戒しながら、襲われた場所までやってくるとそこは何事もなかったようにきれいになっていた。
「え、どういう事だ?」
「……つまり、ベェスチティのように弱点的な場所をやらないと生きている可能性があるってこと?」
「その可能性は高そうですね、体液と思われる透明な汁が引きずっていったような跡がありますね。あと回復したのか、汁が消えていますね……」
ジュリは現場付近にしゃがみ込み、地面を見て分析していた。身体は子ども、頭は大人な探偵か?
「むっ、何か?」
「いや、すごいな、と」
僕の考えを読み取ったのか、ジュリが振り向いて僕の方を見た。す、鋭い。
「しかも、この方向は地上への最短ルート……」
生存確率を見ると60%のままだった、このまま最短ルートを進んだとして、生存確率が下がるようなら引き返せばいいと僕は思った。
「生存確率が下がったら引き返そう、そうじゃないなら僕たちなら行けるはずだ」
みんな頷き、最短ルートを進むことにした。
通路を警戒して進んでいくと地上出口に繋がる場所に何事もなく到達できた。しかし、その出口は扉で閉まっていた。扉を開けようとしてもドアノブのようなものはなく、左右から壁が閉じている状態だった。
「これってここからじゃ開かないっていうパターン?」
僕は扉の前で立ってぼそりと愚痴る。近くにいるツバサが何か見つけたのか扉の横にあるパネルのようなものの前で腕を組んでいた。
「もしかしてパスワード入れないと開かないみたいなやつだったりする?」
ツバサの方に聞いてみると、頭をひねっていたので、多分なにか考え事をしていて聞こえていないなと思った。
「ロックかかってますね、多分私たちが落ちてきた際にあった爆発でロックがかかったっぽいような気がします。解除するには……多分、この案内図にあるコントロールセンターに行って、なんかすれば多分扉は開くはず」
「なんかすればって……」
「しょうがないじゃないですか、ゲームとか映画だとそうなんですから」
近くにある電話機にジュリが触れ、持ち上げていた。
「それって通じてるの?」
電話機を耳につけていたが、何もないのか電話機を元に戻した。
「いえ、特に何も音もしませんでした。使えるのかなと思ったのですが、ダメでしたね」
「まあ、とりあえず行って確かめてみるか」
僕たちは案内図に書かれている管制室に向かう事にした。
数十分ほど歩いていると、案内図になかった壁が目の前に存在していた。
「あんな壁あったか?」
先行していた僕がその壁に近寄ろうとした瞬間、後ろから声をかけられた。
「後ろに飛んで! ミミックだ!」
突如、壁が歪み、何本もの触手へと変わった。頭を狙ってきた触手から逃れるため、僕は腰を抜かすように、その場で尻もちをつきながら銃を構え、後ろに後ずさろうとした。
「そのまま伏せてて!」
ハルミンの声がすると高性能サイレンサーで抑えられた銃声が聞こえると空を切った触手が砕けながら四散していった。
「死ねッ! 死ねッ! 死ねッ!」
ハルミンが殺意力高い言葉を叫んでいるのが聞こえ、僕はハッとし、構えていた銃の引き金を絞った。マナチ、ツバサ、ジュリも銃で応戦し、壁に擬態していたミミックは次第に細かな肉片へと変わっていった。地面に四散している肉片を見ると、まだ微妙に生きているのかぴくぴくとうごめいていた。
「これまだ生きているのか……?」
まだ四散した別の肉片を目指そうともぞもぞと動いているようだった。だが、次第に動きが鈍くなり、動かなくなっていった。
「粉々にするくらいにしないと倒せない、ってことか」
僕は肉片を見ると、汁のようなものも飛び散っており、気持ち悪く思った。服にも飛んでいたので、自身にアビリティ・スキルの洗浄を使い、綺麗にした。
「ハルミン、ありがとう。助かったよ」
お礼を言うとハルミンは頷き、満足気な表情をしていた。防護マスクで口元は見えないが、笑っているような気がした。
僕たちは警戒しながらコントロールセンターへと向かった。
「ところでさ、人工筋肉と人体強化のおかげで疲れがしないし、こうやって歩いている時に頭の位置が上下に揺れないよな」
身体の体幹がガラッと変わったというか整っているためか、バランスが気持ち悪いほど向上した。普通に歩いているのに、みんな足音が無くなり、銃を構えながら歩いていても疲れない。疲れる気配がしない、それに頭の位置が歩いていても上下しないのだ。
「実は、私が持ってる軽量散弾銃が片手で撃てるようにありました。もう片方に廃墟の街でベェスチティのリーダーに取り込まれたアカネの固有アビリティの銃があって、それも軽量散弾銃なのですが両手装備できそうです」
ジュリの総合火力が上がるなと思った。
「なんかすごそうだな……ん、待てよ……そういえばアカネがつかっていた致死性の毒ガスってあったよな。あれも、もしかしてあったりするのか?」
「ん~……あ、ありました! 生物類に致死性の毒を散布するって書いてあります。細胞を活性状態から非活性状態にし、死滅させる。空気より重く、紫外線と空気によって分解されると書かれてます……控えめにいってとても危険な化学兵器ですね。あれ……?」
「どうした?」
ジュリが説明文を読んでいる最中、首を傾げはじめた。
「注意書きがあって、使用者とパーティメンバーは効果無効と書いてあります」
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