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*高架下

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【※注意!寛哉以外との無理矢理表現があります。最中の描写はありませんが、ご注意ください。苦手な方はこちらの話を飛ばしていただいても大丈夫だと思います……】






 この高架下は、昼間でも薄暗い。夜になれば通路の中央部は光も届かず、暗闇に包まれていた。
 剥き出しの鉄骨が並び、陰になる場所や窪んだ部分も多い危険な場所だった。
 それは周知の事で、夜に近付く者は居ないに等しい。

 みやびから貰った情報の中に、この高架下があった。寛哉ひろやから伝えられたシロに関する少ない情報だけで、幾つか候補を挙げたのだ。

 北口を出てすぐの路地裏は調べた。
 公園の奥も。

 いくらシロとはいえ、まさかこんなあからさまに危険なところには……。
 そう思いながら脚を踏み入れると、暗がりから微かな声が響いた。


「……、だ……、めて……」


 まさか……。

 息を潜め、長い通路の奥へと足早に進む。
 すると。


「やっ、やだっ……」

 剥き出しの鉄骨の陰から、怯えた声が響いた。

「いやぁっ、ッ……!! んンッ……!!」

 声がくぐもったものに変わる。
 その場に辿り付いた時、シロは壁に押し付けられ、手のひらで口を塞がれ体中をまさぐられていた。

 カッとなり手を出しかけて、寛哉は動きを止める。
 このまま殴り飛ばしてはシロまで巻き込むかもしれない。冷静になれ。そっと息を吐き、一度怒りを押し込めた。
 そして困ったような顔を作り、背後から男に声を掛ける。

「あの、弟が何か?」

 暗くて見えないふりをして。
 すると男は、何事もなかったようにシロから手を離した。

「……ご兄弟ですか? 私、補導の者ですが、こんな時間に未成年を独りで歩かせるのは」
「ああ、すみません。駅前で人が多くてはぐれてしまって。先程連絡を貰って迎えに来たところです」

 にこやかに話しかけると、男は油断した顔をする。シロは恐怖のあまり声も出せず、男の陰でただ震えていた。

「弟はまだ幼いので、泣いていたでしょう?」
「そうですね。暗い中に独りで、不安だったんでしょう」

 男はそう言って笑った。


 ……そうか。泣いていたのか。


「やはり、そうですか。…………で? てめぇはそんな子供を泣かせて、何をしようとしていた?」
「は……、がっ!」

 にこやかな顔のまま、男の首を掴み壁に叩き付ける。

「随分熱心な補導だなァ? こいつはヤクでも隠してたか? あァ?」

 腹を蹴られ、ますます首を絞められて、男がもがき苦しむ。
 このまま絞めるか、タマでも潰すか。
 後者を選び、地面へと落とそうとした、その時。

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