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転2
しおりを挟む陽は落ちて、辺りは暗くなっていた。
息を切らしたまま、土の地面を蹴る。
ぽつぽつと立った街灯が、ぼんやりと白い光を落としていた。
それでも。
暗くても、分かる。
何年もずっと、彼だけを見てきたのだ。
二通目のメールで指定された公園の、池の傍。
「航……」
掛けた声は、酷く震えてしまった。
「みつき。来てくれたんだな」
明るく笑い駆け寄って来るその顔は、……まるで、出逢った頃のようで……。
「この間は悪かったよ。ついカッとなっちまってさ」
そう言って、抱き締めてくれる。
「みつき。俺が言ったから、あいつのとこにいるんだろ?」
優しい声で、名前を呼んでくれる。
「俺の事、そこまで想ってくれてるんだな」
あの頃みたいに、嬉しそうに……。
「……なあ、もう一度、やり直せないか?」
そっと体が離れ、両手を繋がれる。
「虫のいい話だって分かってる。でも、俺にはみつきが居ないと駄目なんだ」
“俺、みつきが居ないとだめになりそう”
航はいつも、困ったように、でも嬉しそうに笑ってくれた。
「みつき。一緒に帰ろう?」
繋がれた暖かな手。
優しい笑顔。
あの頃のような、優しい声で。
「っ……わた、る……」
ずっと、ずっと、待っていた。
きっと迎えに来てくれると、信じていた。
だって、航の言う通りにしたから。
航が言う通りに、いい子にしてたから。
だって、一番役に立てるのは、俺だから。
一番、航の事を想っているのは……。
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