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嫌じゃないけど

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 暖人はるとが良いならと、ウィリアムは次の問題を思案する。

 暖人の部屋は、やはりまだ暖人と自分とオスカー、三人だけの記憶のままにしておきたい。
 涼佑りょうすけの部屋は、暖人と二人だけの記憶にしておきたいだろう。
 自分の部屋は……やはり暖人と二人だけが良い。

 暖人は落ち着かないかもしれないが他の客間で、とウィリアムが口を開きかけた時。


「ウィル。俺が泊まる時の部屋はすぐに使えるか?」
「ああ、勿論だが……君の部屋でも、まだだろう?」
「ここは俺の屋敷じゃないからな。構わん」

 あっさりと言い、暖人を子供のように抱えて立ち上がった。
 横抱きでもなく、向かい合わせのまま。

(結構、雑!)

 廊下に出るとヒョイと肩に担ぐように運ばれ、漫画で見た麻袋の気分。

「オスカー、ハルトの事はもっと丁重に扱ってくれ」
「横抱きの方が恥ずかしいだろ」
「え、っと、はい……結構雑だなと思いましたけど、この方がいいです。……オスカーさん、本当に力が強いですよね」
「お前が軽すぎるんだ。あれだけ食っておいてな」

 ここ最近は浄化の力を使っていないというのに、食べた物は一体何処へ行っているのか。
 さわ、と尻を触るオスカーに、セクハラですよ! と暖人はベシベシとオスカーの背を叩いた。



 部屋に着き、暖人は「シャワー借ります!」と言ってバスルームへと駆け込む。そうしなければすぐにベッドに連れ込まれていただろう。
 手早く体を洗い、バスローブを着て部屋に戻ると、オスカーだけになっていた。ウィリアムと涼佑は自分の部屋へシャワーを浴びに行ったらしい。

 暖人と入れ替わりにオスカーがバスルームへと向かう。
 ひとまずカーテンをしっかりと締めてからベッドに上がった暖人は、膝を抱えた。

(……オスカーさんと同じにおいがする)

 滞在中のオスカーと同じ、柑橘系のシャワージェルを使ったのだから当然なのだが。
 すんすんと鼻を動かしてしまう。オスカーの屋敷に滞在していた時も、彼と同じ香りがしていた。まだそんなに時は経っていないのに懐かしい。

 さっぱりとした男同士の行為で、部屋が明るくてもそんなに恥ずかしくない時も多かった。だが。


「ご飯の後って言えば良かった……」

 ぽつりと呟き、もそもそと布団の中に潜り込む。
 カーテンを締めてもまだ、夏の燦々と輝く太陽が主張してくる。涼佑の部屋よりは光を遮る紺色のカーテンではあるが。

(三人と、かぁ……)

 覚悟を決めたものの、早まった感がある。
 あのイケメンたちが、三人。
 あのとんでもないテクニック持ちが、三人。
 涼佑は見ているだけと言ったが、それももはやカウント内。

「うー……、三人と……かぁ……」

 うんうんと呻きながらゴロゴロする暖人を、すでに戻って来ていたウィリアムと涼佑が扉の陰で見つめながら静かに悶えていた。
 あまりにも、可愛い。







「無理でした」

 裸でベッドに仰向けになり、暖人は両手で顔を覆った。
 見下ろすのはウィリアムとオスカー。先程横を向いたら、椅子に座りわりと近くにいた涼佑と目が合った。

「あ、ごめん。少し下がるね」
「距離の問題じゃないんだよっ」

 わっと声を上げる暖人を、皆微笑ましく見つめた。

「ハルト、嫌ならまた今度涼佑と、俺とオスカーのうちどちらかとでも」
「い…………嫌じゃ、ないんですけど……」

 嫌かと言われれば、嫌ではない。

「……三人ともあまりに顔がいいのと、涼佑がすごく見てくるから恥ずかしくて」

 想像していた何倍も恥ずかしい。涼佑の目力がすごい。

「ごめんね、はる。僕としてる時のはる以外知らないから、はるの事は、全部知りたいよ」
「それは知らなくていいんじゃないかな?」
「知りたいですよね、ウィリアムさん」
「俺かい? そうだね。俺もリョウとしている時のハルトを知りたい気持ちはあるよ」
「ほら」
「本当にウィルさんと仲良くなったよねっ」

 ううっと顔を覆ったまま呻いた。


「俺には訊かないのか?」
「あなたは別にいいです」
「俺は、お前たちに抱かれるより俺に抱かれるコイツの姿をもっと見たい」
「そんな事だろうと思いましたよ」
「オスカーは昔から自分に自信があるからね。他人がどうしているかなんて関係ないんだよ」
「嫌味か?」
「本心だよ。格好良いよね」
「お前に言われてもな」

 肩を竦めるオスカーに、ウィリアムはくすりと笑う。

「お二人で始めるなら、僕と暖人は部屋に戻りますけど」
「やめろ」
「やめてくれ」

 お互いそんな気は一切ないとばかりに眉間に皺を寄せた。

 そんな三人のやり取りに、暖人は思わず吹き出してしまう。

「仲良しになってくれて、嬉しいです」
「僕は違うよ?」
「涼佑もオスカーさんと普通に話すようになったし」
「そんな事ないよ?」

 断じて違う、とばかりに首を振る涼佑に、くすりと笑った。

「なんだか気が抜けました。それに、こっちの方が良さそうです」

 暖人は体を起こし、ペタリと座って二人を見上げる。横になって見下ろされるより、こちらの方が緊張も恥ずかしさも少ない。


「ウィル」
「ああ」

 二人は互いを見て、突然じゃんけんを始めた。

「はる。この二人のじゃんけんって」
「うん、申し訳ないけど分かる」

 筋肉隆々のイケメン二人が真剣にじゃんけんをしている姿は、ミスマッチというかギャップが可愛いというか。
 暖人は可愛いなと思えるが、涼佑は笑いを堪えて口元がぷるぷるしていた。

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