47 / 172
必ず知っておいて欲しい事
しおりを挟む「ハルト。君の世界との違いで、必ず知っておいて欲しい事があるのだが」
ウィリアムの神妙な声が聞こえた。
「……必ず、ですか?」
「ああ。身を守る為にも必要な事だよ」
ゆっくりと言い聞かせるように紡ぐ。
暖人はそっと布団を下ろし、目元だけ覗かせてウィリアムを見つめた。視線を合わせたウィリアムは、やはり深刻な顔で。
「互いに深く想い合っている状態で、注ぐ側の性欲や精子が強い場合には、子を成すまでに一週間も必要ない場合があるんだ」
「……………………えっ」
何度も脳内で反芻し、理解した途端にサァ……と血の気が引いた。
(もしかして、俺……)
そっと腹に触れる。昨夜は強請って二人共に中に出して貰った。
だが以前二人とした時も、大公領で涼佑とした時も大丈夫だった。それはたまたま出来なかっただけ、という……?
(でも、ウィルさんは知っててそんなことする人じゃない……)
でも、と顔を青くして視線を伏せる暖人の頬を、ウィリアムが優しく撫でる。
「俺たちは……特に俺は多分、強い方だから、三日以上は危険だろうね」
「三日……」
それなら、昨日の事で出来たりはしない。
安堵のあまり涙目になってしまった。
「昨夜のようにハルトの心が欲しがっていないなら、四日くらいかな」
「……四日」
それでも四日。
確かに強そうだから、とウィリアムとのあれこれを思い出し、納得する。きっとオスカーも一日くらいしか違わないはず。
「……涼佑は」
「俺よりも強い可能性があるかな?」
「…………どうでしょう」
元の世界ではほぼ出来なかったし、今も離れている時間が長い。我慢出来ているなら、ウィリアム程ではない……と思いたいが、どうだろう。性欲=回数という訳でもない。
「何にしろ、印が現れるからそれを見逃さないようにしないとね」
すり、と臍の下を撫でられ、びくりと跳ねる。
「っ……俺、異世界人ですし、違うところに出るかもです……、その時は教えてください」
「勿論だよ。ハルトの意思に反して子を成したりはしない」
大丈夫だと言うように頬を撫でる。オスカーも髪を撫で、頷いた。
二人に撫でられ、そっと視線を伏せる。知らなかったとはいえ、大変な事になるところだった。
昨夜は二人を心から欲しがって、二人分の精を受け入れた。理性を飛ばして、二人の子種が欲しいと心から思って。
(ウィルさんが大丈夫って言ってたから、大丈夫なんだろうけど)
その辺りの信用度は高い。
(俺がねだったから、叶えてくれたんだろうな……)
欲しがる暖人に、オスカーは躊躇っていた。いつになく理性を飛ばして欲しがっていたからだ。
ウィリアムがオスカーに大丈夫だと言って説得したのは、元からある知識に加え、暖人に出逢ってから性に関する情報を再度掻き集めたからだ。
この世界では男女でもそう簡単に出来る訳ではなく、だからこそウィリアムも公爵家という身分ながら来る者拒まずで受け入れていた。勿論、避妊具を付けずに行為に及んだのは暖人が初めてだが。
二人を交互に見つめ、暖人はまた視線を伏せる。
「……二日なら、大丈夫なんですよね?」
「ああ。それは確実だと自信を持って言えるよ」
「それなら……やっぱり俺、付けないでされる方が好きです」
ぽつりと呟いた声に、二人は目を見開く。
「この世界でも、子供が出来る以外にも、衛生的な事とか体への負担とか色々あるとは思いますけど……」
体が抱かれる気になれば中が勝手に綺麗になるなら、その辺りはどうだろう、と思いつつ今は聞く雰囲気ではない気がした。
「やっぱり、……嬉しい、ですし」
好きな人のものがナカへと注がれる感覚は、形容しがたい多幸感がある。
「でも、体の変化にはちゃんと気を付けます。俺はまだ親になれる自信ないですし、今そんなことになったら絶対迷惑かけると思いますし」
「迷惑ではないな」
「そうだね。ハルトの事で迷惑など、何一つないよ」
二人は優しく暖人を見つめた。
「ただ、以前言ったように、まだ俺たちはハルトを子供に取られたくないんだ。だから、まだまだ先だね」
そう言って柔らかな笑みを浮かべるウィリアム。目を細め髪を撫でるオスカー。そんな二人に、暖人もふわりと笑みを浮かべた。
……それに、もし子を成すなら、最初は涼佑でなければ暖人は一生心苦しい思いをするだろう。
二人は同じ事を思う。
自分たちに向けられる愛情は確かでも、涼佑だけは、特別なのだから。
・
・
・
オスカーに抱き上げられてバスルームへと向かい、支えられながらウィリアムに体を洗って貰った。
すっきりとした暖人がソファに座って水を飲んでいる間に、ウィリアムの手でベッドメイクされる。
汚れたシーツにウィリアムは嬉しそうに目を細め、それをバスルームへと持って行き、ゴミ箱へと放った。さすがにこれを女性に洗わせる訳にはいかない。
暖人と想いが通じ合った日、早くシーツも捨てられるような関係になりたいと願っていた。
あれからそう経たないうちに、こんなに何度もぐしゃぐしゃなシーツを捨てられる日が来るとは。
「……気付かれたらやはり、勿体ないと怒られるだろうな」
怒る暖人も可愛いが、怒らせ過ぎても可哀想だ。
暖人が気になるなら少しグレードを落としたものに変えようかと考え、すぐにやめた。やはり暖人には最上級の物に触れていて欲しい。
上機嫌で戻ろうとして、鏡に映った己の顔にハッとする。さすがに緩み過ぎだ。
いけない、と深く息を吐き、心を落ち着ける。そして表情を穏やかな笑みに変え、暖人の元へと戻ったのだった。
12
お気に入りに追加
914
あなたにおすすめの小説
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる