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必ず知っておいて欲しい事

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「ハルト。君の世界との違いで、必ず知っておいて欲しい事があるのだが」

 ウィリアムの神妙な声が聞こえた。

「……必ず、ですか?」
「ああ。身を守る為にも必要な事だよ」

 ゆっくりと言い聞かせるように紡ぐ。
 暖人はるとはそっと布団を下ろし、目元だけ覗かせてウィリアムを見つめた。視線を合わせたウィリアムは、やはり深刻な顔で。


「互いに深く想い合っている状態で、注ぐ側の性欲や精子が強い場合には、子を成すまでに一週間も必要ない場合があるんだ」
「……………………えっ」

 何度も脳内で反芻し、理解した途端にサァ……と血の気が引いた。

(もしかして、俺……)

 そっと腹に触れる。昨夜は強請って二人共に中に出して貰った。
 だが以前二人とした時も、大公領で涼佑りょうすけとした時も大丈夫だった。それはたまたま出来なかっただけ、という……?

(でも、ウィルさんは知っててそんなことする人じゃない……)

 でも、と顔を青くして視線を伏せる暖人の頬を、ウィリアムが優しく撫でる。

「俺たちは……特に俺は多分、強い方だから、三日以上は危険だろうね」
「三日……」

 それなら、昨日の事で出来たりはしない。
 安堵のあまり涙目になってしまった。

「昨夜のようにハルトの心が欲しがっていないなら、四日くらいかな」
「……四日」

 それでも四日。
 確かに強そうだから、とウィリアムとのあれこれを思い出し、納得する。きっとオスカーも一日くらいしか違わないはず。

「……涼佑は」
「俺よりも強い可能性があるかな?」
「…………どうでしょう」

 元の世界ではほぼ出来なかったし、今も離れている時間が長い。我慢出来ているなら、ウィリアム程ではない……と思いたいが、どうだろう。性欲=回数という訳でもない。


「何にしろ、印が現れるからそれを見逃さないようにしないとね」

 すり、と臍の下を撫でられ、びくりと跳ねる。

「っ……俺、異世界人ですし、違うところに出るかもです……、その時は教えてください」
「勿論だよ。ハルトの意思に反して子を成したりはしない」

 大丈夫だと言うように頬を撫でる。オスカーも髪を撫で、頷いた。

 二人に撫でられ、そっと視線を伏せる。知らなかったとはいえ、大変な事になるところだった。
 昨夜は二人を心から欲しがって、二人分の精を受け入れた。理性を飛ばして、二人の子種が欲しいと心から思って。

(ウィルさんが大丈夫って言ってたから、大丈夫なんだろうけど)

 その辺りの信用度は高い。

(俺がねだったから、叶えてくれたんだろうな……)

 欲しがる暖人に、オスカーは躊躇っていた。いつになく理性を飛ばして欲しがっていたからだ。

 ウィリアムがオスカーに大丈夫だと言って説得したのは、元からある知識に加え、暖人に出逢ってから性に関する情報を再度掻き集めたからだ。
 この世界では男女でもそう簡単に出来る訳ではなく、だからこそウィリアムも公爵家という身分ながら来る者拒まずで受け入れていた。勿論、避妊具を付けずに行為に及んだのは暖人が初めてだが。


 二人を交互に見つめ、暖人はまた視線を伏せる。

「……二日なら、大丈夫なんですよね?」
「ああ。それは確実だと自信を持って言えるよ」
「それなら……やっぱり俺、付けないでされる方が好きです」

 ぽつりと呟いた声に、二人は目を見開く。

「この世界でも、子供が出来る以外にも、衛生的な事とか体への負担とか色々あるとは思いますけど……」

 体が抱かれる気になれば中が勝手に綺麗になるなら、その辺りはどうだろう、と思いつつ今は聞く雰囲気ではない気がした。

「やっぱり、……嬉しい、ですし」

 好きな人のものがナカへと注がれる感覚は、形容しがたい多幸感がある。

「でも、体の変化にはちゃんと気を付けます。俺はまだ親になれる自信ないですし、今そんなことになったら絶対迷惑かけると思いますし」
「迷惑ではないな」
「そうだね。ハルトの事で迷惑など、何一つないよ」

 二人は優しく暖人を見つめた。

「ただ、以前言ったように、まだ俺たちはハルトを子供に取られたくないんだ。だから、まだまだ先だね」

 そう言って柔らかな笑みを浮かべるウィリアム。目を細め髪を撫でるオスカー。そんな二人に、暖人もふわりと笑みを浮かべた。


 ……それに、もし子を成すなら、最初は涼佑でなければ暖人は一生心苦しい思いをするだろう。
 二人は同じ事を思う。
 自分たちに向けられる愛情は確かでも、涼佑だけは、特別なのだから。
 




 オスカーに抱き上げられてバスルームへと向かい、支えられながらウィリアムに体を洗って貰った。
 すっきりとした暖人がソファに座って水を飲んでいる間に、ウィリアムの手でベッドメイクされる。

 汚れたシーツにウィリアムは嬉しそうに目を細め、それをバスルームへと持って行き、ゴミ箱へと放った。さすがにこれを女性に洗わせる訳にはいかない。

 暖人と想いが通じ合った日、早くシーツも捨てられるような関係になりたいと願っていた。
 あれからそう経たないうちに、こんなに何度もぐしゃぐしゃなシーツを捨てられる日が来るとは。

「……気付かれたらやはり、勿体ないと怒られるだろうな」

 怒る暖人も可愛いが、怒らせ過ぎても可哀想だ。
 暖人が気になるなら少しグレードを落としたものに変えようかと考え、すぐにやめた。やはり暖人には最上級の物に触れていて欲しい。

 上機嫌で戻ろうとして、鏡に映った己の顔にハッとする。さすがに緩み過ぎだ。
 いけない、と深く息を吐き、心を落ち着ける。そして表情を穏やかな笑みに変え、暖人の元へと戻ったのだった。

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