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*やりすぎた

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涼佑りょうすけ

 もう一度涼佑自身に触れ、甘えた瞳で見上げる。もう片手で腕を掴み、胸元へと触れさせた。
 触られてもいないのに立ち上がった粒に指が擦れ、んっ、と声を上げてしまう。ぴくりと反応した涼佑の手に、これだとばかりに胸を擦り付けた。

「ぉ……俺のことも、気持ちよくして……?」

 精一杯の甘えた声で、ドキドキしながら誘う。これならきっと、呆れられずにその気になってくれるはず。
 余裕をなくした涼佑も見たい。絶対可愛い。


 ……だが、残念ながら暖人はるとの思惑は外れてしまった。
 返ったのは、にっこりとした良い笑顔。

「えっ……、……ひゃんッ!」

 いきなりぎゅっと乳首を摘まれ、おかしな声を上げてしまった。

「いいよ。はるがされたい事、全部してあげる」
「えっ、あのっ、俺のしたい事って話じゃ……」
「はるのしたい事は、されたい事でしょ?」
「違、意味合いが違って……」

 その気になってほしくて誘ったものの、涼佑のこの笑顔を見ると腰が引けてしまう。条件反射であり、本能だ。

「早く挿れて欲しいけど、ここも気持ちよくして欲しいんだよね?」
「あぅッ、あっ……」

 胸をまた摘まれ、同時に指がナカに埋め込まれる。あまりにも、すんなりと。

「……俺、慣らしてないのに……」
「この世界は、気持ちに体が同調するのかな?」
「同調?」
「はる、今すぐ挿れて欲しいって思ってるでしょ?」
「うっ……、…………うん」

 暖人が頷くと、涼佑は一瞬驚いた顔をする。そして、またすぐににっこりとした笑顔に戻った。

(今の驚いた顔、可愛かった……)

 不意打ちの可愛い顔に気分を良くした暖人は、ころりと俯せにされ腰を上げられても、されるがままになる。
 今は涼佑の目の前に秘部を晒す恥ずかしさよりも、少しは余裕を失くしてくれたのかなという嬉しさが勝った。

「涼佑、挿れて……?」

 背後を振り返り、上機嫌のままに精一杯の甘えた声を出した。



「ぅぁ、あ、あぁっ」

 背後から覆い被さるようにして腰を打ち付けられ、両手で胸を弄られる。
 片方は摘まれ、片方は引っ掻かれたり弾かれたり。ツンと尖ると押し潰されて、次は両方ともぎゅうっと痛い程に摘まれた。

「ひっ、ゃぁんッ」

 強すぎて痛いと言う間もなく、前立腺と奥を激しく突かれる。甘ったるい声が零れ、慌てて口を引き結んだ。

(やりすぎた……煽りすぎた……)

 調子に乗ってしまったと反省しても後の祭り。涼佑らしくなく、本気でガツガツされている。
 こんなに遠慮なく抱かれるのは……正直、嬉しい。こんなに欲しがってくれている事も。

「んっ、んぁ、は……ぁ、ぁ」

 嬉しい、のだが……。

「ひゃっ、っんんッ」

 意地悪をする余裕がないと、ずっとナカを擦られ続ける事が分かった。
 ずっと気持ちが良いのに、途中から胸への刺激とナカを突くタイミングがちぐはぐになり、上手くイけない。
 イけないというより、何度も軽く達しながらも絶頂を迎える事が出来なかった。

 ぎゅっと尖りを摘まれ今度こそと思うと、ナカのモノが突然緩やかになる。もしかしたら、これも涼佑の意地悪だろうか。

(イきたいっ……、出したいっ、出したいっ……)

 ぱた、とまた少量の体液が落ちる。これ以上はもう無理だ。
 シーツに額を擦り付け、自ら腰を揺らす。涼佑が動きを速めたところで、声を絞り出した。

「りょ、ぅっ……抓ってっ……」

 懇願する声に、望み通り涼佑の手が両方の尖りを抓り上げる。ぐりぐりと転がされ、チカチカと目の前に星が散った。

「いッ……、あっ、あぁッ――……」

 やっと訪れた絶頂に、背を撓らせ喘ぐ。
 ぱたぱたとシーツに飛び散る白いもの。
 混乱した頭が、乳搾りみたい……、と馬鹿な事を考えた。



(動物の交尾って、大変そう……)

 荒い呼吸を繰り返し、暖人はぼんやりと考える。そんな暖人の背に覆い被さり、涼佑はチュッと項にキスをした。

「これなら、いくら濡らしても大丈夫だね」
「りょ、ぅ……」

 すっかりいつも通りの声。理性を飛ばしてくれてはいなかったみたいだ。

「ごめんね。僕としたことが、ちょっと理性がもたなかったよ」
「……でも、意地悪してた」
「うーん、はるをいじめたいのは本能なのかな?」
「俺に訊かれても……」

 拗ねたような声に、涼佑はくすりと笑った。
 暖人渾身のお誘いに、本気で軽く理性が飛んでしまったのだ。そうでなければもっと感じる場所を突いたり、意図的に焦らしたりしていた。

「はるが欲しくて暴走しちゃったのは本当だよ?」
「本当に……?」
「本当に。好きな子にあんなえっちなおねだりされて我慢出来るほど、僕も大人じゃないし」

 仰向けにして見下ろすと、暖人は嬉しそうに笑う。そんな顔をされたら、また理性が飛んでしまいそうだ。
 暖人の髪を撫で、そっと目を細める。

「このシーツなら、おもらしするくらい気持ちよくしてあげられるなぁ」
「……ごめん、涼佑。それは大人としてのプライドが許さない」
「そう? じゃあ、潮ならいい?」
「潮……」
「先に水分補給しておこうか」

 涼佑はそう言ってベッドから下りた。
 水の入ったグラスを渡され、飲み干すと、もう一杯注がれる。

(俺はこれから、一体どれだけの水分を失うんだろう……)

 訊くのも怖くて、思うだけに留めた。


「はる。僕のしたい事もしてくれるんだよね」
「うん、頑張る」

 自分に出来る事なら、と覚悟を決める。
 涼佑がリグリッドに戻ったら、またいつ会えるか分からない。涼佑のしたい事は何でもしてあげたいし、涼佑の事をたくさん感じたい。
 涼佑を見つめる艶やかな黒の瞳。そこに、柔らかな笑みを浮かべる姿が映った。

「さっきより声我慢しないでめいっぱい喘いで、はるの気持ちいいとこに自分で動いて当てて欲しいな」
「ハードルが高いっ……」

 思ったのと違った。
 暖人は思わずツッコミを入れてしまう。

「大丈夫、はるなら出来るよ。上に乗った方が動きやすい?」
「わ、わかんないっ……」
「そっか。じゃあ最初は僕が動くから、はるはいいとこに当たったら教えてね」
「……俺にして欲しいことじゃなくて、涼佑がしたいことを……」
「僕のしたい事? それなら、最初ははるの感じてる顔見ながらしたいな」

 きらきらと爽やかな笑顔が、ぐるりと反転する。
 あっさりと押し倒され、咄嗟に両腕で顔を隠した。顔を見たい宣言をされて見つめられると、恥ずかしさが桁違いだ。


「こら、はる。顔隠しちゃ駄目」
「う、うぇっ……」
「抱きついて隠すのも駄目だよ。ほら、シーツ掴んで」

 暖人の手首を掴み顔の横に押さえ付け、シーツを握らせる。
 そしてにっこりと笑ったかと思うと、膝に手を掛けガバッと開かせた。

「っ! 色々全開じゃん!」
「うん。可愛い」
「会話になってないっ……」
「あ、隠したら駄目だってば。はる、腕上げて」
「う……、うう~~っ」
「可愛いなぁ」
「恥ずかしい……」
「そうだね、全部見られて恥ずかしいよね」
「いじわるだ……」

 顔を真っ赤にする暖人に、わざと上から下までゆっくりと視線を動かす。
 ぷるぷると羞恥に震える暖人が可愛い。それでも頑張って全てを晒してくれている事が、嬉しかった。

「僕のこと好きって気持ちも、隠さないで欲しいな」
「…………それは、いっぱい知ってほしい」

 もごもごと言葉にすると、涼佑は嬉しそうに目を細めた。

「こんな明るいとこでえっちなはるの顔見られるの、最高だなぁ」
「……多分それ、本音の方が出てる」
「え? 僕の気持ちもたくさん知ってね、って言わなかった?」
「言ってない。出たの本音の方」
「そっか。でも、はるにはどっちも知って欲しかったからいいや」

 くすりと笑い、唇に触れるだけのキスをする。


 この世界に来て、涼佑も前より明るくなった。
 身体を重ねているのに悲しげな顔をする事も、時々躊躇うように触れる事も、今はない。
 触れ合いを楽しむ事も、意地悪が遠慮なくなった事も、好きな気持ちがもっと伝わるようになった事も、全部嬉しい事。

「俺も、涼佑の顔見ながらしたい……」

 こんな明るい中なら、涼佑の感じる顔も影にならずにはっきりと見える。
 早く見たくて涼佑を引き寄せキスをすると、手はシーツ、と今度は涼佑の手で指を絡められ、押さえ付けられてしまった。

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