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まさかここで?

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 ウィリアムは暖人はるとの話を聞く間、ただ優しく髪を撫でていた。

 それから、さっき採った実は焼くと美味しい、近くの街に珍しい果物がある、帰りに前回通った街の食堂に行こう。
 そんな他愛ない話をした。


 暖人はウィリアムに背を預けて座り、すっかり安心しきっている体勢。
 突然、さわ……と腹と胸を撫でられた。

「……………………あの、ウィルさん。まさか、ここで……?」
「ああ。寒いかい?」
「え、いえ、それは大丈夫ですけど……」

 王都では夜は少し肌寒かったが、南へ数日の距離では過ごしやすい気温だ。
 だが、そうじゃない。

「さすがに外では恥ずかしいというか……」
「それなら、服は着たままにしよう」
「それはそれで着衣プレイって呼び名があるんですけど……」
「なかなかそそられる名だね」

 ちゅ、と髪にキスをされ、興味を引いただけだった、と暖人は項垂れた。

「二人きりで外で出来る機会なんて、これから訪れないかもしれないだろう?」
「それはそうかもですけど、あえて外でしなくても……」

 そっと離れようとすると、腰に回った手でがっちりと捕獲されてしまう。そのまま項や首筋にキスをされ、くすぐったさに首を竦めた。
 片手は腰に巻き付き、もう片手は緩く太股を撫で始める。その気にさせたい気持ちがヒシヒシと伝わってきた。

「…………外じゃなくても、シたかったんですね」
「ああ。ずっと我慢をしていたんだよ?」

 ウィリアムは嬉しそうな声を出す。
 本当は、王都に帰ると暖人は自分だけのものではなくなる寂しさと焦りからだったが、暖人が許してくれそうな雰囲気に便乗してそういう事にした。

 そうとは知らない暖人は、そっと視線を伏せる。
 オスカーの屋敷で二週間ほぼ毎日シていた頃、ウィリアムには我慢させていたという後ろめたさもある。暖人としても、こうして触れ合ってしまえば体がその気になってしまうし、それに、恋人だ。
 断る理由は、……外だという事だけ。


(上級者向けなんだよなぁ……)

 ウィリアムは外でも室内と変わらず、暖人の首筋に痕を付けている。きっとこの場で全裸になる事すら躊躇いはないのだろう。
 そういえば、野営ではシャワー代わりに皆で滝を浴びるとも言っていた。外で肌を晒す事への抵抗感の、根本から違うのだ。

(俺には、まだ無理かも……)

 ただ着替えるのとはわけが違う。抱かれるとなると……。

 そこで、暖人は気付いた。
 着衣のままなら、長い前戯はきっとない。下を少し下ろすだけなら、上を舌でとろとろにされる事もない。

(声も我慢できそう……)

 この広い空間に声が響く恥ずかしさも、誰かに聞かれて見に来られる心配もきっとない。もし見られても、何をしているか分からないかもしれない。
 それに、ウィリアムとの初めての時のように、意識がまだはっきりしたままで彼を感じる事が出来る。
 それなら、と暖人は顔を上げた。


「えっと……、着たままなら、こうしたらいいですか……?」

 ウィリアムと向かい合い、膝を跨いだ体勢で肩に手を乗せる。

「っ……」

 言葉での了承もなく突然上に乗られ、ウィリアムは理性が吹き飛びそうだった。

 今すぐ下穿きを脱がせ、狭いそこに思い切り自身を突き挿れたい。待って、と涙を零す暖人の願いを聞かず、細い腰を掴み欲望のままに揺さぶりたい。
 暖人の感じる場所を余すところなく突き上げ、どろどろに蕩けたそこに醜い欲望を思い切りぶ……。

 ……と、そこでウィリアムは両手で顔を覆い、俯いた。

「……すまない、ハルト」

 今の一瞬で、一通り妄想してしまった。
 泣いて赦しを請う姿も綺麗だ、などと思ってしまった。
 泣かせたい、汚したい、壊したい、など、自分らしくもない。暖人の事は徹底的に甘やかしてとろかしてぐずぐずにしてしまいたいと思っているのに。

「え? 何か間違ってました?」
「いや、間違ってはいない、いないのだが……」
「……そうだ。先にウィルさんのを口でした方が良かったですよね。すみません、俺、気が利かなくて」
「いや、違うんだ、気を利かせなくていいから」

 膝の上から下りようとする暖人の腰を抱き寄せる。
 咄嗟に返してしまったが、これは気が利く云々ではない。最初の恋人が涼佑でなければ、暖人を物扱いする酷い恋人だったのだと思い込んで憤慨するところだ。


「ハルトがあまりに積極的で、危うく欲望に負けてしまうところだったよ」

 平静を装った声を出し、暖人の肩口に顔を埋める。少し甘えた仕草をすると、暖人は躊躇いながらもそっとウィリアムの髪を撫でた。

「ウィルさんのしたいようにしてくれたら、俺も嬉しいですけど……。ちょっと危険な気がするので、今日は上半身を触るのは無しでお願いします」
「そうだね。今日はそうさせて貰うよ」

 本当は全身くまなく愛するつもりだったが、どうやら思った以上に暖人不足が深刻だったようだ。今日は自分も早めに暖人を摂取させて貰おう。
 いいんですか? という顔をする暖人に苦笑して、その頬に、触れるだけのキスをした。

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